データで振り返る!メジャー日本人選手の2022年:第4回・ダルビッシュ有
2012年に渡米してからちょうど10年。
今年8月に36歳になったダルビッシュ有は、1年目の自己最多に並ぶ16勝を挙げ、チームのポストシーズン進出に大きく貢献した。
パドレス1年目の昨季は8勝11敗と3つの借金をつくったダルビッシュ。特に後半戦は1勝8敗と大きく負け越し、衰えの声もあがっていた。
ところが、今季は周囲の雑音をシャットアウトする大活躍。防御率も前年の4.22から3.10へと良化させ、シーズンを通して安定した投球を見せた。
“省エネ投法”の熟練度が向上
ただし、前年から大きく下げた項目もあった。それが「奪三振率」だ。
メジャー移籍後は全てのシーズンで10.0以上をマークしていたが、今季はメジャーでの自己最低を大幅に更新する9.11に終わった。
年齢的には球威が衰えるのは仕方がないところだが、奪三振率の減少はダルビッシュにとってむしろ好ましい現象かもしれない。
三振を奪うには、最低でも1人の打者に3球を投じる必要がある。つまり、長いイニングを投げるためには効率が悪いアウトの取り方ともいえる。
昨季は1イニングを投げ切るのに16.65球を費やしていたダルビッシュだが、今季はこの数字が15.26球に改善。その結果、先発1試合当たりの投球回数は昨季の5.5回から6.5回へ、1イニングも長くなっていた。
年齢とともに“省エネ投法”の熟練度が向上しているのかもしれない。
気になる課題は…?
そんなダルビッシュの課題が、球種別で最も投球割合が多かった「カットボールの精度」だ。
カブス時代の2019年には被打率.195と相手打者を抑え込んでいた球種だが、2020年からその数字は「.255」→「.342」→「.310」と推移している。
特に今季は他の球種の被打率が軒並み1割台だったにもかかわらず、カットボールだけは3割を超えていた。投球の軸にカットボールを据えることで他の球種が生きているとも考えられるが、最も多く投じる球種だけに、もう少し被打率は下げたいところだろう。
来季に向けては、「立ち上がりの投球」もカギとなりそうだ。
今季のイニング別の防御率を初回から並べると、初回が5.40で2回は3.64と、2回までに失点を重ねる試合が目立った。
その後の3回から5回にかけては「1.55」→「2.17」→「1.24」と安定していただけに、いかに立ち上がりで失点しないかが重要となるだろう。
奪三振率の減少などから、ダルビッシュの変化は見て取れる。残り12勝に迫った日米通算200勝を単なる通過点にするためにも、更なる進化に期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)