熱戦を守備で彩った名手たち
11月14日に発表されたプロ野球・守備の栄誉「第51回 三井ゴールデン・グラブ賞」。
29日には表彰式も行われ、2022年シーズンを華麗な守備で彩った名手たちが大集合。お馴染みとなった金のグラブ型のトロフィーを受け取った。
セ・リーグは連覇を達成したヤクルトから、2年連続3度目の受賞となった捕手・中村悠平のほか、今季定位置を掴んでブレイクした遊撃手の長岡秀樹と、外野手の塩見泰隆の計3人が受賞した。
また、二塁手部門では、現代の“守備職人”といえばこの人、広島の菊池涼介が10年連続10度目の受賞。10年連続の受賞は、広島の大先輩・山本浩二らにならぶリーグ記録である。
一方のパ・リーグでは、遊撃手部門で西武・源田壮亮が5年連続、捕手部門で甲斐拓也が6年連続で受賞。連続受賞記録を伸ばしている。
また、26年ぶりの日本一に輝いたオリックスからは宗佑磨と福田周平に加え、投手部門でエース・山本由伸が受賞。ヤクルトと同じく3名の受賞者を輩出した。
投手部門受賞者のほとんどはエース級先発投手
ここで注目したいのが投手の受賞者。今年は山本と、セ・リーグでは広島の森下暢仁が選出されたが、こちらはどちらも先発投手。山本はもちろん、チーム最多の勝ち星を挙げた森下もチームのエースと言っていい。
エース級の成績を残すことができる先発投手は、基本的に平均以上のフィールディング力も兼ね備えているものであり、それだけ投票する記者の印象にも残りやすいのだろう。過去の受賞者を振り返ってみても、ほとんどが各チームのエースといえる先発投手だった。
しかし、1972年から始まった三井ゴールデン・グラブ賞(1985年までの名称は「ダイヤモンドグラブ賞」)の受賞者のうち、当該シーズンに先発登板がない投手ながら受賞した中継ぎ投手がひとりだけいる。それが2011年の中日・浅尾拓也だ。
この年の浅尾はチーム最多の79試合に登板。当時のシーズン52ホールドポイントを稼ぎ、当時の通算ホールドポイントのプロ野球記録も打ち立てたシーズンだった。
浅尾の武器といえば最速157キロを誇る速球だが、プロ入り時の入団会見では自身のセールスポイントに「牽制」と「フィールディング」を挙げていた。試合前の練習では遊撃や二塁のポジションに入り、守備力を磨くことを日課としていたというエピソードも残している。
自身の守備に対する強いこだわりがあったことと、名だたる先発投手をしのぐ大きなインパクトがあったからこその唯一の勲章。この先、浅尾に続いて中継ぎ投手としてゴールデングラブに輝く選手が出てくるのか。楽しみに待ちたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)