コラム 2022.12.08. 07:08

大阪桐蔭のエース、広陵の主砲が猛アピール 明治神宮大会で活躍した高校生の逸材たち

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大阪桐蔭・前田悠伍選手 [写真提供=プロアマ野球研究所]

明治神宮大会で活躍した逸材たち【高校生編】


 11月18日から24日まで行われた『明治神宮野球大会』。

 アマチュア野球の主要カテゴリーを締めくくる大会としてもお馴染みの大舞台。今年は高校の部が大阪桐蔭、大学の部は明治大の優勝で幕を閉じた。


 今秋のドラフト会議で指名を受けた選手の発表会が各球団で行われている中、この大会では早くも来年のドラフト会議に向けたアピールを見せた逸材たちが数多くいる。

 今回スカウト陣へアピールした選手は誰だったのか、カテゴリー別にピックアップして紹介したい。まずは高校生編だ。


上位候補と期待される2人


 まず来年のドラフト上位候補としてふさわしい活躍を見せたのが、前田悠伍(大阪桐蔭高/投手)と真鍋慧(広陵高/一塁手)だ。

 前田は準決勝の仙台育英戦では10四死球を与えるなど苦しいピッチングとなり、大会を通じても本調子には程遠い内容だったが、それでも力を入れた時のストレートはコンスタントに140キロを超え、数字以上の勢いが感じられた。

 カーブやスライダー、チェンジアップにツーシーム、スプリットと多彩な変化球を操り、走者を背負ってからも粘ることができる。決勝の広陵戦では1点を勝ち越した6回からリリーフでマウンドに上がり、4イニングを投げて7奪三振・無失点とさすがの投球を見せ、2年連続で優勝投手となっている。

 相手からかなり研究されていることに加え、1年間投げ続けてきた疲れも気になったが、それでも試合を壊すことなく勝ち続けられるというのは、さすがという他ない。

 苦しんだコントロールが修正され、ストレートがコンスタントに145キロを超えるまでになってくれば、ドラフト1位でのプロ入りも見えてくるだろう。


 一方で、真鍋は厳しいマークに苦しみ、力のない打球が目立った。それでも3試合で2本塁打を放ち、4割を超える打率と5割を超える出塁率をマークするなど、さすがのバッティングを見せた。

 特に東海大菅生戦と大阪桐蔭戦で放った本塁打は、いずれもスタンド中段まで届く特大の一発。そのパワーは間違いなく高校球界で屈指である。

 中国大会では少しヘッドを中に入れる構えだったが、この大会では以前と同じスタイルに戻し、振り出しにも無駄がなくなっているように見えた。

 内角の速いボールのさばきに関してはまだ課題が残るものの、打ち方に悪い癖がなく、脚力と肩の強さを備えている。広陵は直接プロ入りせずに大学に進む選手が多いが、真鍋がプロ志望であれば、人気を集める可能性は高いだろう。また、将来のことを考えると、春以降は三塁や外野といった一塁以外の守備にも、ぜひ挑戦してもらいたいところだ。


仙台育英の“投手コンビ”が躍動


 前田以外の投手では、仁田陽翔(仙台育英高/投手)と高橋煌稀(仙台育英高/投手)の名前が挙がる。

 仁田は準決勝の大阪桐蔭戦で、今大会に登板した高校生で最速となる146キロをマーク。強力打線相手に力で押すピッチングを見せ、4回途中まで1失点の好投を見せた。

 175センチとそれほど上背があるわけではないが、スムーズに肘が高く上がり、ボールの角度は申し分ない。縦に鋭く変化するスライダーは、空振りを奪える必殺のボールだ。課題のコントロールがレベルアップすれば、貴重なサウスポーとして楽しみな存在だ。


 高橋は、夏の甲子園でも活躍した183センチの大型右腕。左右に体が広がらず、高い位置から投げ下ろすボールは角度があり、スピードもコンスタントに140キロを超える。

 フォームに目立った欠点がなく、瞬発力がついてくれば楽に150キロ近いスピードが出る可能性は高い。今大会は少し制球を乱す場面もあったが、総合力の高さは全国で上位クラスであることは間違いないだろう。


仙台育英と大阪桐蔭のショートにも注目


 真鍋以外の野手では、山田脩也(仙台育英高/遊撃手)と小川大地(大阪桐蔭高/遊撃手)の2人が目立った。

 山田は旧チームから不動のショートとして活躍しているが、軽快なフットワークと、投手として140キロを超えるスピードを誇る強肩が持ち味だ。

 今大会でもたびたび見事な守備を見せ、夏はもうひとつだった打撃でも、2試合で8打数4安打、二塁打2本と結果を残した。打撃の力強さがアップしてくれば、今後が楽しみだ。


 小川は、中学時代から評判だった182センチの大型ショート。捕球・送球の形が安定しており、三遊間の深い位置からもノーバウントで投げられる肩の強さも一級品だ。

 打撃は4試合で3安打ともうひとつだったが、センターを中心に強く弾き返すことができるのは魅力。プレーのスピード感が出てくれば、プロでもショートを守れる可能性は十分にあるだろう。


投打両面で可能性をみせた英明の好選手


 リードオフマンタイプで光ったのが、田上夏衣(広陵高/外野手)と知花慎之助(沖縄尚学高/外野手)の2人だ。

 ともに「1番・中堅」として出場したが、決して当てにいくようなスイングではなく、全身を使って強く振ることができ、長打力も申し分ない。センターの動きの良さと返球の素早さも高レベルだ。パワーがついてくれば、将来的なプロ入りも期待できる素材である。


 投手・野手両面で可能性を見せたのが、寿賀弘都(英明高/外野手兼投手)である。

 背番号8で、四国大会では登板がなかったものの、明治神宮大会では初戦の山梨学院戦でリリーフとして好投。ストレートは最速141キロをマークし、厳しい内角攻めが光った。

 打っても4番として2試合で3安打を放ち、力のあるところを見せている。現時点では野手としての完成度の方が高く見えるが、貴重なサウスポーだけに、投手としての可能性もぜひ探ってもらいたい選手だ。


 前田と真鍋の2人以外は“ドラフト上位候補”という感じではなかったが、それでも素材として楽しみな選手は決して少なくなかった。

 来年3月の選抜では更に成長した姿を見せて、2023年のドラフト戦線を賑わせてくれることを期待したい。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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