「運」にも左右される投手の勝利数
今季のプロ野球で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得したのが、山本由伸(オリックス)と青柳晃洋(阪神)の2人。
青柳は三冠、山本は四冠とタイトルを総なめにしただけでなく、ともに2年連続で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得という偉業だった。
基本的に投手個人の力量による成績と言える防御率とは異なり、投手が勝利を挙げるには味方打線の援護が欠かせない。その点において、“運”という要素も重要なのは間違いない。
今回はそんな“運”の部分にフォーカス。より運に恵まれていた投手、あるいは逆に悲運に見舞われてしまった投手は誰だったのか。今季の規定投球回到達者の援護率ランキングを以下にまとめてみた。
▼ セ・リーグ援護率ランキング
1位 5.29 森下暢仁(広島)
[今季成績] 27試 10勝8敗 防3.17
2位 4.08 青柳晃洋(阪神)
[今季成績] 24試 13勝4敗 防2.05
3位 3.78 菅野智之(巨人)
[今季成績] 23試 10勝7敗 防3.12
4位 3.43 今永昇太(DeNA)
[今季成績] 21試 11勝4敗 防2.26
5位 3.41 戸郷翔征(巨人)
[今季成績] 25試 12勝8敗 防2.62
6位 3.00 西勇輝(阪神)
[今季成績] 23試 9勝9敗 防2.18
7位 2.96 小川泰弘(ヤクルト)
[今季成績] 25試 8勝8敗 防2.82
8位 2.73 大野雄大(中日)
[今季成績] 23試 8勝8敗 防2.46
9位 2.69 柳裕也(中日)
[今季成績] 25試 9勝11敗 防3.64
10位 2.57 小笠原慎之介(中日)
[今季成績] 22試 10勝8敗 防2.76
▼ パ・リーグ援護率ランキング
1位 4.38 宮城大弥(オリックス)
[今季成績] 24試 11勝8敗 防3.16
2位 4.33 伊藤大海(日本ハム)
[今季成績] 26試 10勝9敗1H・1S 防2.95
3位 4.21 田中将大(楽天)
[今季成績] 25試 9勝12敗 防3.31
4位 3.51 千賀滉大(ソフトバンク)
[今季成績] 22試 11勝6敗 防1.94
5位 3.48 山本由伸(オリックス)
[今季成績] 26試 15勝5敗 防1.68
6位 3.30 上沢直之(日本ハム)
[今季成績] 23試 8勝9敗 防3.38
7位 2.89 髙橋光成(西武)
[今季成績] 26試 12勝8敗 防2.20
8位 2.41 小島和哉(ロッテ)
[今季成績] 24試 3勝11敗 防3.14
9位 2.38 加藤貴之(日本ハム)
[今季成績] 22試 8勝7敗1H 防2.01
中日の得点力不足がここでも明らかに
セ・リーグのトップは、援護率5.29の森下暢仁。12球団でただひとりの5点台というダントツの数字だ。今季の先発試合では援護点が2ケタに達した試合が4試合もあり、まさに援護に恵まれたといえる。
2位は4.08の青柳。決して得点力が高いとはいえない阪神だが、「打たせて取る」青柳の投球スタイルが打線に好影響を与えていたのかもしれない。
一方で、同情したくなるのが中日の投手陣。中日からは大野雄大に柳裕也、小笠原慎之介と12球団最多タイの3人の規定投球回到達投手が生まれたが、その3人が援護率ワースト3を占めている。得点力不足という近年の中日の課題が、ここにもはっきりと表れたかたちだ。
パ・リーグは宮城大弥が4.38でトップ。同僚でありタイトルホルダーの山本は宮城と1点近い開きのある3.48で、9人中の5位だった。
ちなみに、パ・リーグの平均援護率は3.53。山本はまさに平均的という数字だった。援護が最低限だったとしても圧倒的な投球によって勝利を掴み、投手四冠に輝いたといえる。
中日の3投手同様、運に恵まれなかったのが小島和哉だ。防御率は3.14と先発投手としての及第点といえる数字を残したものの、援護率2.41はリーグワースト2位。援護に恵まれなかったことが響き、3勝11敗と大きく負け越してしまった。
小島の成績を見てみると、先発試合のうち6回以上を投げて3自責点以内に抑えた試合の割合であるクオリティ・スタート率は62.5%と、リーグ平均の48.7%を大きく上回っており、多くの先発試合できっちりとゲームをつくっていたようだ。しかし、援護点は先発24試合のうちじつに22試合が3点以下。援護点がゼロという試合も7試合あり、まさに悲運としかいいようがない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)