「ディズニーランドに行く前の子どものような」
メジャーのスタジアムに特徴的な、左右両翼の距離が違うローンデポ・パーク。中日・小笠原慎之介は年明けにマイアミへ飛ぶ。
海外自主トレで楽しみにしていることのひとつが、スタジアム周辺の空気を目いっぱい吸い込むことという。
「行ってみたら、どんな感じなんですかね。球場の周りを歩いてみるだけでも、いろいろ感じることってあると思うんです。もちろんトレーニングはメインですが、周囲を歩いている人の雰囲気、周りの飲食店、全て含めてワクワクしています。ディズニーランドに行く前の子どものような気持ちです」
3年ぶり2度目の海外トレーニングとなる。最初はドミニカ共和国を訪れた2019年12月。その時は元竜戦士の縁をたどった。
当時は成績が出ず、野球との距離感を測りかねていた時期。
「小さなころって、みんな野球を楽しんでいたし、自分もそうだった。そういう気持ちを思い出せました」
現地の料理を口にし、さまざまな人種のプレーヤーとコミュニケーションを図った。知っている英語、スペイン語の単語とボディーランゲージを駆使した。
大きなお土産も持ち帰った。マリナーズに所属した2014年に最多セーブに輝いたナショナルズのロドニーから授かった言葉は胸に刻んである。
「抑えた理由が分からない時もある。毎日が勉強だよ」。一流の探求心に触れた気がした。
その後、2021年から2年連続規定投球回に達し、今季は10勝8敗で初めての2ケタ勝利。9・10月度の月間MVPもゲット。5試合の登板でリーグトップの4勝をマークし、駆け込みで10勝に乗せた。
「学んだことを生かせるように」
年明けすぐに離日する計画は、知人からもたらされた。
毎年、沖縄・北谷で行うエース・大野雄大らとの自主トレには参加予定。海外トレの経験を持つ大野雄にも相談したうえで、「行きたい気持ちがあるのなら、行った方がいいよ」と背中を押された。
日程は約1週間。帰国後、沖縄でエースとともに2月・沖縄キャンプの準備を進める。
「施設には、たくさんのメジャーリーガーがトレーニングしていると聞いています。どんな選手がどんなトレーニングをしているのか、見るだけで勉強になりますし、刺激をたくさん受けます。学んだことを生かせるようにしたいです」
沖縄での自主トレメンバーは、大野雄のほかに田島慎二と橋本侑樹がいる。新たに福島章太と垣越建伸という一軍未経験者も加わった。
エースからはメニューづくりを託されていて、「人それぞれに合った内容にしようと思います。僕は僕で、後輩の福島と垣越に背中を見せられるように頑張ります」。
ルーキーイヤーからの勝ち星は2→5→5→3→1→8→10。肘痛や肩痛と向き合い、シーズン中も工夫しながら「自分の体を実験してきました」と言う。
2022年シーズンの前、小笠原の言った言葉が印象に残っている。
「2023年シーズンに爆発的な数字を残せるようにやってきたつもりです。ひとつのトレーニングをしても、いきなり成績が出るものではないんです」
そのシーズンがやってくる。まず目指すのは3.31の開幕、敵地・巨人戦のマウンドだ。
2年目の立浪竜で、開幕カードは立浪監督の就任イヤーと同じ。宿敵をぎゃふんと言わせるマウンドで仁王立ちし、ドラゴンズがセ・リーグをわかせる存在だと見せつけたい。その準備のひとつに、マイアミがある。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)