コラム 2023.01.02. 07:08

大学日本代表合宿にドラフト候補が集結 秋に向けて覚えておきたい野手の有望株

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慶応大・廣瀬隆太 [写真提供=プロアマ野球研究所]

2023年のドラフト候補が松山に集結


 12月2日から3日間にわたり、日米大学野球の代表チーム先行のための侍ジャパン・大学代表の強化合宿が愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで開催された。

 候補として選ばれたのは、投手20人:野手24人の合計44人。初日と2日目には紅白戦が計3試合、3日目には50メートル走のタイム測定やフリー打撃などが実施されたが、全国から集った精鋭たちの競演とあって、随所にレベルの高いプレーが見受けられた。

 今回はその中から、2023年のドラフト候補になりそうな野手について紹介したい。


“大学No.1スラッガー”慶応大・廣瀬隆太


 投手が歴代最高レベルに力のある選手が揃っていたこともあって、紅白戦では快音が聞かれるシーンは多くなかった。そんな中でも打撃でインパクトを残したのが、慶応大の主砲・廣瀬隆太だ。

 最初の3打席は無安打で2三振と精彩を欠いていたが、最速155キロ・をマークした冨士隼斗(平成国際大)との対戦では、151キロのストレートを完璧にとらえて左中間スタンドへ運んだ。

 本人は、試合後の取材で「最初は速くて全然ボールが見えていませんでした」と話していたが、打席の中でしっかり対応してくるのはさすがである。

 この1本で気が楽になったのか、次の打席でも強烈なレフト前ヒット。東京六大学では秋に引退となった4年生まで含めた現役選手でも蛭間拓哉(早稲田大→西武1位)と並ぶ最多タイの13本塁打を放っており、史上4人目となる20本塁打も十分に視野に入っている。2023年の大学生スラッガーではNo.1と言える存在となりそうだ。


明治大・上田希由翔と日本体育大・松浦佑星が躍動


 同じ東京六大学勢では、明治大・上田希由翔もさすがの存在感を見せた。

 安打は1本だけだったが、それが大学生No.1サウスポーの呼び声高い細野晴希(東洋大)から放ったものであり、ファウルや凡打でもとらえた打球が多かった。

 また、四球を2つ選ぶなど選球眼の良さも目立つ。通算本塁打数は6本と廣瀬には差をつけられているが、通算66安打は3年生以下では最多であり、通算50打点に関しては4年生を含めてもトップの数字である。

 加えて一塁、二塁、三塁に外野とあらゆるポジションをこなし、肩の強さと脚力も魅力。最終学年で本塁打を量産すれば、一気に野手の目玉候補になる可能性もあるだろう。


 リードオフマンタイプで見事なアピールを見せたのが、日本体育大・松浦佑星だ。

 打撃では単打が2本、二塁打1本と6打数3安打の活躍で高いミート力を発揮。8.00秒を切れば俊足と言われる二塁打の二塁到達タイムは7.52秒という数字を叩き出している。また、セーフティ気味の送りバントでも相手のエラーを誘い、その時の一塁到達タイムも3.67秒と素晴らしいものだった。

 秋のリーグ戦では少し守備で苦しむ場面が目立ったものの、この合宿では遊撃・二塁でいずれも軽快な動きを見せている。二遊間が手薄な球団にとっては、非常に魅力的な選手であることは間違いないだろう。





守備で光った選手は?


 高い守備力でアピールしたのが、進藤勇也(上武大)・辻本倫太郎(仙台大)・宮崎一樹(山梨学院大)の3人。

 捕手の進藤はシートノックと実戦で度々その強肩を披露。少し雑になるシーンもあったが、少し力を入れただけでセカンドまで低い軌道で一直線に届くスローイングはプロでも間違いなく上位のレベルにある。もうひとつの持ち味であるバッティングは少し精彩を欠いたが、総合的に見て大学No.1捕手と言えるだろう。

 辻本の魅力は、プレーのスピード感。時折、軽率なプレーでエラーがあるとはいえ、打球に対する反応、ボールに対するアプローチ、捕球から送球の流れ、全てにおいて抜群のスピードがあり、見ている者を楽しませる内野守備である。小柄だが決して当てにいかずに強く振り切れる打撃も持ち味。攻守に確実性がアップすれば、プロ入りが見えてくるだろう。

 宮崎は抜群の運動能力が光る大型外野手。低くて伸びる返球は迫力十分で、実戦でも右飛で生還を狙った松浦をホームで刺すビッグプレーでアピールした。

 そして、宮崎に最も注目が集まったのが3日目の50メートル走。松浦や中島大輔(青山学院大)などに注目が集まる中で、全体トップとなる5.91秒をマークしたのだ(スタートは自由なタイミングによる光電管での計測)。

 昨年の春秋のリーグ戦では18試合で19盗塁もマークしており、ただ足が速いだけではない。打撃は残念ながら無安打に終わったが、秋のリーグ戦では打率.600で5本塁打・19打点と見事な結果を残しており、来年春以降も高い注目を集めることになりそうだ。


 他にも、素早いスローイングが光った友田佑卓(日本大/捕手)、巧みなバットコントロールで広角に打ち分けた石上泰輝(東洋大/内野手)といった面々も見事なプレーを見せた。

 投手に比べると「上位候補は間違いなし」という選手は少なかったが、それでも今後が楽しみな選手は非常に多い印象。春以降更にレベルアップした姿を見せてくれることを期待したい。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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