現代野球では至難の業?
新井貴浩新監督の下、逆襲を期す2023年の広島。中でも注目ポイントのひとつが、新指揮官から“捕手専念”の方針が打ち出されている坂倉将吾だ。
キャンプを見据えた自主トレの場で「120試合・打率3割・20本塁打」という具体的な目標を掲げたことも報じられており、捕手のレギュラー獲りと規定打席到達、攻守両面での活躍に期待がかかる。
現代のプロ野球では、かつてのようにひとりの正捕手がほとんどの試合でマスクを被るということが珍しくなり、多くの球団が捕手を併用している。
また、いわゆる「投高打低」の傾向が強まっていることから、打率3割や20本塁打の達成者だけでなく、そもそも規定打席到達者自体も減少している。この昨今の状況を鑑みると、坂倉の目標はかなり高いハードルにも思える。
では、その「120試合出場」「打率3割」「20本塁打」をすべてクリアしたのはどんな選手たちだったのか。振り返ってみると、2010年以降の達成者はわずかに3人。2019年の森友哉(西武)と2012年の阿部慎之助(巨人)、そして2010年の城島健司(阪神)だけだった。
▼ 捕手の「120試合出場・打率3割・20本塁打」達成者
※2010年以降
・森友哉(西武/2019年)
135試合 打率.329 本塁打23 打点105
・阿部慎之助(巨人/2012年)
138試合 打率.340 本塁打27 打点104
・城島健司(阪神/2010年)
144試合 打率.303 本塁打28 打点91
新たな「打てる捕手」となれるか
直近の達成者は2019年の森。この年の森は、前年オフに炭谷銀仁朗(現・楽天)が巨人へFA移籍したことなどにより、前年と比べてDHでの出場が激減。正捕手に定着した。
守りの負担が激増した中での戦いだったが、打率.329をマークして自身初のタイトルとなる首位打者を獲得。リーグMVPに輝く大活躍を見せた。
その前、2012年に「120試合出場・打率3割・20本塁打」を達成したのが阿部。ルーキーイヤーから2ケタ本塁打を続けるなど、すでに「打てる捕手」として名を馳せていたのだが、この年の阿部はまさに全盛期。捕手ながら主に4番で起用され、年間3度の月間MVPを受賞したほか、首位打者・打点王・最高出塁率のタイトルも獲得した。
また、2010年には、阿部と並んで2000年代を代表する「打てる捕手」であった城島が「120試合出場・打率3割・20本塁打」を達成。森は指名打者、阿部は一塁での出場試合もあった中、城島の場合はシーズン全144試合でスタメンマスクを被っての達成ということで大きな価値がある。
いずれにせよ、坂倉が掲げた目標のハードルは高い。森が「120試合出場・打率3割・20本塁打」を達成したのは2019年の一度きりで、阿部や城島も毎年のようにクリアしている印象を持っている野球ファンもいるかもしれないが、長いキャリアのなかでそれぞれの達成回数は阿部が3回、城島が4回だ。
その高いハードルを超えて坂倉が目標に達することができれば、それこそ新たな「打てる捕手」として球史に名を刻むことになるだろう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)