コラム 2023.01.11. 07:08

不屈の男・三嶋一輝が目指す難病からの完全復活 「キャンプで一番目立ちたい」

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DeNA・三嶋一輝 [写真=萩原孝弘]

三嶋を襲った異変


 「間に合ってよかったです」──。

 2023年1月、恒例となった厚木での自主トレで、DeNA・三嶋一輝は晴れやかな表情で微笑んだ。


 「顕著に現れたのは1月の中旬から後半。去年の厚木自主トレはまだ大丈夫だったんですけど、まだちょっとなにか身体が回っていないと感じていました。それから前屈が全然できなくなって、ごまかしごまかし……」

 異変を感じながらスタートしていた三嶋の2022年。それでも、オープン戦は無失点。開幕も当たり前のように一軍で迎えた。

 しかし、「無意識のレベルで足が開かなくて。足をマウンドと水平に踏み出せないと抜けちゃうんですよ。踏めないと加速しないから(上腕を)止めて投げていたら肩に来ちゃって。4月の後半から5月の抹消されたときまでは結構きつかったです」とシーズンでは苦戦。

 「コントロールもアウトコースに全然行かないとか、シュートして真ん中入るとか。ジョギングでもきつかったです」と振り返ったように、病魔が負の連鎖を引き起こした。


難病克服へ気持ちはポジティブ


 原因は難病指定の「黄色靭帯骨化症」。今までに前例のない術式に取り組み、身体への負担はさほど重くないということだったが、「6時間くらいかかったので、周りの方々は心配していましたね」という大手術は無事に成功した。

 その後は「8月29日から1週間入院して、1カ月ぐらいは動かずに。DOCKに来たのが9月末くらい」と徐々にステップアップしていったが、「結局プランが立てられないんですよ。トミー・ジョンとかと違って症例が少ないので。自分の身体と相談してここまではいけます、キャッチボールも5メートルくらいいけますと、伸ばしていった感じですかね」と言い、競技復帰への道のりには苦労した。

 だが、過酷なリハビリにも「良くなってきているので、やっと動けるんだなという気持ち」とポジティブ。「2020年~2021年あたりで年々インステップしていたんですけど、無意識にしていたのが、術後からは真っ直ぐ踏み込めるようになった」という“ケガの功名”も。「自分でもわからないぐらい、インステップしないと体を支えられなかった。そういう意味ではスムーズに投げられる。楽しいです。しびれも残っていなくて先生に感謝しています」と、表情は明るい。


 現在は「ブルペンは12月の頭には入って、そこからは投げていないですけど、1月末くらいにはDOCKに行ってキャッチャーに投げようかなと思っているんです」と、順調に復活ロードを歩んでいるという。

 自主トレでも山登りに始まり、球場ではキャッチボールやアメリカンノックにも参加。「石田(健大)とかヤス(山﨑康晃)とか伊勢(大夢)がやりましょうよって言ってくれた」とのことで、仲間たちと同じメニューをしっかりとこなしている。山﨑康晃も「いや早いですよね。病気を抱えていた選手とは思えないですよね」と目を丸くするほどだ。


「周りへの感謝」を胸に


 復帰に向けて取り組んでいる際、力になったのはファンの後押し。

 「術後にDOCKにいた時なんか、毎日来てくれる方やタオルを出してくれる方もいました」

 また、「僕が入院していた時に、病院が東京ドームと近かったんです。ドームで試合している時とかも、みんなの投げっぷりや熱を感じて、僕も病気や手術に負けないようにやっていこうという気になりましたし、勇気をもらいました」と、チームメイトの奮闘もパワーに。「いろいろな人に支えられているんだな、というのを改めて実感させてもらいました」。関わってくれる人々への感謝の気持ちを口にした。


 当面は「初日から健常者と同じくらいしっかり動けるように、ブルペンに入るつもりでやっています」と、2月1日のキャンプ初日から全開をめざす。

 続けて「キャンプでは一番目立ちたいと思います。あいつ手術したよなと思わせるくらい。まず良い意味で“あいつは大丈夫だ”と思わせないといけない。難病なんだと見られて気を遣われるのがすごく嫌なので。そう思われないようにキャンプで首脳陣の方々にしっかりアピールしたいなと思います」と鼻息は荒い。

 さらに「伊勢は去年すごかったですし、入江(大生)や石川(達也)もお願いしますって来てくれている。ヤスからも刺激はすごくもらっているし、まだまだ負けちゃいけないとすごく思います」とブルペン陣から刺激を受けながら、最終的には勝利の方程式復帰から、一度は掴んだストッパーの座も見据えている。


 「この手術をして、何試合かマウンドへ上がって、活躍して何年か投げているピッチャーはいないのが事実。自分も野球がもうできなくなる、満足に投げられなくなると思いました」と、弱気の虫が顔を出した時もあったという。

 それでも、「三浦さんから最初に言われた言葉は“それの第一号になれ”。僕も“ハナからそのつもりです”と返答させてもらった。そういう意味では逆に美味しいと考えています。見ていてください」と、本来の勝ち気の性格が蘇ってきた。


 ルーキーイヤーから活躍を見せ、2年目には開幕投手の重責も担ったが、そこから4年間はどん底に沈んだ。

 しかし、不屈の魂で2018年からはブルペンに回り、新たな持ち場で輝きを取り戻した反骨の右腕。難病にも「攻める・やり返す・逃げない」を信条に、不死鳥のようにマウンドへ舞い戻る。


取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)
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