7年連続負け越し中…
大谷翔平が所属するロサンゼルス・エンゼルス。2016年からシーズン負け越しが7年続いているが、今季はそれが好転するのか、それともチーム再建にはさらなる時間を要するのか──。
今季がメジャー6年目となる大谷は、2021年にア・リーグMVPに輝くなど、投打でメジャートップクラスの成績を残せることを証明した。しかし、もう一人のスーパースターであるマイク・トラウトとの“メジャー最強”のワンツーパンチをもってしても、勝ち越すことすらできていないというのが現状だ。
それでも、このオフは強力な援軍が加入した。パドレスからFAになっていたブランドン・ドゥルーリーと2年契約で合意。昨季28本塁打の強打者が加わり、打線にこれまで以上の厚みが生まれるのは間違いない。
長年の課題とされてきた投手陣にも光明は差し込んでおり、昨季のチーム防御率3.77は同地区のライバルで世界一に輝いたアストロズの2.90と比較すると見劣りするが、メジャー平均の3.97を上回って全体9位という成績。2年前が全体22位だったことを考えれば、大きく成績を向上させている。
さらに今オフには、昨季ドジャースで15勝を挙げた左腕のタイラー・アンダーソンが加入。大谷との“15勝コンビ”も実現し、パトリック・サンドバルやホセ・スアレスといった中堅・若手の投手たちがさらなる成長を見せれば、メジャーでも指折りの先発ローテーションが形成されてもおかしくはない。
カギを握る“捕手”
一方で、チームのアキレス腱となるのが扇の要である捕手だ。
現在チームの正捕手と言えば、2019年途中にアストロズから加入したマックス・スタッシ。2021年には87試合で13本塁打と意外性のある打撃を披露したが、新たに3年契約を結んで迎えた昨季は打率.180と物足りない成績に終わった。
さらに控え捕手ののマット・タイスも、ドラフト1巡目指名の期待に応えることはできていない。現状メジャー定着にも至っていない状況で、昨季終盤は内野手としても出場。正捕手の座をスタッシから奪うには力不足であると言わざるを得ないだろう。
そんな中、大きな期待がかかっているのがローガン・オホッピー。昨年8月にブランドン・マーシュとのトレードでフィリーズから加入した22歳の有望株だ。
2018年のドラフト23巡目、全体では677位という下位指名だったが、初年度からマイナー(ルーキーリーグ)で.367の高打率をマークすると、そこから順調にステップアップ。昨季は2Aで26本塁打を放ち、シーズン終了が迫る9月下旬にはメジャー初昇格も果たしている。
初出場となったアスレチックス戦ではスタメンマスクを被り、初打席でいきなり安打をマーク。メジャー1年目は5試合に出場して打率.286(14-4)、2打点という成績を残した。
今季は春季キャンプでスタッシやタイスらと2つある捕手のメジャー枠を争うことになるが、ここではかなりの好成績を残さない限り、3Aからのスタートが濃厚だ。それでも、チームの“トッププロスペクト”として、シーズン途中からであれば正捕手の座を奪う可能性は十分考えられるだろう。
全盛を誇る同地区のライバル・アストロズの壁は限りなく高い。しかし、大谷・トラウトの至宝2人に加え、新加入のドゥルーリーとアンダーソン、そして将来のスター候補・オホッピーといったすべての歯車が噛み合えば、下克上を演じても何ら不思議ではない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)