コラム 2023.01.20. 07:08

白熱のドラフトモード!当時の若手プロ野球選手たちが夢中になった伝説の名作『スーパーファミスタ2』

無断転載禁止
スーファミ版2作目『スーパーファミスタ2』

野球ゲームの移り変わりから見るプロ野球史~第20回:スーパーファミスタ2


 ゲームソフト福袋の野球ゲームはハズレなのか?

 最近、YouTubeでレトロゲーム系の福袋開封動画をよく見る。次はナニが出るかな……なんて楽しみつつも、たいていスポーツ(野球・サッカー・ゴルフ)やギャンブル(競馬・パチンコ)のソフトはハズレ枠としてネタになっている。

 特にファミコンやスーパーファミコンが全盛期だった80年代中盤~90年代は、プロ野球の地上波中継時代真っ只中。当時、小学校の教室では男子のほぼ全員がどこかの球団(埼玉では巨人と西武が2強)の野球帽を被っていた。

 「ファミスタ生まれ、燃えプロ育ち、眠そうな奴はだいたいハリスタ」なんつって凄まじい本数の野球ゲームが市場に出回ったため、のちに数百円のワゴンセールやジャンクコーナーの常連に。令和では爆死福袋の数合わせ的な存在である。


 スポーツゲームのシリーズタイトルは、ベースはほぼそのままに毎シーズン最新成績に更新されているだけ……と思われがちだが、野球ゲームは選手データ込みで立派な当時を知る“資料”でもある。だって、あの頃のどんな野球本よりゲームソフトは売れたわけだから。

 正直、悔しい。だって俺らが夢中になった名作がハズレ扱いされているリアル。野球ゲームは脇役じゃなく、主役。“当たり”だよっ!というわけで、今年の正月にゲームショップでスーパーファミコン福袋(10本3000円)を買って、そこに入っていた野球ゲームをレビューしようと思う。


 実は最初にファミコン福袋の方も買ったけど、『月風魔伝』に喜びつつ、スポーツゲームは緑色カセットの元祖『サッカー』のみの企画倒れで、同じく3000円のスーファミ福袋に再チャレンジ。こちらも市場価格2500円前後のプチレアソフト『ストリートファイターZERO2』が入っている良心的な福袋で、スポーツ系も『Jリーグサッカープライムゴール3』『全日本プロレス2 3・4武道館』『ジャンボ尾崎のホールインワン』と90年代の残り香を感じさせる超充実の内容。

 そして、肝心の野球ゲームは、この1本。ザ・王道。ナムコが誇る『スーパーファミスタ2』である。





白熱必至の「ドラフトモード」


 入っていたのが『白熱プロ野球ガンバリーグ』とか『ドラッキーの草やきう』だったらコラム書くのキツかった……じゃなくて、『スーパーファミスタ2』は93年3月12日発売。なお、前年のプロ野球は森西武が野村ヤクルトとの激闘の日本シリーズを制し、秋のドラフト会議では長嶋巨人が4球団競合の松井秀喜を引き当てている。

 ご存知、ファミコンの人気シリーズのスーファミ版2作目。本作では選手の漢字表記を実現させ、カタカナの助っ人選手は6文字以上でも実名表記(前作までの「デストラデ」が「デストラーデ」に)と現実の野球に近付いた。


 試合システムもファミコン版ならあっさりフェンス越えのホームランだった打球が、今作では外野手の頭を越えてフェンス直撃。もしくは失速してフェンス前で捕球という絶妙な打球軌道をファジーに再現。

 これにより1試合に程よく2~3発のアーチが飛び交う、ロースコアすぎない接戦が可能に。初期のファミスタシリーズでありがちなやたらと一発が出やすいとか、打球が伸びず低反発球レベルの投手戦という極端な仕様ではなくなった。


 空振り三振をしたらバットを叩きつけて怒る打者。ラッキー7は全員バットをクイクイ揺らす絶好調モード。ホームランを打てば憧れのバク宙ホームインだ。

 プレーヤーチームが惜敗すると、試合結果を伝える女性アナが居眠りしてしまう芸の細かさ。もちろん四コマ漫画「野球くん」の連載が始まった、お馴染みの「ナムコットスポーツ新聞」も健在だ。





 当時、兄ちゃんやクラスメートと対戦をやりまくったが、なにより盛り上がるのが、前作のスーファミ版に続き、『スーパーファミスタ2』にも搭載されている「ドラフトモード」だ。

 まず自チームを選択してドラフト会議に参加。ランダムに登場するS~Eランクに分けられた全70選手を2巡目まで指名でき、他球団と指名が重複すると当たりが入った封筒を選ぶ本物さながらの抽選に。Sランク選手に競合覚悟で特攻するか、安全にBランク選手を一本釣りするか? このドラフトモードのポイントは2つだ。


・獲得した選手はそのポジションのレギュラー選手と自動的に入れ替わる。
・Sランク、Aランクの選手に指名は重複。ただS~Eの選手評価はあくまで目安で、時に低ランクの選手の方が戦力になる。





 つまり、ヤクルトで捕手を指名すると「捕手・古田」が、西武で一塁手を指名すれば自動的に「一塁・清原」と入れ替わってしまう。

 それでは好選手を獲得しても、チームにとってはプラマイゼロ。自軍の弱点のポジションを正確に見極めて指名しないと逆に戦力ダウンになってしまうシビアな仕様だ。

 とはいっても、画面上にはランク評価とポジション以外は情報が出ないので、「捕手ガーネット……なんか打ちそう」とか「投手5かるいし……微妙に被本塁打多そう」とか曖昧な判断の運頼みで指名するしかないので、ゲーム性も高い。

 かと思えば、仮に巨人を使う場合は二塁・篠塚に衰えが見えるので即戦力のセカンド狙い。三塁・岡崎の打力が不安視され、ベテラン原辰徳もアキレス腱に不安を抱えるのでサードも欲しい。Bランク選手でも既存メンバーよりは戦力になるんじゃ……的な編成の悩み。これって、当時のチームの課題そのままである。ガチの野球マニアもライト層も盛り上がれるドラフトモードを経ての対戦は白熱必至だ。





現ヤクルト監督も夢中に…?


 今回、久々に福袋から引き当てプレイしてみたが、『スーパーファミスタ2』はやっぱり面白い。早く原稿を書かなきゃいけないのに、気が付けば4試合ぶっ続けで遊んでしまうくらい面白い。

 ファミスタシリーズは現代のSwitch版までひと通りやっているが、個人的にベストはドラフトモードが激アツのスーファミ版『スーパーファミスタ』の1と2だと思う(4からパワプロの登場に危機感を募らせ投球の高低を取り入れるなど多少迷走ぎみ)。

 傑作シリーズのベスト・オブ・ベスト。31年前の『週刊ベースボール』には、スーファミのコントローラー片手にガッツポーズをかます、ひとりの若手投手の写真とコメントが掲載されている。

 「ミーティングの復習といったらいい過ぎですが、相手チームのラインナップを並べて、寝る前に少しやると、不思議なものでリラックスできたりしまして」

 そう言いながら部屋の電気を落とし、真っ暗闇の中でナイターを想定して『スーパーファミスタ』に燃えるのは、当時23歳の現ヤクルト監督・高津臣吾だ。

 やめられない、とまらない。子どもも大人もプロ野球選手もみんな夢中になったのが、あの頃のファミスタなのである。


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)



ポスト シェア 送る

もっと読む

  • ALL
  • De
  • 西