藤浪とアスレチックスの相性は…?
阪神からポスティングシステムでのメジャー移籍を目指していた藤浪晋太郎。新天地は大谷翔平のエンゼルスと同じア・リーグ西地区所属のアスレチックスに決まった。
アスレチックスといえば、2018~2020年に3年連続でポストシーズンに進出した強豪チームのひとつ。しかし、過去2年の間に次々と主力選手を放出したことで、昨季はア・リーグワーストの60勝102敗(勝率.370)に終わり、本格的な再建モードに突入している。
果たして、藤浪はアスレチックスにマッチするのか。チームを取り巻く幾つかの要素から藤浪が活躍できる可能性に迫ってみた。
メジャー屈指の"投手天国"
まず藤浪にとって最大の利点となりそうなのが、アスレチックスの本拠地リングセントラル・コロシアムの存在だ。
ファンの間ではメジャー屈指の"ピッチャーズパーク"として定着しており、メジャーリーグの公式スタッツ専門サイト『Baseball Savant』によると、昨季のパークファクターは「94」。これはマリナーズのTモバイルパークに次いでメジャーで2番目に投手有利な球場であることを意味している。
ただし、サイズ的には特段広い球場というわけではない。両翼は101m、中堅が122m。そして最中間と右中間は甲子園球とほぼ同じ118mと、メジャーではほぼ平均といえるだろう。
そんな中で、投手にとって大きな味方となるのがファウルゾーンの広さ。ファンとの距離感を重視するメジャーにおいて、メジャーで最も広いといわれファウルゾーンは藤浪には大きなプラスとなるはずだ。
また、チームが再建中なのも藤浪にとっては悪くない。昨季のチーム防御率4.52はメジャー30球団中24位で、特に先発投手の防御率は同26位の4.69とローテーションを目指す藤浪にとっては好都合。
エースを務める左腕のコール・アービンは昨季チームで唯一規定投球回に達したが、9勝13敗と2ケタ勝利には届かなかった。また、アービンに続く先発候補もメジャーではほぼ実績がなく、台所事情はかなり苦しい。
藤浪を含め10人前後が5つあるローテーションの枠を争うことになりそうだが、ほぼ全員が20代後半で藤浪とは同年代。今のところベテランと呼ばれるような存在もいないため、藤浪とすればかなり溶け込みやすい環境にあるといえるかもしれない。
新コンビ誕生に期待
そして、藤浪とバッテリーを組む捕手が誰になるかも重要な要素となるだろう。
過去2年で合計35本塁打を放ったショーン・マーフィーが今オフにトレードでブレーブスに移籍。この穴を埋めることになりそうなのが、昨季メジャーデビューをしたばかりの25歳シェイ・ランゲリアーズである。
もともとブレーブスにドラフト1巡目指名(全体9位)で指名された逸材で、ポテンシャルの高さは折り紙付き。1年目の昨季は指名打者での起用も多かったが、打力以上に高い評価を得ているのがその守備。特に肩の強さは投手を助けることになるだろう。
まだメジャー経験の浅い若い捕手だけに、藤浪としては気後れするようなこともないはず。数年後にはオールスターの常連になっていてもおかしくないランゲリアーズと藤浪がどんな化学反応を起こすのかに注目したい。
いずれにしても、今季のアスレチックスは優勝争いに絡むような戦力を持ち合わせておらず、昨季メジャーでは唯一1試合平均観客数が1万人を割り込んだように、メジャーでも1~2を争う不人気球団でもある。
阪神時代のプレッシャーから解き放たれた藤浪が、新天地でエース級の活躍を見せても何ら不思議ではない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)