残るイスは1つ……
キャンプインの前から、タイガース投手陣の層の厚さは誰が見ても明らかだった。
特に先発陣はエースの青柳晃洋、ルーキーから2年連続で安定した成績を残した伊藤将司に、西勇輝が充実の調整。ここに昨秋キャンプで岡田彰布監督をうならせた4年目の西純矢、7年目の才木浩人という右の有望株2人が、初日からブルペンで剛球を投げ込んだ。
おそらくこの5人は、順調にいけば開幕ローテに名を連ねる可能性が極めて高い。6人制を敷くなら実質残りは1枠しかなく、一軍の先発枠に食い込むことがいかに難しいかが見て取れる。そして、その「6人目の男」をめぐる争いも熾烈になりそうだ。
「もう1枚くらい左が入ってくれたら助かる」
今キャンプで評価を急上昇させているのが、昨年12月に行われた現役ドラフトでホークスから獲得した左腕・大竹耕太郎だ。
日々ブルペンで投球を目にしていて分かるのが、大竹のテンポの良さとフォームの再現性の高さ。1球1球の間隔が短く、次々と捕手の構えたミットにキレの良いボールが吸い込まれていく。
出色のパフォーマンスを披露したのが12日の紅白戦。紅組の2番手で登板すると、任された3イニングを無安打・無失点に封じた。
3日前のシート打撃では「低めは引っかけていた」と精度に課題を残していたカーブを、1イニング目は全打者の初球に選択。ストライク率も上がり、配球のアクセントになった。
意識したことはまだある。同じくシート打撃で「弱かった」という右打者への外角球。この日は満足いくものだったといい、内角球にも相乗効果が働いた。
豪華な面々を揃える先発陣も、強いて言えば左腕が伊藤将しかおらず、大竹の存在は際立つ。
岡田監督も「左が今のところ伊藤(将司)1枚やから。そういう意味ではすごい戦力になりそうな感じがする。(ローテに)もう1枚くらい左が入ってくれたらそれは助かる」と期待を隠さなかった。
ベテランから若手、新助っ人も虎視眈々
さらに同じ左腕では、昨年までの中継ぎから先発に再転向する岩貞祐太もいる。
キャンプでは、中継ぎ時代は封印していたチェンジアップの感覚を取り戻すことに注力。2016年には10勝を挙げた実績もあり、今後は実戦で“先発仕様”の投球を取り戻していく。
そして、同じ沖縄・具志川でキャンプを張るファームには、復活を期す秋山拓巳が牙をとぐ。
古傷の右膝の状態を考慮されて一軍にはいないが、「良い練習ができいている。ここから上がってくると思う」と逆襲に燃えている。
このほかにも村上頌樹や桐敷拓馬、新外国人のブライアン・ケラーと候補がひしめく虎のローテーション争い。残りのイスに座る者が消去法にならないことは間違いなさそうだ。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)