オランダ野球の歴史
今やヨーロッパNo.1の強豪として名を馳せているこの国に野球が伝えられたのは1901年、アメリカ帰りの英語教師によるものだという。
1911年に初めて正式な試合が行われ、その翌年にオランダ王立野球ソフトボール連盟が発足した。
1922年に誕生したトップリーグのフーフトクラッセはプロアマ混成リーグであるが、ポストシーズンの常連チームともなると、ほとんどの選手がプロ契約を結んでいる。
「初のメジャーリーガー」誕生は、意外なことに19世紀に遡る。1894年、ジョン・ハウスマンがシカゴ・コルツ(現・カブス)の一員としてメジャーの舞台に立ったのが最初だが、彼は幼少時にアメリカに渡ったオランダ生まれの移民だった。
20世紀以降の“近代野球”においては、1970年に通算287勝の殿堂入り投手バート・ブライレブンがツインズでメジャーデビューを飾っている。
彼もまた「アメリカ育ち」で、純粋な意味でのオランダ人初のメジャーリーガーと言えば、2007年にマーリンズでデビューしたリック・バンデンハーク(元ソフトバンクなど)ということになる。
もっとも、これも「本土」に限ったことで、オランダ野球の重心は、実はカリブ海に浮かぶキュラソー島にある。
現在、人口比においてはドミニカをしのぐプロ野球選手輩出率を誇るこの島からは、バンデンハークに先んじること22年前の1989年、ヘンスリー・ミューレンス(ヤクルトなど)がヤンキースでメジャーデビューを飾っている。彼のメジャーデビューがオランダ領カリブ諸島の野球熱に火をつけ、その野球熱が本国にも伝わったと言っても過言ではない。
オランダ野球の「ゴッド・ファーザー」とでもいうべきミューレンスは、長らく代表チームを率いているが、今大会もチーム・オランダを率いてかつてプレーした日本に戻ってくる。
直近2大会で決勝トーナメント進出
ヨーロッパにおいては、大陸選手権において1956年の第3回大会での初優勝以来、これまで24回の優勝を飾るなど無敵を誇っている。
国際舞台においても、国際大会『ハーレムベースボールウィーク』を1960年以来自国で開催するなど、アマチュア野球界で主要な役割を果たしてきた。
2000年代以降は主要な国際大会でも頭角を現し、2006年と2010年には『インターコンチネンタルカップ』で準優勝。最後の開催となった2011年のワールドカップではついに世界の頂点に立った。
オリンピックでは過去5大会に参加しながらも、目立った成績は残せていない。しかし、WBCの舞台では2006年の第1回大会で7回コールド参考記録ながら、シャイロン・マルティスがノーヒットノーランを達成している。
この大会では1次ラウンド敗退に終わったが、第2回大会では2次ラウンド進出。そしてここ2大会では決勝トーナメント進出と年々その存在感を増している。
強力打線で投手力をカバー
今回の布陣も、例年のごとくカリブ勢中心となる。
メジャーリーガーを集めた打線は強力だ。ともに過去2大会に出場しているJ.スコープ(タイガース)とX.ボガーツ(パドレス)の二遊間コンビが核となるだろう。
現在FAのD.グレゴリアスは三塁手としての出場か。内野には、昨季カブスで35試合に出場したA.シモンズ(FA)もいるので、遊撃を本職とするシモンズを三塁で起用し、ヤンキースの遊撃手としてシーズン本塁打記録も持っているグレゴリアスを指名打者に置いて、打撃に専念させるのも手だ。
一塁にはこれまた現在FAのJure.プロファーが入るものと思われるが、他のメンバーとの兼ね合いでは、昨年パドレスで主に守ったレフトに回る可能性もある。
そして外野には、日本でシーズン本塁打記録を打ち立てたW.バレンティン(元ヤクルトなど)が名を連ねる。
一昨年シーズン限りでソフトバンクを退団したバレンティンは、昨季はメキシカンリーグで開幕を迎えたものの、開幕直後にリリースとなり、その後は代表チームでプレーするのみだった。今大会を現役最後と位置づけ、第1ラウンドを突破し、日本のファンの前で最後の雄姿を見せるつもりでいる。
迫力満点の打線に対し、投手陣はどうしても見劣りする。昨年ブレーブスで41セーブを挙げたK.ジャンセン(レッドソックス)も1次ラウンドは不参加となり、チームに加わる可能性があるのは準決勝からだという。
昨季フーフトクラッセで先発投手として7勝を挙げたものの、アメリカではA級までの経験しかないL.ハイヤーがメンバー入りしているところからも、その台所事情が表れている。
先ほど名前の出たノーヒッター、S.マルティスも昨季はフーフトクラッセで6勝を挙げ、防御率1.22を残すなど、35歳になる今もまだまだ健在。かつてプレーした台湾の地に凱旋する。
プールAに入ったオランダは1次ラウンドを台湾で迎える。初戦は3月8日のキューバ戦。この試合が今大会のオープニングゲームとなる。
地元・台湾のほか、同じカリブ勢のライバルであるキューバとパナマ、それにヨーロッパにおける永遠のライバルのイタリアと東京行きの2枚の切符を巡って戦う。
文=阿佐智(あさ・さとし)
メンバー
<投手>
0 D.ウエスト
16 L.ハイヤー
17 A.フランセン
20 M.ボルセンブルック
29 E.メンデス
32 J.エスタニスタ
33 K.ケリー
37 T.デブロック
39 S.マルティス
41 R.ハンティントン
45 J.スルバラン
55 F.ファンガープ
58 A.ケリー
99 W.フロラヌス
<捕手>
14 C.トロンプ
21 D.リカルド
26 S.ループストック
<内野手>
2 X.ボガーツ
7 J.スコープ
9 A.シモンズ
10 Juri.プロファー
13 Jure.プロファー
15 S.スコープ
18 D.グレゴリアス
40 Z.ウィール
77 R.パラシオス
<外野手>
3 J.パラシオス
4 W.バレンティン
11 R.ディダー
50 R.バーナディナ