コラム 2023.02.27. 20:00

プールA:キューバ 「古豪復活」目論むも「ガチ代表」とは程遠い陣容

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アルフレド・デスパイネ

キューバ野球の歴史


 2000年代前半までは国際大会で無双を誇った、言わずと知れた野球大国・キューバ。

 19世紀半ばにアメリカで野球が始まった直後、この国にも早々とこのゲームが伝わり、1874年にはプロリーグが開始されている。以後、MLB傘下の3Aチームであるハバナ・シュガーキングスがマイナーの強豪として名を馳せるなど、長らくラテンアメリカ野球の中心的存在であった。


 1949年に始まったウィンターリーグの国際チャンピオンシップ『カリビアンシリーズ』では、最後の参加となった1960年までの12大会で7度の優勝を飾っている。

 しかし、キューバ革命後、社会主義を国是とするようになると、4チームからなる国内プロリーグは州対抗のアマチュアリーグに改組され、以後、「アマチュアの雄」としてその名を知らしめるようになる。

 五輪の舞台においては、正式競技として採用された1992年バルセロナ大会から連覇を飾り、プロが参加した2000年シドニー大会では、マイナーリーガーを集めた宿敵・アメリカに決勝で敗れたものの、その競技レベルがプロにひけを取らないことを世界中に知らしめた。

 主要国がオールプロで臨んだ2004年のアテネ大会では覇権を取り戻し、アメリカや中南米諸国がメジャーリーガーを揃えた2006年の第1回・WBCにおいても決勝まで駒を進め、そのレベルが「メジャー並み」であることを示している。


「最強キューバ」復活をめざして


 ところが、世界各国のプロとの接触は思わぬ波乱を招いた。「公務員並み」とも言われる薄給に甘んじていた選手たちが、自らの技能の国際相場を知ってしまったのだ。

 2000年代以降、主力選手の流出は止むことなく、2013年には革命以前のプロリーグ以来の名門球団シエンフエゴス・エレファンテスから、実に11人もの主力が一気に亡命するというキューバ球界を揺るがす大事件が起こった。

 キューバ政府は国技である野球からの人材流出を防ぐべく、政府を介した国外プロリーグへの選手の「レンタル移籍」の道を作ったものの、この対象にアメリカの球団は入っておらず、国際大会という見本市での売り込みに成功した選手の流出はいまだ止んでいない。


 この結果、近年のチーム・キューバは"第2代表"と化しており、プロ化が進む世界の野球界において埋没しつつある。WBCの舞台では第2回大会以降、準決勝進出を逃しており、2021年の東京五輪にはついに出場そのものを逃している。

 このような事態を打開すべく、キューバ当局もついに亡命者の代表受け入れを決断した。そのニュースに、世界中の野球ファンは「最強キューバ」が帰ってくることを期待したが、ふたを開けてみると、メジャーリーガーの参加はあったものの、バリバリの主力の名はなく、今大会も苦戦が予想される。


中心は「日本組」


 陣容は「日本組」中心になるようだ。NPB経験者が名を連ねているという点では、侍ジャパンとの対戦があるかもしれない第2ラウンドへの進出は日本のファンの期待するところだろう。

 ロースター構成は、投手14人・野手16人。野手には、昨年までソフトバンクでプレーしていたA.デスパイネとY.グラシアル、それに中日から日本ハムに移籍したA.マルティネスの名がある。

 また、前回の2017年大会で独特の「走り打ち」が注目を集め、シーズン途中からロッテでプレーしたR.サントス、同年日本ハムに在籍したY.ドレイクという現在メキシカンリーグでプレーしている2人もロースター入りしている。


 メジャーからは、昨季12本塁打のL.ロベルトと、2019年に25本塁打をマークしたY.モンカダのホワイトソックスコンビに加え、2021年のルーキーイヤーに7本塁打を記録したA.イバネス(タイガース)もメンバー入り。

 さらには第2回大会の主力選手にしてMLBオールスターに2度出場、ホームランダービーも2度優勝を誇るY.セスペデスも名を連ねている。ただし、アスレチックスやメッツで8シーズンプレーしたベテランも37歳。この冬は2年ぶりに現役復帰してドミニカリーグのアギラスでプレーしたが、往年の力はないだろう。


 投手陣には、守護神候補としてL.モイネロ(ソフトバンク)とR.マルティネス(中日)が名を連ねる。さらに中日からはリリーフのY.ロドリゲスとF.アルバレスも選出されている。

 また、2018年から3シーズン、中日と阪神でスターターを務めたO.ガルシアもメンバー入り。そして先発候補には、この冬のドミニカウインターリーグで負けなしの4勝を挙げた左腕R.エリアスも名を連ねている。

 メジャー通算22勝のベテランも、昨季はシーズンのほとんどをマリナーズの傘下3Aタコマで過ごしたが、ウインターリーグの好調をそのまま持ち込めば、怖い存在になるだろう。


 キューバは今大会、台湾で1次ラウンドを迎える。このグループには地元・台湾をはじめ、オランダ、イタリア、パナマが名を連ねているが、オランダとともに頭ひとつ抜け出している印象だ。

 東京への道は決して楽なものではないが、NPB勢が多いこのチームに日本のファンの期待は高い。


文=阿佐智(あさ・さとし)





メンバー


<投手>
21 N.クルーズ
22 F.アルバレス
29 Y.ロドリゲス
30 J.ロドリゲス
45 M.ロメロ
47 Y.レイエス
53 E.レイバ
55 R.エリアス
57 R.ボラーニョス
58 Y.イエラ
83 C.ビエラ
89 L.モイネロ
92 R.マルティネス
98 O.ガルシア


<捕手>
16 L.キンタナ
17 A.ペレス
40 A.マルティネス


<内野手>
5 Y.ムヒカ
8 L.マテオ
10 Y.モンカダ
27 Y.グラシアル
44 D.ガルシア
71 E.アルエバルエナ
77 A.イバネス


<外野手>
1 R.サントス
7 Y.ギベルト
33 Y.ドレイク
52 Y.セスペデス
54 A.デスパイネ
88 L.ロベルト



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