この春に急浮上しそうな有望株は?
今月18日に開幕する『第95回記念選抜高等学校野球大会』には、今秋のドラフト戦線を賑わせそうな注目選手が集まる。
投手ではドラフト1位候補に挙がる大阪桐蔭の最速149キロ左腕・前田悠伍(3年)を筆頭に、仙台育英が誇る高橋煌稀、湯田統真、仁田陽翔(いずれも3年)の3本柱、専大松戸の最速151キロ右腕・平野大地投手(3年)ら速球派の投手がそろう。
一方、彼らに比べて知名度では劣るものの、今春の大舞台で評価を高めるかもしれない好投手も多くいる。今回は、全国的には無印に近い好投手たちを、春の甲子園が開幕する前に紹介したい。
山田渓太(大垣日大/3年)
・172センチ/72キロ
・右投右打
今春のセンバツが甲子園春夏通算34度目の指揮となる名将・阪口慶三監督が「非常に賢い投手」と評価する最速143キロ右腕。球速以上にキレを感じさせる直球を持ち味とし、力感を感じさせないキレイな投球フォームから縦回転の直球を投げ下ろす。
昨秋の公式戦では登板9試合で6度完投したスタミナも持ち合わせ、防御率は1.74と抜群の安定感を披露。東海大会でも全3試合で完投。4強進出に貢献し、チームを甲子園出場に導く立役者となった。
指揮官がクレバーさを評価する通り、直球一辺倒の投球スタイルではない。持ち球はスライダー、カットボール、カーブ、スプリットの4種類。緩急を巧みに操りながら、変化球でも勝負できる術も持ち合わせている。
2年春には背番号10を背負って、甲子園のマウンドを経験している。1回戦の星陵(石川)戦では「1番・中堅」で先発出場し、0-3の4回から2番手として登板。5回を投げて被安打7、3失点(自責2)と流れを引き寄せることができずに初戦で敗退した。
1年前からの成長を見せられれば、あと1勝で歴代7位の甲子園通算40勝に並ぶ阪口監督への恩返しもかなう。
清水風太(智弁和歌山/3年)
・177センチ/88キロ
・右投左打
昨秋の段階では背番号11と、“2番手”の位置付けだった最速146キロ右腕。投手に転向したのは昨年6月で、本格的な投手歴は9カ月ながら、ひと冬超えて成長した。
遠投115メートルの地肩の強さを武器に頭角を現し、さらなる伸びしろを感じさせる右の本格派。昨秋は近畿大会・準決勝の報徳学園戦で先発を任されると、白星にはつながらなかったものの6回3失点の力投を見せた。
実は1年秋に背番号6を背負うなど、野手としても高い能力を見せていた。しかし、故障などで離脱する間に内野陣の層の厚さを痛感。中谷仁監督に投手転向を直訴し、花形と言える遊撃のポジションを手放した。
投手歴は浅いものの、持ち前の野球センスを生かしてスライダー、カーブ、チェンジアップ、ツーシームの4種類の変化球を操る器用さも持ち合わせている。
同校は清水だけでなく、昨秋に背番号1だった最速139キロ左腕・吉川泰地(3年)も好投手。この左右2枚を中心に、上位へ勝ち上がっていくだけの戦力はある。
青野拓海(氷見/3年)
・180センチ/85キロ
・右投右打
21世紀枠で選出された高校にも、要注目の投手がいる。180センチ・85キロの恵まれた体格を生かし、力強い速球で勝負するのが最速143キロ右腕の青野だ。
氷見は21世紀枠での選出ながら、昨秋の富山県大会は優勝。北信越大会でも、初戦の遊学館(石川)戦を延長戦で制した実力校でもある。
現チームの選手17人中16人が同市出身という“地元軍団”。青野は高校通算18発を誇る3番打者としてもチームをけん引する中心選手で、野球を始めてから高校1年夏までは捕手一本だったものの、新チーム結成時に投手が不在だったことを理由に投手に転向した。
投手としても、すぐに頭角を現した。その過程で一段と成長させたのが、昨夏の経験だ。
2年夏の県大会では背番号1を背負い、順調に決勝まで勝ち進む。その決勝・高岡商戦で、先発を託されたものの3回で降板した。
救援陣にマウンドを託し、1点優勢で9回表の守備を迎える。二死一塁、2ストライクと聖地まであと1ストライク。しかし、そこから逆転打を許した。
直後の攻撃では、二死ながら二・三塁とサヨナラ勝ちの好機で青野に打席が回ったが、中飛に倒れて最後の打者となった。
昨夏の反省を生かし、冬は連投に耐えられる体力づくりに励んできた。3月の練習試合解禁前のブルペン投球では、参考記録ながら自己最速の143キロを更新する145キロを計測したと言う。
21世紀枠で選出された高校が甲子園で勝利したのは、過去10年で4校しかいない。青野が二刀流として聖地で躍動すれば、一気に注目を集める存在になりそうだ。
今春のセンバツでは、他にも好投手がズラリと並ぶ。春の甲子園を経て評価を高める投手は誰だ──。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)