中日期待の大砲
3月27日、バンテリンドームで行われた中日-ロッテのオープン戦。
2回の先頭打者として登場したアリスティデス・アキーノ外野手は、ロッテ・美馬学の144キロ高め速球を振り抜くと、左翼ポール付近へすっ飛んでいく弾丸ライナーを見つめながら、ゆっくりと駆け出した。
オープン戦最終戦で放った、セ・リーグの選手では単独最多となる4号ソロ。
「失投を完ぺきに仕留められてよかった。神様のおかげで、しっかりとした沖縄キャンプを送れた。オープン戦もしっかりできた。あとは自分の持てるものをすべて出し切ってシーズンに向かっていきたい」
28歳の大砲はリラックスした表情で笑顔を浮かべた。
「日本もそうか?」
来日1年目。ドミニカ共和国出身で、そこから米国に渡った。
レッズでレギュラーとして活躍し、MLB通算244試合に出場。41本塁打をマークした。2019年の8月には1試合3発を含む、月間14本塁打をマーク。この月のMVPにも選ばれている。
再び海を渡り、日本の文化を知りたがる。そのひとつが、スポーツの中における野球の位置付け。
WBCで世界一に湧き、帰国した日本代表が首相と面会したニュースも知った。だから、把握したかったことがある。
「首相に侍ジャパンがあいさつしていたよね?アメリカではワールドシリーズを制覇すれば、大統領を表敬訪問する。母国・ドミニカ共和国も、国内の大会が終わってチームが勝ったときは呼ばれるんだ。日本もそうか?優勝チームが首相官邸にあいさつに行くのか?」
聞かれて、ハッとした。日本では、そういう文化はない。
アキーノに「呼ばれ、なさそう……」と伝えた。すると「オレがいっぱい活躍すれば会えるかもしれない」。満面の笑みを浮かべた。
開幕戦で挨拶代わりの一発を
根拠もなく、突然、官邸に行きたいと言うほど無鉄砲ではない。過去の経験が前向きな気持ちにさている。
メジャーリーガーとして、母国・ドミニカ共和国のアビナデル大統領と面会している。
「野球選手がたくさん呼ばれたんだ」
異国の地まで届く活躍を見せ、母国の野球界を盛り上げる。その姿勢をたたえられたという。
中日の開幕戦は3月31日。宿敵・巨人と東京ドームで戦う。
実はその日、同大統領が来日する。岸田首相と意見交換のため。アキーノは「すごく良いことだ。日本とドミニカ共和国がともに発展することを願っているよ」とコメント。両国の繁栄を願う。
プライムミニスター・キシダとの面会可能性は極めて低い。それでも、アキーノは竜を盛り上げることはできる。
まずは3.31、東京から350キロ離れた名古屋に、“今季の中日にアキーノあり”を届ける一発を放つ。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)