中日・小笠原慎之介 (C) Kyodo News

◆ 白球つれづれ2023~第14回・開幕戦では異例の145球。小笠原が見せた勝利への執念

 プロ野球開幕。久しぶりに声出し応援が解禁されて、各球場に熱気が戻ってきた。

 3月30日、エスコンフィールドで日本ハム対楽天戦が先行開幕。翌31日から6球場で計18試合が行われ、悲喜こもごものドラマが繰り広げられた。

 この中で、最も印象に残った場面を個人的に振り返ると、中日・小笠原慎之介投手の涙を取り上げたい。

 敵地・東京ドームでの巨人戦。開幕投手の大役を担った小笠原が胸のすく力投を見せる。勝利まであと一歩の8回、巨人の中田翔選手に逆転打を許して無念の降板。その直後から25歳の左腕は目に涙を浮かべた。しかし、チームは9回に再逆転。今度はうれし涙に変わっていた。開幕戦では信じられない145球の熱投が報われた瞬間だった。

 開幕投手は1年間、その投手を軸に戦っていくとチームが認める大役だ。オリックスの山本由伸やロッテ・佐々木朗希、DeNA・今永昇太らの大エースはWBCの影響もあって外れたが、重圧と緊張はいつの年も計り知れない。前年、最下位に沈んだ立浪中日にとっては逆襲のためにも大事な初戦。小笠原の背負うものは大き過ぎるほどに重苦しいものだった。

 初回から全力投球、飛ばしに飛ばした。気迫を前面に押し出す。昨年初めて2ケタ勝利を上げて、エースの仲間入りを果たした男は、球数が増え続けても続投を志願している。

 ちなみに開幕投手の投球数を調べてみると、小笠原に次いで多かったのは、西武・髙橋光成の8回114球。次いで日本ハム・加藤貴之が7回102球。他は総じて80~90球前後で役目を終えている。

 開幕投手を務めた翌日は腕がパンパンに張って、上がらないと言われる。それほど過酷だから今では100球をメドにお役目ごくろうとなるケースが一般的だ。

◆ 新たな中継ぎ投手陣を構築できるかが浮上のカギ

 昨今の投手分業制にあって、「小笠原の145球」は一部で物議を醸している。

 ネット上では「監督やコーチは何を考えているのか?」「故障したらどうするの?」といった批判の声が多数寄せられた。

 立浪和義監督は試合後「もちろん球数は気になっていたが、本人も投げたいと言っているし、任せた」と苦渋の決断を語っている。

 自らの左腕で勝利を呼び込もうとする責任感に加えて、小笠原にはチームの緊急事態も頭にあったはずだ。開幕直前に発覚したキューバ出身の中継ぎエース、ジャリエル・ロドリゲスの亡命事件である。

 本来なら、7回時点でリードしていれば8回は昨季45ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手賞に輝いたロドリゲス。9回は絶対的守護神であるライデル・マルティネスで逃げ込むのが必勝パターン。しかし、“勝利の方程式”が突如、崩れたために、小笠原の続投をチームとしても望むしかなかったのだ。

 対巨人との第3戦では、同点の8回に清水達也投手を起用したが丸佳浩選手に決勝本塁打を喫している。ロドリゲスの穴をいかにして埋めて、新たな中継ぎ投手陣を構築できるかが、今後の中日浮上のカギとなりそうだ。

 開幕カードを1勝2敗。課題も浮き彫りになったが、一筋の光明は見えた。小笠原の勝利への執念である。

 打たれては泣き、逆転勝利にまた涙する。まるで一発勝負の高校球児のような姿がチームに新たな活力をもたらした。

 元々、中日の先発投手陣は小笠原をはじめ、大野雄大、柳裕也にWBCで佐々木朗希に匹敵する素材と評価された二十歳の髙橋宏斗がいる。楽天から移籍した涌井秀章に、福谷浩司まで加えた六本柱はライバル球団もうらやむ顔ぶれだ。あとは、アリスティデス・アキーノ選手らを加えた攻撃陣で、懸案の得点力が上がれば台風の目以上の存在ともなり得る。

 開幕戦だから、流せる涙。勝負事の持つ怖さと凄みが凝縮された一瞬だ。

 だから、野球は面白い。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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