今季も初登板黒星で「11連敗」となった左腕
12日、ベルーナドームで行われる西武-ロッテの一戦。注目を浴びるのが、予告先発投手として公示されている西武の2年目・隅田知一郎投手(23)だ。
2021年のドラフト1位で西武に加入した左腕は、昨季開幕2戦目のオリックス戦でプロ初登板・初先発を果たし、7回を1安打で無失点に抑える好投。見事な投球で4球団が競合したゴールデンルーキーぶりを発揮してみせ、本命視された新人王に向けて好スタートを切った……かに見えた。
ところが、その後は投げても投げても白星が遠い日々。なんと新人投手としてはパ・リーグワースト記録となる「10連敗」を喫し、まさかの1勝10敗でルーキーイヤーを終えることとなった。
年が変わって嫌な流れを変えたいところだったが、今季も初登板となった4月5日の楽天戦では6回1失点の力投を見せながら、味方打線が沈黙して0-1で敗戦。初回の内野ゴロの間に奪われた1点が響き、連敗は年を跨いで「11」に伸びている。
12日のマウンドで1年以上ぶりとなる白星を掴むことができるか、大きな見どころとなりそうだ。
NPBワーストタイの「開幕12連敗」
そこで過去の歴史を振り返ってみると、隅田のように好投すれども報われなかった“不運な新人投手”というのは何人か存在した。まず名前が挙がるのは、隅田にとって西武の大先輩にあたる森繁和である。
1979年のドラフト1位で入団した森は、隅田と同じく開幕第2戦目:4月9日の近鉄戦でプロ初登板・初先発を果たす。
しかし、3回まではゼロに抑えたが、4回に3本塁打を被弾するなど、一挙5失点でKO。プロの厳しさを突きつけられるほろ苦いデビューとなった。
さらに本拠地開幕戦となった4月14日の日本ハム戦では、7失策という草野球並みのザル守備に足を引っ張られて2敗目。すると、ここから好投すれども報われない我慢の日々が続く。
4月18日の阪急戦では、8回途中まで1失点も味方打線がわずか2安打と沈黙。0-1で3敗目を喫した。
そこから中3日で先発した同22日のロッテ戦も、0-0の7回にレオン・リーに浴びた一発が致命傷となり、またもや最少失点差で負け投手に。チームも開幕から1引き分けを挟み、NPBワーストタイの12連敗となった。
その後、リリーフに回っていた森は8月中旬から先発に復帰したが、9月9日の阪急戦、同14日の南海戦といずれも1-2で敗戦投手に。終わってみれば、5勝16敗7セーブ。打線の援護と守備のバックアップがあれば、2ケタ近く勝っていたかもしれないだけに惜しまれる。
だが、1年目の悔しさをバネにして、森は翌年10勝14敗7セーブと2ケタ勝利をマーク。東尾修と松沼兄弟とともに、投手陣の柱へと成長を遂げたのだった。
高卒ワースト「開幕5連敗」
高卒新人ではワーストとなる開幕から5連敗を記録したのが、中日のドラ1左腕・小笠原慎之介だ。
2016年、前年夏の甲子園優勝投手の実績を引っさげて、5月31日のソフトバンク戦でプロ初登板・初先発をはたした小笠原。5回を1安打1失点に抑え、勝利投手の権利を得て降板したが、8回に福谷浩司が逆転を許し、プロ初勝利がスルリと消えた。
ドラフト制以降、先発デビューした高卒新人の中でリリーフが打たれて勝利を逃したのは、2000年の河内貴哉(広島)以来で4人目というアンラッキーだったが、これはほんの“序の口”だった。
2度目の先発となった6月7日のオリックス戦。小笠原は5回を2失点に抑えたにもかかわらず、勝利目前の9回に開幕から31試合連続無失点のNPB記録を継続中だった田島慎二がまさかの同点打を許し、デビューから2戦続けて白星が消えるという“史上最もツイていない高卒新人”となる。
その後も8月20日のDeNA戦では7回を2失点と好投しながら、打線の援護なく1-2で敗戦。セ・リーグでは1950年の国鉄・金田正一の4連敗を更新する、高校出身新人ワーストの5連敗となってしまう。
そして、9試合目の先発となった9月4日の巨人戦も、7回を10奪三振の力投ながら0-3とリードされ、6連敗は避けられないかに見えた。
ところが、味方打線が8回に集中打で一気に4-3と逆転したことから、思いがけず待ちに待ったプロ初勝利が転がり込んできた。
「やっとスタートラインに立てた。次は2勝目を目指したい」と誓った小笠原は、9月18日のヤクルト戦で早くも目標をクリア。昨季は7年目にして初の2ケタ勝利を記録し、通算勝利数も順調に伸ばしている。
不運なめぐり合わせが続き……
小笠原と同じ2016年、初勝利まで“生みの苦しみ”を味わったのが、広島のドラ1ルーキー・岡田明丈だ。
4月1日のプロデビュー戦。巨人を相手に6回を1失点と好投しながら、7回にエクトル・ルナの三ゴロ失策で同点に追いつかれ、初登板初勝利をフイにした。ここから長い試練が待ち受けていた。
3度目の先発となった5月14日の中日戦では、6回2失点の力投も、3点リードの7回にブレンデイン・ヘーゲンズが同点を許し、またしても初勝利がお預けに……。
さらに、5月21日の阪神戦は6回1失点で勝ち負けなし、同28日のDeNA戦では6回2失点で負け投手になった。
6月4日のソフトバンク戦も1失点に抑えながら5回降雨コールド引き分けに泣き、同11日の楽天戦も7回無失点で降板後、またもやヘーゲンズが逆転を許すといった具合に、これでもかとばかりに不運なめぐり合わせが続く。
そんな負のスパイラルからやっと抜け出せたのが、6月25日の阪神戦。7回2失点で登板9試合目のプロ初勝利を手にした岡田は「長かった。(勝てなかったときも)ファンの声援で毎試合しっかり投げようと思った」と感無量の面持ちだった。
“幻の勝利”が相次いだ結果、1年目は4勝に終わった岡田だが、翌17年は12勝を挙げ、チームのリーグ連覇に貢献している。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)