六大学の注目は広陵出身のスラッガー
歓喜に沸いたWBCに、高校野球は春のセンバツ、そしてプロ野球とメジャーリーグの新シーズン開幕と、野球の話題に事欠かなかった3月の下旬。そして4月に入ると、各地で本格的に大学野球の春季リーグ戦がはじまる。
8日(土)には神宮で東京六大学が開幕。プロ野球でも森下翔太(阪神)や矢澤宏太(日本ハム)といった大学野球からプロの世界に殴り込んだルーキーが注目を集めているが、“新人”が楽しみなのはプロ野球に限ったことではない。大学球界でも、早くから活躍が期待される1年生ルーキーが非常に多いのだ。
先に触れた東京六大学では、広陵高出身の明治大・内海優太(一塁手兼外野手)がスカウト陣の注目を集めている。
高校時代は2年生から中軸として活躍し、秋の明治神宮大会では本塁打を放つなど、準優勝に大きく貢献した。また、3年春に出場した選抜でも、2試合で打率5割という好成績を残している。
それでも、大学球界でトップクラスの実力を誇る明治大でのレギュラー獲得は容易ではないが、内海はその中でもオープン戦でたびたび起用されており、持ち味の長打力を発揮している。ルーキーイヤーから、神宮球場を沸かせる活躍が期待できそうだ。
一方、同じ東京六大学でも、慶応大は主力が卒業して投手陣の立て直しが急務。なかでも、筆者は慶応高出身の広池浩成に強い関心を抱いている。
広池は、西武で球団副本部長を務める浩司氏(元広島)を父に持つ。高校野球引退後の半年間でもスケールアップに成功し、3月のオープン戦で140キロ台後半のスピードをマークした。
現時点では長いイニングで力を発揮できるか未知数だが、球威は大きな魅力。早い時期にリリーフでリーグ戦デビューを果たす可能性もありそうだ。
また、立教大も投手・野手ともに多くの主力選手が入れ替わった。
上位進出に向けて新戦力の台頭が欠かせないチーム事情のなか、聖光学院高出身の佐山未来(投手)と大阪桐蔭高出身の丸山一喜(一塁手)に期待が集まる。
佐山は昨夏の甲子園で聖光学院を過去最高の4強に導いた右腕。最速は140キロ前後にとどまるものの、制球力が安定しており、試合を作る能力が高い。立教大はエースの池田陽佑(4年/智弁和歌山)に次ぐ投手が不安視されているため、春のリーグ戦から佐山に登板機会が与えられそうだ。
そして丸山は、大阪桐蔭で4番を任されていた左の強打者。たくましい体格と力強いスイングは上級生に引けをとらない。オープン戦でも長打を放つなど、存在感を示している。
父は横浜と中日で活躍した外野手
続いて、東都大学野球を見ていこう。まず、早くから期待できそうな選手はと言えば、東海大菅生高出身で亜細亜大の小池祐吏(三塁手)の名前が挙がる。
父は、横浜と中日で活躍した正晃氏(現・DeNA外野守備走塁コーチ)。中学時代から評判が高く、東海大菅生では下級生の頃からサードのレギュラーを掴み、2年生の時に春夏連続で甲子園の土を踏んだ。
広角に打ち分ける打撃と、サードから見せる強肩も光る。亜細亜大入学後もオープン戦から積極的に起用され、しっかり結果を残した。中軸候補として楽しみな存在だ。
大阪桐蔭高出身の中央大・伊藤櫂人(三塁手)も有望株のひとり。高校時代は不動のトップバッターとして君臨し、甲子園でも通算3本塁打を放っている。
中央大の三塁には主将の中前拓也(4年/浦和学院)がいるため、伊藤がいきなりレギュラーを獲得することは難しい。ただ、東都大学野球は指名打者制を採用しており、伊藤が春のリーグ戦でデビューする可能性も少なくないだろう。
このほか、山村学園高出身の桐蔭横浜大・坪井蒼汰(三塁手)や、愛工大名電高出身の立命館大・有馬伽久(投手)、社高出身で立命館大・芝本琳平(投手)がオープン戦で積極的に起用されている。
球春到来。野球ファンの方々には、ここに挙げたルーキーの活躍に、ぜひ注目して頂きたい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所