コラム 2023.04.27. 17:48

現役ドラフト組がチームの危機を救う?【開幕直後の異変を追う】

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巨人・オコエ瑠偉 (C) Kyodo News

最終回:新天地で輝く現役ドラフト「一期生」


 原巨人の調子が徐々に上向いてきた。

 一時は両リーグ最速の10敗目を喫して最下位まで転落。お先真っ暗のピンチだったが、ここへ来て打棒が活発化したことでチームの歯車が回り出した。

 中でもトップバッターとして、チームを引っ張るオコエ瑠偉選手の活躍が目覚ましい。26日の阪神戦でも2安打2得点文句なしの働き。今ではチームに欠かせない存在となっている。

 そのオコエにも負けない輝きを放っているのが中日の新3番・細川成也選手だ。こちらも目下、絶好調の打棒で規定打席不足ながら3割5分に迫る数字をマーク。得点力不足に悩む中日の希望の星と言っていい。

 オコエと細川。共に現役ドラフト出身である。

「より多くの埋もれた選手に活躍の場を」の趣旨で、昨年12月9日に現役ドラフトは初めて開催された。

 通常のドラフト(新人選択会議)は、プロ入りの門出を祝う華やかなムードに対して、現役ドラフトは完全非公開。各球団がどんな選手を出して、どのような形で進むのか? NPBも球団側も手探りの新たな試みだった。

 ウエーバー方式でパ・リーグ最下位の日本ハムが最初に希望選手を獲得、次に日ハムに選手を供出した球団が新たな選手を指名する形で会議は進行する。

 6球団目に巨人は楽天のオコエを指名。中日が細川を指名したのは8球団目の事だった。

 現役ドラフトの特徴は、一軍と二軍を行ったり、来たりしている選手が多いことだ。一定の力量は評価されながら、チーム事情で出場の機会が恵まれない。または伸び悩んでいる。言ってみれば“1.5流”の中堅クラスである。


環境が変われば、変身可能な人材だった


 ドラフト1位で楽天に入団したオコエは、毎年レギュラー定着を期待されながら、7年間結果を残せなかった。

 7年目の細川は、DeNA時代にアレックス・ラミレス監督(当時)から「一軍で40本塁打を打つポテンシャルがある」と期待された長距離砲。それでも佐野恵太、タイラー・オースティン、桑原将志選手ら実力者揃いの厚い外野陣の壁に阻まれてきた。いずれも環境が変われば、変身可能な人材だったことも確かだ。

 くすぶり続けたプロ人生も新天地に移れば、新たな活力が生まれる。加えてこの両選手に共通するのは、わずかな幸運を自らの手で掴み取ったことだ。

 巨人は、長く球団の顔でもあった坂本勇人、丸佳浩選手らに衰えや不調が重なったことで1、2番を打てる選手の台頭が必要だったこと。

 昨年最下位に沈んだ中日は打線のテコ入れが急務。そこでアリスティデス・アキーノ、ソイロ・アルモンテらの新外国人選手に活路を求めたが、期待通りの働きには程遠い。そこで業を煮やした立浪和義監督は、石川昂弥選手に加えて、細川を和製大砲としてクリーンアップに組み入れている。

 現役ドラフトで指名されたのは12人。他にもソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手が早くも2勝を上げ、巨人から広島に移った戸根千明投手も貴重な中継ぎ左腕としてフル回転している。

 推定年俸950万円のオコエと、990万円の細川がこのままシーズンを終えれば2倍、3倍の大金を手にするシンデレラ・ストーリーも夢ではない。これこそが現役ドラフトの効能であり、球界の活性化にもつながる。

「一期生」の活躍で、現役ドラフトの価値はさらに見直されるだろう。

 新陳代謝の激しいプロの世界。環境を変える事や、ちょっとしたきっかけを掴むことで第二のオコエや細川になれる人材はまだまだいる。

 球団の編成担当者にとっては、新たな手腕を問われる場が出来た。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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