結束を固めているブルペン陣の奮闘
守護神の湯浅京己が右前腕の張りを訴えて戦線離脱してからの2週間、タイガースの中継ぎでセーブを挙げた投手は一人もいない。代役が失敗を繰り返しているからではなく、その間の13試合で実はセーブシチュエーションが一度も訪れていないのだ。
大敗が続いているわけでもなく、チームとしては6勝7敗。守護神の不在に打線も奮起して、リードしている終盤は楽な展開に持ち込めている。
それに加えて光るのが、大きな穴を埋めるように、これまで以上に結束を固めているブルペン陣の奮闘だ。
今季は湯浅だけでなく、昨年52試合に登板し防御率1点台だった浜地真澄も4月中旬に不振で二軍に降格しているが、昨年はいなかったルーキーの富田蓮や、浜地と入れ替わりで昇格を果たした及川雅貴が好投。近年のタイガースの“伝統”でもある強固なブルペンを形成している。
湯浅も「しんどい時に自分が助けられるようにやりたい」
ブルペン最年長の岩貞祐太が明かすのは、若手と中堅の良い意味での“棲み分け”。
富田や及川ら、自身と10歳も離れた若手について「経験がないピッチャーが多いので、言い方が悪いかもわからないけど“俺たちには関係ないかな”みたいな。“先輩たちがやるんでしょ”みたいな。肝が据わっていますよね」と苦笑い。
それでも、先輩左腕は「責任感とかはザキ(岩崎)とか僕が感じればいいので。経験のあるケラー、加治屋もいるので。守護神と呼ばれる立場の人(湯浅)がいなくなったので、多少は浮つくかなと思ったけど、ブルペンは逆に団結している気がしますね」と手応えを口にした。
自身の立場を確立するために、チームを意識せず「個人」で戦っている若手と、個人より「チーム」を見渡している頼もしい中堅組。立場も、思いも相反する2つのグループが相乗効果を生んでいる。
岩貞は悔しい思いをしている湯浅の心中も察するように、言葉を送ることも忘れなかった。
「湯浅も後半、チームが厳しい時に頑張ってくれると思うので」
現在、鳴尾浜球場でリハビリに取り組んでいる右腕も「中途半端な状態で戻って迷惑をかける可能性もあるので。万全な状態に戻して。この期間はザキさん(岩崎)、サダさん(岩貞)……ブルペン全員が助けてくれてる状態なんで、逆にみんながしんどい時に自分が助けられるようにやりたい」と焦らず、“完全体”で戻ってくることを宣言している。
不在の守護神の穴は、個々の力の結集で埋めて見せる。世代も、心意気も違う2023年のブルペンは、まだ底を見せていない。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)