コラム 2023.05.14. 07:08

「最速152キロ」専修大の大型右腕・西舘昂汰がドラフト戦線に浮上

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専修大・西舘昂汰 [写真提供=プロアマ野球研究所]

東都二部の注目右腕


 5月半ばの現時点でも“大豊作”と評判の2023年ドラフト戦線。特に大学生の投手には有力候補が多く、中でも東洋大の細野晴希(東亜学園)、青山学院大の常広羽也斗(大分舞鶴)、中央大の西舘勇陽(花巻東)という東都大学野球に所属する3人の評価が高い。

 しかし、目立っているのはこの3人だけでなく、同リーグには一部・二部問わず実力者たちが集っている。今回は二部リーグの専修大でプレーする西舘昂汰を取り上げたい。


▼ 西舘昂汰(専修大)
・投手 
・188センチ/92キロ 
・右投右打 
・筑陽学園

<主な球種と球速帯>
ストレート:143~152キロ
カーブ:115~120キロ
スライダー:124~128キロ
カットボール:132~136キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.20秒


昨年秋に才能が開花


 筑陽学園時代は2年の秋から主戦投手として活躍していた西舘。3年時には春夏連続で甲子園に出場し、当時から注目の投手ではあった。

 しかし、ストレートの球速のアベレージが130キロ台中盤とスピードが不足していたこともあり、高校卒業時にはプロ志望届の提出を見送って、専修大に進学した。


 大学では、1年秋(1年春は新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグ戦中止)からリーグ戦でデビューするも、調子の波が大きく、主力になり切れないシーズンが続いた。そんな右腕の才能が大きく開花したのが、昨年秋のことである。

 主にカードの第2戦の先発を任せられると、国士舘大戦と東洋大戦での完封を含む3勝をマークして、チームの二部優勝に大きく貢献。惜しくも一部昇格は逃したものの、駒沢大との入れ替え戦では、3試合全てに登板するフル回転の活躍を見せた。


 菊地吏玖(2022年・ロッテドラフト1位)が抜けた今年は、エースとしてカードの第1戦の先発に回った。

 開幕から連敗スタートという苦しい投球となったものの、2試合とも延長タイブレークの末での敗戦であり、記事公開時点で46回2/3を投げて防御率1.35という見事な数字を残している。

 特に4月17日の東京農業大との試合では、延長11回に自己最速となる152キロをマークし、スカウト陣に対して強烈なアピールに成功した。


もう1人の“西舘”にぜひ注目を


 西舘の魅力は、抜群のスケールを感じさせる豪快な腕の振りだ。

 下級生の頃は長い手足を持て余している印象が強かったが、二段モーションでしっかりと軸足に体重を乗せてからステップすることができるようになり、体重移動のスピードや腕の振りの鋭さが格段にアップしたように見える。

 先輩の菊地と比べても、指にかかった時のボールの勢いは上回っている。特に高めはボール球でも打者が思わず手を出してしまうシーンが多く見られる。


 一方で課題を挙げるとするならば、そのアップした出力を制御しきれていない点にある。

 もともとは大型投手としては器用なタイプで、ストライクをとるのに苦労するということはあまりない。しかし、この春は、開幕戦となった拓殖大戦で8四球(1申告敬遠)を許しており、粘り切れないこともある。

 変化球はカーブやスライダー、カットボールを操る。スピードにはバリエーションがあるものの、どのボールも変化する軌道が全てよく似ており、打者が対応しやすいように見えた。もう少し変化を小さくしたり、抜くボールのレベルを上げたりできれば、ストレートがさらに生きるようになるだろう。


 この春の専修大は3勝6敗と黒星が先行しており、西舘は入学から4年秋までの全シーズンを二部でプレーする可能性が高くなった。しかし、スケールの大きさは豊作と言われる今年の大学生投手の中でも指折りのものを誇っている。

 残りのリーグ戦でしっかりと巻き返すことができれば、早いタイミングで名前が呼ばれる可能性もあるだろう。「中央大の西舘」だけではない、もう1人の“西舘”にぜひ注目してもらいたい。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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