チャレンジ成功率は驚異の91.7%
2010年以降、勝ち越したシーズンが1度しかない“弱小球団”のマイアミ・マーリンズが、先月26日のエンゼルス戦以降、12勝3敗と快進撃を続けている。
11日(日本時間12日)、シカゴ・ホワイトソックスとの3連戦最終戦に臨んだマーリンズは7回を終えて4点差をつけられる苦しい展開。しかし、8回表に2点、9回表に3点を挙げ、土壇場で逆転に成功すると、最後は守護神A.J.パックがホワイトソックス打線を三者凡退に抑えた。
この勝利で今季成績を37勝29敗とし、貯金の数を今季最多の8に伸ばしたマーリンズ。地区首位を走るアトランタ・ブレーブスがこの日敗れたため、ライバルチームとのゲーム差を3.5に縮めることにも成功した。
前評判を覆して勝利を重ねる今季のマーリンズを語る上で欠かせないのは、打率4割に挑戦中の二塁手ルイス・アラエスだろう。この日は5打数1安打で、打率を前日の.402から.397に下げたが、その存在はチームの象徴になっている。
そしてもう一人、マーリンズの躍進を支えているのが、43歳の若きスキップ・シューメーカー監督だ。メジャーで指揮を執るのは今年が初めてというルーキー監督だが、手腕の高さは数字にも表れている。
最たる例がメジャー1位を誇る代打成功率だろう。メジャーではナ・リーグにもDH制が採用されるようになり、代打を起用する機会は決して多くないが、今季のマーリンズの代打成績は36打数12安打(打率.333)。シューメーカー監督がここぞという場面で送り込んだ打者が高い確率で結果を出していることがわかる。
また、20年から人工芝を採用しているホームグラウンドで戦う上で、打者にゴロを打つ意識を植え付けることにも成功。今季のマーリンズは打者全体のGB%(ゴロ率)が46.4%で、これはメジャー2位の高さ。昨季の12位から大幅にランクアップを果たしている。長距離砲が少ないというチーム事情もあり、ホームアドバンテージをフルに生かす野球を実践しているともいえるだろう。
さらにもう一つ、際立っているのがシューメーカー監督のチャレンジ成功率の高さである。
今季66試合を終えて、審判にチャレンジを要求した回数は12回。この数字自体は決して多くないが、そのうち11回で判定が覆っている。成功率91.7%は、2位デーブ・マルティネス監督(ナショナルズ)の69.2%(9/14)を大きく離しており、冷静さが求められる場面で最善の判断を下すことができている証しといえるだろう。
今季のマーリンズを形成しているのは、代打成功率やチャレンジ成功率といった小さな積み重ね。その結果、チームは接戦にめっぽう強く、1点差試合で勝率.773(17勝5敗)という勝負強さを見せている。
シューメーカー監督は、カージナルス時代の2011年に世界一を経験するなど、常勝チームでその勝負勘を磨いてきた。無名のルーキー監督は、ブレーブスを筆頭とする同地区の強豪チーム相手にどこまで食らいついていけるのか。今後も目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)