2016年の“ドラ1”がエンゼルスで躍動
エンゼルス・大谷翔平の勢いが止まらない。
現地時間2日、エンゼル・スタジアムで行われたエンゼルス対ダイヤモンドバックスの3連戦最終戦は、地元エンゼルスが5対2で快勝。今季最長となっていた連敗を「4」で止め、3日から始まるパドレスとの3連戦に弾みをつけた。
「3番指名打者」で先発出場した大谷は、4対2で迎えた8回裏の第4打席に今季31号となるダメ押しのソロを放ち、チームに貢献。6月に15本塁打を記録したその打棒は7月に入っても全く衰える気配はなさそうだ。
この試合では大谷以外に一発を放ったエンゼルスの打者が2人いた。1人は初回に先制ソロを放った主砲のマイク・トラウト。そしてもう一人が2回に貴重な逆転スリーランをセンター方向へ叩き込んだミッキー・モニアクである。
モニアクといえば、2016年のドラフト会議でフィリーズから全体1位指名を受けた逸材。しかし、プロ入り後は、“ドラ1”のプレッシャーもあったのか、マイナーでは期待されたほどのインパクトある活躍ができなかった。それでも少しずつステップアップし、20年9月、22歳の時にメジャーで念願のデビューを果たした。
しかし、すぐにメジャーに定着することはできず、20年は8試合、21年は21試合、シーズン途中のトレードでエンゼルスに移籍した22年は2チーム合わせて37試合の出場に終わっていた。
そして迎えた今季は、3Aで開幕を迎えたが、33試合で打率.308、8本塁打と絶好調。5月中旬にようやく今季初のメジャー昇格を果たすと、最初の試合で4打数3安打1本塁打の大活躍を見せ、そのままメジャーに定着している。
対左投手成績は「打率.030」「15三振」
2日終了時点の成績は、33試合に出場し、打率.307、9本塁打、24打点と、ほぼ3Aの時と同じだが、特筆すべきは.658の長打率だろう。打席数は規定に遠く及ばないものの、この数字はチームトップの大谷がマークしている.670とほぼ変わらない。
つまり、少ない打席数にあってシーズン58本塁打ペースの大谷と遜色ないペースで長打を放っていることになる。
ただし、これだけ長打を放っているモニアクだが、いまだレギュラーには定着できていない。その理由は単純明快。左投手が相手の時は打席に立つことがほぼないからだ。
3ランを放った2日のダイヤモンドバックス戦でも、左腕カイル・ネルソンが救援した8回の第4打席ではあっさり代打を送られている。
野球界では左対左は投手有利というのが定説だが、左打ちのモニアクはとにかく極端で、メジャーでの対左投手成績は、なんと31打数1安打、打率.030、15三振。母数(打席数)は少ないものの、三振の多さから左投手を苦にしているのは一目瞭然だ。
ただし、マイナー時代には右投手よりも左投手から好成績を残していた年もあり、本来は左投手がまったくダメというわけではないはず。ドラフト全体1位指名を受けたほどの才能の持ち主なら、チャンスを与えられれば、いずれ克服しても不思議ではないだろう。
実は大谷もメジャー1年目の18年は左腕相手に苦しんでいた。8月までの対左投手成績は62打数11安打、打率.177、0本塁打。しかし、経験を重ねることで徐々に適応し、9月以降は37打数11安打、打率.297、2本塁打と、苦手を克服してみせた。
モニアクも5年前の大谷と同じように左腕を克服できれば、エンゼルスにとって大きな戦力となるはず。一日も早くレギュラーに定着するその日を待ちたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)