コラム 2023.07.07. 18:31

夏の高校野球大阪大会が8日開幕 “絶対王者”大阪桐蔭を阻むライバル校はどこか

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6季連続の甲子園出場を目指す大阪桐蔭 (C) Kyodo News

「打倒・大阪桐蔭」に挑むライバル


 第105回全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)の出場校を決める地方大会が6月17日に開幕した沖縄大会を皮切りにして始まった。

 全国屈指の激戦区で、全159校が参加する大阪大会は今月8日に開幕する。その大阪は、今年も「打倒・大阪桐蔭」がテーマの夏になりそうだ。

 大阪桐蔭は、夏2連覇中で6季連続の甲子園出場がかかっている。ただし、誰もが認める絶対王者でも、危なげなく甲子園切符を手にできるほど甘くないのが夏の地方大会だ。

 特に今夏は、大阪桐蔭を止められるだけの戦力をそろえるライバル校が少なくない。実際に、春の大阪大会決勝で大阪桐蔭が金光大阪に敗れ、20年秋から続いていた府大会の連勝が56で止まった。

そこで今回は大阪桐蔭の夏3連覇阻止を期すライバル校の戦力を分析し、し烈極める大阪大会の行方を展望する。



『履正社』――投打ともに選手層の厚さは全国屈指


 まず、本命・大阪桐蔭の対抗に挙がるのが今春選抜に出場した履正社だ。

 今年の履正社は、屈辱を知るチームである。

 今春選抜では、初戦だった高知との2回戦に2-3で敗退した。さらに、選抜直後の春の大阪大会では大商大高との4回戦に3-4で敗れるなど、チームづくりは思うように進まなかった。

 ただし、春の低迷を成長に変えられたと主将の森沢拓海(3年)が証言する。

「自信があっただけに、選抜の初戦敗退を引きずりました。だけど、夏に向けて切り替えられた。新チームになってから今が一番いい雰囲気だと思います」

 選抜では優勝候補の一角に挙げられていたほど、投打ともに選手層の厚さは全国屈指だ。

 打線は、息の抜く間がないほどに強力だ。特に上位打線には、好選手がズラリと並ぶ。

 1番には、大阪桐蔭のエース・前田悠伍(3年)に公式戦3試合連続2安打をマークする左の強打者・西稜太(3年)が座る。3番の森田大翔(3年)は、昨秋の府大会で8戦4発をマークした右の長距離砲で、4番の坂根葉矢斗(3年)も高校通算15本塁打を超える打てる捕手だ。

 さらに俊足の選手も数多くそろう。打順に関係なく積極的な走塁を仕掛けられるところも今年のチームの特徴だ。

 投手は、今春選抜の高知戦で7回まで無安打投球を演じたプロ注目のエース左腕・福田幸之介(3年)が軸となる。2番手左腕の増田壮(3年)も1年秋から背番号1を背負っていた好投手で経験豊富だ。

 今年のチームは、投打ともにタレント集団と言っていい。個の力がかみ合えば、春の低迷から脱した勢いそのままに躍進する可能性を秘めている。


『金光大阪』――エース・キャリーを擁し再び大金星なるか


 今夏の大阪大会をかき回す存在となり得るのが金光大阪だ。

 春の大阪大会では、決勝戦で大阪桐蔭を2-1で破って初優勝を飾り、近畿大会でも準優勝と躍進した。

 この春の快進撃をけん引したのが、最速138キロのエース左腕であるキャリー・パトリック・波也斗(3年)だ。

 米国人の父と日本人の母をもつハーフで、タフさが特徴だ。

 大阪桐蔭戦で130球1失点完投で大金星に貢献すると、その一戦から近畿大会準決勝まで3試合連続完投勝利を飾った。近畿大会準決勝の京都国際戦では142球、5失点(自責2)の力投でサヨナラ勝利を呼んだ。

 直球は130キロ台後半ながら、持ち前の球威で勝負する。加えて、我慢強さも兼ね備えている。大阪桐蔭戦では被安打9本を集められながら最少失点に抑えて、味方を鼓舞し続けた。

 打っては3番に座るなど打線の中核も担っている。「去年までは自分のことで精いっぱいだったけど、いまは後輩に自分の姿がどう映るかを考えて、見本になれるように意識しています」とエースがチーム一丸をけん引する。大阪桐蔭との再戦までにキャリーの体力を温存できれば、再び大阪桐蔭を撃破できる可能性も高まるだろう。


『近大付』――強力「2枚看板」でダークホースとなれるか


 最後に今夏の躍進が期待される1校を挙げたい。春の大阪大会で3位となり、30年ぶりに春の近畿大会に出場した近大付だ。
投手力を中心とした守備力が光る。

 エースは、最速143キロ右腕の市村篤史(3年)だ。春の大阪大会では大商大堺との3位決定戦で今春2度目の完封勝利を挙げ、近畿大会でも初戦の京都国際戦で6回2失点と力投した。制球を乱すタイプではなく、安定感のある投球でチームに流れを呼ぶことができる。

 さらに春に背番号10を背負った最速143キロ右腕の有方祥互(3年)も好投手だ。

 春の大阪大会では準決勝の大阪桐蔭戦に先発して3失点完投。白星にはつながらなかったものの、強力打線に球威ある直球が通用することを証明した。

 この「2枚看板」が本領を発揮できれば、2018年夏以来5年ぶりの甲子園出場も十分に狙える。


 迎え撃つ大阪桐蔭は、エース・前田の出来が命運を握っている。

 選抜後は、強化練習に取り組むために春季大会のベンチ入りメンバーから外れた。その間に、チームは大阪大会の優勝を逃し、近畿大会も初戦で敗退した。

 周囲の不安視する声をよそに、主将の前田は言葉に力を込める。

「夏に勝てばいいだけの話。ベンチに入っている選手もスタンドで応援してくれる選手も含めた全員野球でやっていきたいです」

 大阪の各校は、大阪桐蔭に強烈な対抗心を燃やしながら練習に励んできた。大阪桐蔭にとってみれば、相手の真っ向勝負を跳ね返し続けなければいけない過酷な戦いが続く。

「打倒・大阪桐蔭」に全力を注いできた高校球児の思いが、今年の大阪を熱くさせる。


文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)
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