「大学卒2年目」に注目
7月14日に開幕する『第94回都市対抗野球大会』。社会人野球最大の大会であり、プロのスカウト陣が注目するドラフト候補も数多く出場する。
秋に向けて存在をアピールする選手がどれだけ出てくるか。今回は特に注目を集めそうな投手をピックアップして紹介したい。
まず一番の注目は、今年指名が解禁となる大学卒2年目の選手たち。なかでも松本健吾(トヨタ自動車)と竹田祐(三菱重工West)の2人は注目度が高い。
松本は昨年の大会では1試合の登板に留まったものの、TDK戦で4回パーフェクトの好リリーフを披露。その後の日本選手権では初戦でパナソニックを相手に1安打完封と圧巻の投球を見せて、一気に注目株へと躍り出た。
今年は春先に肩の不調で出遅れ、都市対抗予選でも本調子には程遠い内容だったが、高い制球力とスライダー、カットボールの変化球を駆使した投球で試合は作って見せた。6月27日に行われた巨人三軍とのプロ・アマ交流戦でも5回を投げて1失点にまとめている。
好調時は150キロを超えるストレートが今年は145キロ前後にとどまっているだけに、どこまで球威が戻っているかによって評価が変わることになりそうだ。
一方の竹田は、1年目の昨年からエース格として活躍。今年の都市対抗予選では少し安定感を欠くも、『JABA四国大会』『JABA京都大会』『JABA北海道大会』の主要公式戦3大会で6試合に登板して4勝0敗、防御率0.84という見事な成績を残している。
ストレートは140キロ台中盤が多く、驚くような球威はないが、内角の厳しいコースにも狙って速いボールを投げることができ、ストライクゾーンを広く使って勝負できるのが持ち味だ。
また、高校(履正社)・大学(明治大)・社会人と常に大舞台で結果を残してきた経験も光る。松本と同様に球威もあるところを見せることができれば、スカウト陣の評価は高くなるだろう。
日本通運の投手陣は要注目
同じ大学卒2年目では、古田島成龍や川船龍星、平元銀次郎、清水力斗(いずれも日本通運)も有力候補である。
中でも今年、先発の柱として結果を残しているのが古田島だ。
大学時代から試合を作る能力の高さには定評があったが、社会人でボールの力が明らかにアップした印象を受ける。5月に行われた『JABA東北大会』では2試合に先発して17回を無失点、18奪三振、四死球0と圧巻の投球でチームを優勝に導き、自身もMVPに輝いた。
川船と平元は、日本通運が誇る強力投手陣の一角として安定した投球を続けており、注目度が高い。
最も実績がないのは清水で、4人の中でも唯一都市対抗予選での登板がなかったが、ストレートはコンスタントに150キロを超え、短いイニングでのスピードに関してはナンバーワンだ。
他にも力のある投手が多いだけに都市対抗の本選で登板する可能性は低そうだが、マウンドに上がる機会があればそのストレートにぜひ注目してもらいたい。
「準硬式」出身のドラフト候補も
意外な経歴の持ち主という意味でも、注目度が高いのが高島泰都(王子)だ。
滝川西では控え投手として3年夏に甲子園に出場しているが、明治大では準硬式野球部でプレー。そこで順調に力をつけ、社会人野球で再び硬式野球に戻っている。
1年目の昨年から王子の主戦投手になると、今年はエースとして本大会出場にも大きく貢献した。コンスタントに145キロを超えるスピードと、多彩な変化球をしっかり操る制球力は間違いなく社会人でも上位のレベルにある。地元の日本ハムはもちろん、他の球団にとっても魅力的な投手である。
その他では、リリーフで150キロを超えるスピードを連発して注目を集めている稲葉虎大(シティライト岡山/JFE西日本の補強選手として出場)、サイドからのクセ球が魅力の粂直輝(東芝)、高校卒3年目と若く素材の良さが光る内田了介(Honda熊本)らも楽しみな投手である。
昨年の吉村貢司郎(東芝→ヤクルト1位)のような分かりやすい目玉候補は不在だが、逆に今大会での投球によって評価が変わる可能性は高い。強烈なアピールを見せる投手が出てくることを期待したい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所