ア・リーグの打率部門で堂々3位にランク
レッドソックス・吉田正尚の打棒が止まらない。
今季の前半戦を締めくくる9日のアスレチックス戦。吉田は6回裏の第3打席にショートへの内野安打でこの日初安打をマークすると、続く8回の第4打席は今季10号となる決勝ソロを左翼へ叩き込み、今季打率を.316とした。これで先月末からの連続マルチ安打を7試合に伸ばし、最高の形でメジャー1年目の前半戦を終えることになった。
ア・リーグの打率部門で堂々3位にランクインしている吉田だが、10日ほど前までは打撃不振にあえいでいた。
現地時間6月24日から29日まで4試合連続で無安打に終わり、29日終了時点の打率は.294と3割を切っていた。しかし、同月30日のブルージェイズ戦で、3本の安打を放ち打率を3割に戻すと、7月は出場した6試合全てできれいに2安打ずつ記録している。
実は日本人選手が7試合連続マルチ安打を記録するのは、2010年5月のイチロー以来、13年ぶり2人目の快挙。福留孝介や青木宣親といった名だたるヒットメーカーでさえ成し得なかった難記録を1年目の前半戦に達成したのはさすが吉田と言わざるを得ないだろう。
7試合連続マルチ安打を5度記録したイチロー
しかし、吉田の快挙達成で改めて浮き彫りになったのが、13年前に同記録を達成したイチローのスゴさだ。
メジャー通算3089安打を放ったレジェンドは、現役時代に7試合連続マルチ安打をなんと5度も達成していた。1度目はルーキーイヤーの01年5月で、その後も03年、07年、09年、そして10年と、いずれも全盛期のマリナーズ所属時に記録。ところが、いずれも8試合目は無安打に終わり、その記録を8試合に伸ばすことはできなかった。
参考までに、ややハードルを下げて、5試合連続マルチ安打の経験を有する日本人選手を調べると、イチローと吉田以外に、青木宣親、福留孝介、松井稼頭央、松井秀喜、岩村明憲の5人が達成していた。しかし、いずれの選手も5試合に達したのは1度だけで、6試合目でそろって失敗。一方のイチローは単独で21度もの5試合(以上)連続マルチ安打を記録していた。
19年3月、日本中のファンが見守った東京ドームでの引退試合から早4年が経過。今季の吉田のように日本人打者が活躍することで、イチローの偉大な記録も掘り起こされている。
果たして吉田はオールスター明け初戦にイチローが届かなかった8試合連続マルチ安打を達成できるのか。後半戦は前半戦以上の活躍に期待が高まる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)