コラム 2023.07.13. 06:29

次こそ「マダックス」…中日の“勇者”・小笠原慎之介が挑む勝負の夏場

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中日・小笠原慎之介 (C) Kyodo News

球団7年ぶりの快投まであと一歩


 ベンチを見て笑っていた。少し照れて、かといって恥ずかしいわけではない。

 7月7日の七夕の夜。中日・小笠原慎之介は広島打線を牛耳った。

 100球未満での完封「マダックス」が見ていた9回。一死を奪い、次打者・羽月へのこの日98球目。ファウルにされた。


 「落合ヘッド(兼投手コーチ)を見ました。顔を隠していました(笑)。マダックスいけるかな、いきたいな、と思いながら、ベンチで話をしていたんです」

 結果は102球の完封勝利。球団では2016年の小熊凌祐以来、7年ぶりの快投とはなかなかった。


マウンドに上がる際に流れた曲の意味


 中5日での次回登板が決まっていたマウンドだった。

 スイスイ投げて60球。7回を終えて74球。射程範囲内だった。8回で92球。点差は8点。十分なリードがあった。

 左腕はベンチ内で落合ヘッドと会話したという。

 出した走者の数や、打たれたヒットの数、シミュレーションしながら「半分は冗談で半分は本当だと思いますけど、結局はボクが“マダックス”をやりたかったんです」。

 羽月のファウルでベンチを見たのは、そんなやりとりがあったから。


 日本ハムからトレード加入し、初めてコンビを組む宇佐見真吾とのコンビで3併殺を奪い、三塁を踏ませなかった。

 完封はプロ3年目だった2018年7月28日の巨人戦(東京ドーム)以来、実に5年ぶりだった。


 こだわりは9回、マウンドへ上がる時の曲にあった。

 シンガーソングライター・あいみょんの名曲「マリーゴールド」。球団スタッフに「9回、マウンドに上がるときは、マリーゴールドでお願いします」と頼んでいた。

 「流れたとき、曲をかけてくれて嬉しかったです。そして、花言葉は、良いのと悪いの両方あるんですよね」。“悲嘆”、“絶望”、一方で“勇者”ともある。

 「綯い交ぜになっているところも、お気に入りなんです」。完封へつなげた。


“中5日”が続く勝負の夏場


 マダックスは1990年代から2000年代にメジャーで355勝を挙げたグレッグ・マダックスに由来している。

 少ない球数で投げきることから、100球未満の完封として一般名詞化して球界に定着した。ちなみに本家は13度、達成している。


 7月は13日のヤクルト戦(神宮)、初選出されたオールスターで、本拠地・バンテリンドームナゴヤで登板するのは19日、そして25日の本拠地・DeNA戦と中5日の3連発となる。

 夢はメジャー移籍。「中5日が続いて、“はいダメだった”では話になりません。コンディションを整えて、登板間隔に関係なく、いいピッチングをできるように頑張ります」。

 昨季までの2年間で中5日は6度あり、5勝1敗。勝ち負けがつくまでマウンドに立ち続け、白黒はっきりさせてきた。


 竜のエース左腕・大野雄大は左肘手術で9月の復帰が濃厚。開幕投手を務めた小笠原の役割は大きい。

 「勇者」として7月は中5日をこなし、8月も力強く投げて、エースのカムバックを待つ。


文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)
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