球宴直前の対ソフトバンク3連戦に3連勝。眼下の敵を叩いて中嶋オリックスの勢いが加速した。
2位のロッテと3.5ゲーム差、ソフトバンクとは5.5ゲームと差は開き、独走の気配すら漂う。
「スーパースターよ、出て来い」と3連戦前に声を上げたのはソフトバンクの王貞治球団会長。だが、いざふたを開けるとスーパースターはオリックスに現れた。育成出身、異色の新外国人レアンドロ・セデーニョ選手だ。
1-1の同点で延長戦に突入した第2戦では決着をつける4号本塁打。さらに第3戦でも2戦連続のV弾だから、まさにスーパースターの働きである。逆に連夜の接戦を落としたソフトバンクは泥沼の9連敗。パリーグでは過去に9連敗を喫したチームの優勝はなし、と言う不吉なデータも加わった。
セデーニョが支配下登録されたのは5月のこと。元々は今季から加入したマーウィン・ゴンザレス、フランク・シュウィンデル両選手に次ぐ位置づけで当初は二軍暮らしが続いた。
5、6月は9試合出場で11打数2安打と鳴かず飛ばずだったが、7月に入ると突然変異のように打ちまくる。球宴前の月間成績は打率.375に5本塁打、18打点と非の打ち所がない。
優勝するチームには、いくつかの必勝条件が存在する。
大型連敗はしないこと。日替わりヒーローの出現。そして爆発的な新戦力の誕生などだ。
パ・リーグのここまでの戦いを見て来ると、目下、日本ハムが10連敗なら、ソフトバンクも9連敗中。6連勝で球宴ブレークに入った西武も直前には8連敗と苦しんでいる。これに対してオリックスの最大連敗は4で、これもその直後に5連勝して不安を解消してしまった。
投手陣の顔ぶれを見れば、山本由伸、宮城大弥、山﨑福也と安定感抜群の先発陣に今季から3年目の山下舜平太が加わり、早くも8勝をマーク。4人だけで30勝10敗(20日現在、以下同じ)だから、今後もよほどのことがない限り大型連敗は考えにくい。
開幕前には、唯一の死角と見られてきた吉田正尚選手のメジャー移籍による打線の穴には西武からFA移籍の森友哉選手が4番に座る。さらに昨年までは準レギュラー格だった頓宮裕真選手が大ブレークして、前半戦は首位打者の働き。さらに森が7月1日の日本ハム戦で左太腿の肉離れを起こして長期離脱を余儀なくされると4番にはセデーニョがおさまる。投打のバランスの良さではセ・パの優勝争いをするチームの中でも図抜けている。
20年まではリーグ最下位の弱小軍団は中嶋聡監督が正式就任した21年から別人のように生まれ変わっていった。
この年には前年8勝の山本が18勝をあげて球界のエースにのし上がる。宮城が新人王、杉本裕太郎選手が本塁打王の大ブレーク。大型ショートの紅林弘太郎が誕生したのもこの年だ。
翌22年には山﨑颯一郎、宇田川優希ら剛腕中継ぎ陣が成長して、侍ジャパン入りも果たす。そして今季が山下、頓宮、セデーニョらの爆発。
自らが二軍監督時代に育て上げた人材を一軍に登用して、チーム内に新陳代謝と、より厳しい競争社会を作り上げた中嶋監督の手腕が光る。しかし、球界関係者は一様にスカウティングとフロントのバックアップも王国づくりの要因に挙げる。ここでも“チーム一丸”が勝利への道標となるわけだ。
どのチームにも故障者や誤算は起きる。それをはね返す力をどれだけ持つか? セ・リーグの首位を行く阪神には近本光司選手の離脱や打線の迫力不足で春先ほどの強さはない。パ・リーグでは2位で奮戦するロッテが絶対的切り札の佐々木朗希投手を有しているのは強みだが、それ以外は吉井理人監督のやりくり上手でどれだけ肉薄できるか?
勝負事は最後の最後まで何が起こるか、わからない。それでも現時点で死角の見つけにくいチームとなれば、オリックスに行き着く。ライバル球団にもセデーニョ並みのスーパーヒーローの出現を期待したいものだ。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
2位のロッテと3.5ゲーム差、ソフトバンクとは5.5ゲームと差は開き、独走の気配すら漂う。
「スーパースターよ、出て来い」と3連戦前に声を上げたのはソフトバンクの王貞治球団会長。だが、いざふたを開けるとスーパースターはオリックスに現れた。育成出身、異色の新外国人レアンドロ・セデーニョ選手だ。
1-1の同点で延長戦に突入した第2戦では決着をつける4号本塁打。さらに第3戦でも2戦連続のV弾だから、まさにスーパースターの働きである。逆に連夜の接戦を落としたソフトバンクは泥沼の9連敗。パリーグでは過去に9連敗を喫したチームの優勝はなし、と言う不吉なデータも加わった。
セデーニョが支配下登録されたのは5月のこと。元々は今季から加入したマーウィン・ゴンザレス、フランク・シュウィンデル両選手に次ぐ位置づけで当初は二軍暮らしが続いた。
5、6月は9試合出場で11打数2安打と鳴かず飛ばずだったが、7月に入ると突然変異のように打ちまくる。球宴前の月間成績は打率.375に5本塁打、18打点と非の打ち所がない。
投打のバランスの良さは図抜けている
優勝するチームには、いくつかの必勝条件が存在する。
大型連敗はしないこと。日替わりヒーローの出現。そして爆発的な新戦力の誕生などだ。
パ・リーグのここまでの戦いを見て来ると、目下、日本ハムが10連敗なら、ソフトバンクも9連敗中。6連勝で球宴ブレークに入った西武も直前には8連敗と苦しんでいる。これに対してオリックスの最大連敗は4で、これもその直後に5連勝して不安を解消してしまった。
投手陣の顔ぶれを見れば、山本由伸、宮城大弥、山﨑福也と安定感抜群の先発陣に今季から3年目の山下舜平太が加わり、早くも8勝をマーク。4人だけで30勝10敗(20日現在、以下同じ)だから、今後もよほどのことがない限り大型連敗は考えにくい。
開幕前には、唯一の死角と見られてきた吉田正尚選手のメジャー移籍による打線の穴には西武からFA移籍の森友哉選手が4番に座る。さらに昨年までは準レギュラー格だった頓宮裕真選手が大ブレークして、前半戦は首位打者の働き。さらに森が7月1日の日本ハム戦で左太腿の肉離れを起こして長期離脱を余儀なくされると4番にはセデーニョがおさまる。投打のバランスの良さではセ・パの優勝争いをするチームの中でも図抜けている。
弱小軍団から常勝軍団へ
20年まではリーグ最下位の弱小軍団は中嶋聡監督が正式就任した21年から別人のように生まれ変わっていった。
この年には前年8勝の山本が18勝をあげて球界のエースにのし上がる。宮城が新人王、杉本裕太郎選手が本塁打王の大ブレーク。大型ショートの紅林弘太郎が誕生したのもこの年だ。
翌22年には山﨑颯一郎、宇田川優希ら剛腕中継ぎ陣が成長して、侍ジャパン入りも果たす。そして今季が山下、頓宮、セデーニョらの爆発。
自らが二軍監督時代に育て上げた人材を一軍に登用して、チーム内に新陳代謝と、より厳しい競争社会を作り上げた中嶋監督の手腕が光る。しかし、球界関係者は一様にスカウティングとフロントのバックアップも王国づくりの要因に挙げる。ここでも“チーム一丸”が勝利への道標となるわけだ。
どのチームにも故障者や誤算は起きる。それをはね返す力をどれだけ持つか? セ・リーグの首位を行く阪神には近本光司選手の離脱や打線の迫力不足で春先ほどの強さはない。パ・リーグでは2位で奮戦するロッテが絶対的切り札の佐々木朗希投手を有しているのは強みだが、それ以外は吉井理人監督のやりくり上手でどれだけ肉薄できるか?
勝負事は最後の最後まで何が起こるか、わからない。それでも現時点で死角の見つけにくいチームとなれば、オリックスに行き着く。ライバル球団にもセデーニョ並みのスーパーヒーローの出現を期待したいものだ。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)