手薄と見られた高校生遊撃手の希望の星
いよいよ本日、6日に開幕を迎える『第105回全国高等学校野球選手権記念大会』。台風の進路も気になるところではあるが、予定では休養日を含む17日間の熱い戦いが聖地・甲子園で繰り広げられる。
今年の高校生野手は佐々木麟太郎(花巻東/一塁手)や真鍋慧(広陵/一塁手)といった強打者タイプが豊富と言われているが、その一方でプロからの需要の高い遊撃手は手薄だというのが春先までの評判だった。
しかし、この春から夏にかけて、一気に評価を上げてきた高校生遊撃手がいる。それが、8年ぶり3回目の夏の甲子園出場を決めた上田西の横山聖哉だ。
▼ 横山聖哉(上田西)
・遊撃手
・181センチ/82キロ
・右投左打
<2023年夏の長野大会成績>
6試 率.333(21-7) 本2 点8
打席24 二塁打4 三塁打0 四球2 盗塁0
出塁率.375 長打率.810 OPS1.185
<各塁へのベスト到達タイム>
一塁到達:4.24秒
スカウトも「上田西のショートは見ておいた方が良いですよ」
旧チームからショートのレギュラーに定着した横山。2年春に出場した北信越大会では本塁打も放っているが、当時は上背も体格も大きくなく、そこまで注目されるような選手ではなかった。
しかし、この1年で身長も体重も大幅にアップ。それに比例するように、打撃と守備が見違えるようにレベルアップしたという。
その評判を聞いたのは4月になってから。担当スカウトから「上田西のショート見ました?あれは見ておいた方が良いですよ」と言われたのがきっかけで、6月3日に行われた北信越大会の対遊学館戦に足を運んだ。
横山はこの試合に「3番・遊撃」で先発出場。まず目立っていたのが、試合前のシートノックでの動きだ。
他の選手と比べてひと回り大きい体格を誇りながら、それでいてフットワークも素晴らしいものがあり、高校生の中に1人だけ大学生か社会人が混ざっているようにも見えた。
特に素晴らしかったのがスローイングである。三遊間の深い位置からでも一直線で低い軌道でファーストに届き、高校野球では見ることがないレベルのボールだったのだ。
投手としても140キロ台後半のスピードを誇ると聞いていたが、このスローイングを見て納得がいった。試合ではショートゴロは1つしかなく、緩い打球だったため軽めの送球だったものの、「4-6-3」の併殺打の時のボールはまさに“矢のような”と表現するのにピッタリのボールで、あっという間にファーストミットに吸い込まれていた。このスローイングは、高校生では間違いなくNo.1。プロでも上位に入るレベルだろう。
夏の活躍次第で上位指名も?
横山の持ち味は、もちろん守備だけではない。上述の遊学館戦ではレフト前への安打とレフトへの犠飛が1本と少し引っ張り切れない打球が目立った一方で、しっかりボールを呼び込むことができており、スイングの形も安定している。
夏の大舞台を前にもう一度、横山の実力を確認したいと考えた筆者は、7月9日に行われた夏の長野大会初戦(2回戦)の伊那弥生ケ丘戦を取材した。
そこで横山は、最終打席に打った瞬間に分かる本塁打をライトスタンドに叩き込み、長打力もあることを証明したのだ。
続く岩村田戦でも本塁打を放ち、最終的には長野大会6試合で長打6本を記録。長打率は8割を超えている。
また、遊学館戦の二ゴロでは少し流しながらも一塁到達タイムは4.24秒という数字をマークしており、脚力も備えている。
夏の甲子園では、冒頭で触れた佐々木や真鍋と並び、注目のドラフト候補の一人になることは間違いない。これだけスケールがあり、さらに強肩という武器があるショートは貴重だ。
甲子園のプレー次第では上位指名が見えてくるだけに、まずは初戦がポイントになる。大きな注目を集める開幕戦、6日の第1試合・土浦日大(茨城)とのゲームでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。楽しみに見守りたい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所