揺るぎない信念
一時期の好調さは影を潜め、苦しい戦いを続けているベイスターズ。4日からの首位・阪神を迎えての3連戦の初戦、痛い星を落としたナインはファンに一礼した。その際ひとりのファンが、係員が静止するほどの勢いで言葉を投げかけた。
そこで声を上げたのが関根大気だった。本人もSNSで「チームは家族。家族に対してトゲのある言葉が多く降り注がれた時に僕は申し訳ないですが、この行動となりました」と投稿し、様々な意見が交わされることとなった。
関根には信念がある。決してその場で感情的になって口走った訳では無い。
翌日本人は「ひとりの人が佐野さんに対してめちゃめちゃ言っていたんですよ。スタッフさんも止めてたけどその人はずっと言っていたので」と回想。「そこについてはわからないとは思うので、仕方ないとは思いますけど」と前置きしつつ「僕からしたら、チームのために日々頑張ってくれているキャプテンに対して、あの場面でずっと言われたままにしておくよりも、個人的にはパッと言って終わったほうがいいと思いました」と説明。
また「例えば僕が言われて、誰かが言ってくれたら、それは僕はありがたいなと思いますし。他の選手かそう思うかどうかはわからないですが、僕がその中でその時にそうしたかったからそうしただけ」とシンプルに行動した結果とした。
プロ生活も10年を数え、これまでもファンからの厳しい声も耳にしてきた。それに関しては「自分の責任だし反省することもいっぱいありますし、その通りだなと思います」と受け止めている。さらに「チームとして勝ててないし、いろんな言葉が出てくるのもわかるし、応援してくれていると深く理解しています」とファン心理も把握している。
そのうえで「チームは家族」を身上とする男には「家族対してトゲのあるような、辛辣な言葉を言ってくる人がいたら、何も言わないでいいのか。打てなくて言われるのはこの世界なので当たり前だと思っていますし、打てなかった日に打てよと言われるのは仕方ないですけど、身近な存在に対して汚い言葉を投げかけるのは違うでしょうと」と違和感を感じた。
「負けてしまったあとは“どう気持ちよく明日を迎えてやっていくか”しか僕にはないので、言われたことをそのままにしていくことが、僕にはいいこととは思えなかった」と自分の中の正義を貫いた。
バットも上向き
グラウンドの上に目を向けると、直近6試合でもコンスタントにヒットを記録。バッティング面では「後半戦に入ってからずっといいですね。もっとヒット出ていたらもっといいですけれども、内容の良い打席を送れています。いまはテクニカルと心がとてもいい状態でやれています」と一時期からの低迷から脱却している手応えを感じている。
上向いたキッカケの一つが「6月7月もそうですけれども、色んなことを失敗してきて、こうしたら確率が下がるというのもを外から見ていても出ていたので。自分の中でこうしたいがやっとできるようになったのが今ですね」とし「考え方を含めていい方向、自分のやりたいことが後半戦のスタートからずっとやれています」と充実感を漂わせた。
具体的には「トップ、いわゆる打ちに行くときの形が遅れていた」と分析。「僕は5月の10日辺りから肩にバットを置き始めたんですが、置くことで再現性が高くすることができると思っていました。ただ置いたことでトップを作ることにおいて誤差が出てしまいました。自分の中では一定になると思っていたのですが、トップが作れずに、バットが遅れて出てきていた感覚ですね。トップを決めることが上手くできていなかったことに気づくまでに時間がかかったんですけど、それがいまはできるようになった」とテクニカル面での修正が功を奏していると明かした。
オフのメキシコ武者修行でもトライ・アンド・エラーを繰り返し自分の糧にしてきた関根大気。前半戦後半の「結果が出なかった期間にテクニカルのことをよく知ることができた。こうしたら出来ないなということをたくさん知れたので、良い期間だったと思います」と笑顔。
チームのために起こした行動にも「今回のことは正解だとは思っていないですけれども、その時は行動することで、なにかの助けになると思いました。この行動が完全に正しいとは思ってませんし、チームメイトに対して、もっと違う支え方、言葉の伝え方があると思いますしね。それにもトライしていきたいです」とすべての事柄にポジティブさを失わない関根大気。
高い野球IQと漢気は、何にも代えがたいチームの大きな財産だ。
取材・文=萩原孝弘