甲子園を高校球児に明け渡して、始まった阪神の「死のロード」。
かつては、猛虎が勢いを失うケースもしばしば見られたが、それも遠い昔の話のようだ。
8月1日の中日戦から始まったビジターの戦いは9日現在(以下同じ)7勝1敗。この中にはライバルであるDeNA、巨人との直接対決があり、優勝戦線に大きく影響する正念場と見られていたが、いずれも粉砕している。
7月末の時点で5.5ゲーム差だったDeNAとは9ゲーム差、同じく6ゲーム差だった巨人とは10差にまで広がっている。今月中旬にはマジック点灯もあり得る情勢では、4.5差の広島も含めて、ミラクルを期待するしかない。
勝者と敗者を分析すると、それなりの理由がある。阪神が普段通りの野球を展開したのに対して、DeNAや巨人には大切な一番で、やってはいけない“ポカ”が目についた。
象徴的なシーンは6日のDeNA対阪神戦。地元のハマスタでは対阪神13連勝を誇ってきたベイスターズだが、この3連戦には連敗して後がない3戦目のことだ。1点を追う7回一死二・三塁の逆転機に三浦大輔監督は佐野恵太選手に代わって、同じ左の楠本泰史選手を代打に送った。結果は遊飛、その後のチャンスも生かせず3タテを喫している。
野球は結果論。楠本の打撃内容より、衝撃を呼んだのは交代を命じられた佐野の流した涙だった。
今月8日付のスポーツニッポンでは元DeNA監督でもある中畑清氏が三浦用兵に疑義を呈している。
要約すれば、佐野はメジャーに挑戦した筒香嘉智に代わって4番、レフトにキャプテンまで引き継いだ打線の柱で、首位打者の実績もある。よほどのことがない限り代えてはいけないチームの顔。確かに今季は不振が続き、チャンスに弱いと言う判断だったかも知れないが、佐野は必要不可欠な戦力、首脳陣はそれなりの配慮、気遣いが欲しかったというものだ。
しかも、この場面で阪神は右投げの浜地真澄投手から左腕の島本浩也投手に交代を告げる前にDeNAベンチは楠本への交代を告げている。右打者の起用も考えられる場面だったが、三浦監督にそんな余裕はなかったのだろう。
試合後、阪神の岡田彰布監督は問題の場面を振り返って「そりゃラッキーやと思ったよ。佐野を代えるんやから」とほくそ笑み「島本様様」と火消し役を称えた。
一方、必死の采配を振るった敗将は翌日、問題の場面を振り返って「いろいろ考えるところがある。いずれにしても自分の責任」と語るしかなかった。
直接対決に3連敗も痛いが、それ以上にチーム内外に波紋を呼んだ佐野の涙。これが反撃態勢に水を差すことにならないことを願うばかりだ。
巨人では新助っ人、ルイス・ブリンソンの“世紀のボーンヘッド”が阪神にさらなる勢いをもたらした。
原辰徳監督が「申し訳ない。私自身の指導力不足で恥ずかしいプレー」と頭を抱えたのは9日の阪神戦5回のこと。中越えに本塁打性の当たりを放ったブリンソンは、フェンスを直撃にもかかわらず“確信歩き”で全力疾走を怠ったばかりか一塁止まり。このボーンヘッドでその後の先制機を逃している。
延長12回に及ぶ激闘も大きなミスが出て、勝負所で救援陣の弱さを露呈した巨人が連敗。ライバルは遥か遠くの存在となってしまった。
首位攻防の直接対決は挑戦する側が勝てば肉迫出来るチャンスだが、逆に負ければその差は絶望的となる。
当たり前のことを全員野球でこなしていく猛虎と、当たり前のことが出来ないライバルたち。岡田監督の笑いが聞こえて来る。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
かつては、猛虎が勢いを失うケースもしばしば見られたが、それも遠い昔の話のようだ。
8月1日の中日戦から始まったビジターの戦いは9日現在(以下同じ)7勝1敗。この中にはライバルであるDeNA、巨人との直接対決があり、優勝戦線に大きく影響する正念場と見られていたが、いずれも粉砕している。
7月末の時点で5.5ゲーム差だったDeNAとは9ゲーム差、同じく6ゲーム差だった巨人とは10差にまで広がっている。今月中旬にはマジック点灯もあり得る情勢では、4.5差の広島も含めて、ミラクルを期待するしかない。
勝者と敗者を分析すると、それなりの理由がある。阪神が普段通りの野球を展開したのに対して、DeNAや巨人には大切な一番で、やってはいけない“ポカ”が目についた。
直接対決で起きた問題采配と怠慢プレー
象徴的なシーンは6日のDeNA対阪神戦。地元のハマスタでは対阪神13連勝を誇ってきたベイスターズだが、この3連戦には連敗して後がない3戦目のことだ。1点を追う7回一死二・三塁の逆転機に三浦大輔監督は佐野恵太選手に代わって、同じ左の楠本泰史選手を代打に送った。結果は遊飛、その後のチャンスも生かせず3タテを喫している。
野球は結果論。楠本の打撃内容より、衝撃を呼んだのは交代を命じられた佐野の流した涙だった。
今月8日付のスポーツニッポンでは元DeNA監督でもある中畑清氏が三浦用兵に疑義を呈している。
要約すれば、佐野はメジャーに挑戦した筒香嘉智に代わって4番、レフトにキャプテンまで引き継いだ打線の柱で、首位打者の実績もある。よほどのことがない限り代えてはいけないチームの顔。確かに今季は不振が続き、チャンスに弱いと言う判断だったかも知れないが、佐野は必要不可欠な戦力、首脳陣はそれなりの配慮、気遣いが欲しかったというものだ。
しかも、この場面で阪神は右投げの浜地真澄投手から左腕の島本浩也投手に交代を告げる前にDeNAベンチは楠本への交代を告げている。右打者の起用も考えられる場面だったが、三浦監督にそんな余裕はなかったのだろう。
試合後、阪神の岡田彰布監督は問題の場面を振り返って「そりゃラッキーやと思ったよ。佐野を代えるんやから」とほくそ笑み「島本様様」と火消し役を称えた。
一方、必死の采配を振るった敗将は翌日、問題の場面を振り返って「いろいろ考えるところがある。いずれにしても自分の責任」と語るしかなかった。
直接対決に3連敗も痛いが、それ以上にチーム内外に波紋を呼んだ佐野の涙。これが反撃態勢に水を差すことにならないことを願うばかりだ。
巨人では新助っ人、ルイス・ブリンソンの“世紀のボーンヘッド”が阪神にさらなる勢いをもたらした。
原辰徳監督が「申し訳ない。私自身の指導力不足で恥ずかしいプレー」と頭を抱えたのは9日の阪神戦5回のこと。中越えに本塁打性の当たりを放ったブリンソンは、フェンスを直撃にもかかわらず“確信歩き”で全力疾走を怠ったばかりか一塁止まり。このボーンヘッドでその後の先制機を逃している。
延長12回に及ぶ激闘も大きなミスが出て、勝負所で救援陣の弱さを露呈した巨人が連敗。ライバルは遥か遠くの存在となってしまった。
首位攻防の直接対決は挑戦する側が勝てば肉迫出来るチャンスだが、逆に負ければその差は絶望的となる。
当たり前のことを全員野球でこなしていく猛虎と、当たり前のことが出来ないライバルたち。岡田監督の笑いが聞こえて来る。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)