メッツ・千賀滉大

◆ 白球つれづれ2023・第34回

 日本では高校野球がクライマックスを迎えようとしている20日(日本時間、以下同じ)メジャーリーグでは新たな快記録が生まれた。

 メッツの千賀滉大投手が対カージナルス戦に先発すると、7回を2安打1失点の好投で10勝目。日本人投手が、米挑戦1年目から2ケタ勝利を挙げるのは16年に前田健太(当時ドシャース)が記録して以来8人目だ。その顔触れを見ると松坂大輔、ダルビッシュ有や田中将大、前田など甲子園を沸かせたスター揃いに対して、千賀はソフトバンクの育成出身。“雑草派”は、海を渡っても頼もしかった。

 名将として知られるメ軍のバック・ショーウォルター監督が試合後に千賀への信頼を語っている。

「彼はこれからも我々にとって確固たる存在だ」

 今季はナリーグ東地区にあって下位を低迷。日頃から手厳しい批判を浴びせるニューヨークっ子も千賀の話題になると表情も緩む。代名詞の“お化けフォーク”で三振を奪うと、スタンドには「お化けマーク」が次々と飾られていくのが日常茶飯事となった。

 最速158キロのストレートと伝家の宝刀・フォークホールを武器に、これまでの奪三振は154個。奪三振率は10.69と投手・大谷翔平に匹敵する。それでも千賀は日々、メジャー対策怠らない。

「何回も対戦すればフォークを振らないようになる。幅広く今後も対策を練っていく」とデータ野球全盛のメジャーの傾向を研究しながら、配球の比率を変えたり、スライダーやカットボールを駆使して“包囲網”を潜り抜けている。

◆ 育成時代から貫く貪欲な“学ぶ姿勢”

 日本時代から夢に見たメジャー生活。時差や過酷な遠征など苦しむことも多いが、それ以上にエンジョイしている。中でも担当記者が高く評価しているのは物怖じしないコミュニケーション能力だと言う。

 メッツにはこの夏まで、マックス・シャーザー(現レンジャース)、ジャスティン・バーランダー(現アストロズ)と言うメジャーを代表する大物投手が在籍していた。普通なら、なかなか話しかけられない「雲の上の大スター」にも千賀は臆することなく、懐に飛び込んでいった。自分にプラスになるものはなんでも吸収したいと言う育成時代からの姿勢は今も変わらない。

 つたない英語を駆使しながらメジャーのオールスターに選出されると、もう一人の大投手であるクレイトン・カーショー(ドジャース)とも“フォーク談義”に興じている。楽しみながら学ぶ。そんな姿勢が千賀の活躍を支えている。

 今では、日本の各球団にメジャー志望の選手がいる。中でも、同じ投手にとって千賀の働きは一つの目安となる。それも育成出身者なら、これまでは一軍入りが大きな目標だったが、今後はメジャーも視野に入れることも不可能ではない。

 メッツの話題に戻れば、シャーザーやバーランダーの放出はこのオフに予想される大谷のFA争奪戦とリンクしていると見る向きもある。2人の巨額年俸分を「大谷資金」に回そうと言う推測だ。

 さらに、今オフにポスティングでメジャー挑戦が有力視されるオリックス・山本由伸投手の獲得に最も熱心なのがメッツである。もし、仮に大谷、山本に千賀が同一球団でプレーするようなことがあれば、これほど痛快な出来事もない。夢の“メジャージャック”となるからだ。

 千賀の次回登板は26日のエンゼルス戦が予定されている。大谷とは初対戦となる。今やメジャーを代表するスーパースターの大谷と、1年目でメッツのエース格にのし上がってきた千賀の対決は米国内でも大きな注目を集める。

 甲子園を沸かせる金の卵たちの将来は楽しみだ。しかし、高校時代は無名でもメジャーで1年目から目覚ましい働きを見せる「成り上がり者」もいる。

 千賀の天下取りは、まだ始まったばかりだ。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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