主戦左腕の信頼がっちり
4連敗中と苦しみ、もがいていたベイスターズがトンネルを抜けた24日。眩いに包まれたヒーローの東克樹は「祐大にもここ踏ん張りどころっていうところで、喝を入れられたのでがんばれました。毎回毎回、祐大のおかげでこういった良いピッチングができているので、ほんとに祐大に感謝したいと思います」と恋女房・山本祐大への感謝を何回も口にした。
高校卒業後、BCリーグを経てドラフト9位指名でDeNAに入団した山本は、ルーキーイヤーに初打席初本塁打をぶっ放すド派手デビューでファンを沸かせたが、その後は捕手として地道に研鑽を積んでいった。
昨年は開幕一軍切符を掴み、フェルナンド・ロメロや濵口遥大とともに勝ち星を重ね、上茶谷大河と組んで“マダックス”達成の偉業をアシストするなど好調な滑り出しを見せた。ところが、深刻な打撃不振からファームに落ち、最終的には17試合出場に留まる忸怩たるシーズンとなってしまった。
迎えた2023年は一転、充実したシーズンを送っている。
ここまで東とすべての試合でバッテリーを組み、ハーラートップの11勝を積み上げることに貢献。東からも「堂々としていますし、登板を重ねるたびに意思疎通というか、言葉がなくても投げたい球種、投げたいコース、首を振ったとしても結果がしっかりと付いてきているので、本当にいいキャッチャーだなと思います」と絶賛されている。
そこには専属捕手としての矜持がある。
「いいときも悪いときも知っているから、次に向けてやりやすいです。アイコンタクトではないですけど顔を見たらわかることがある」とメリットを強調。
その努力が結果となり「インタビューでも祐大のお陰って言ってくれることが、僕はそれがむちゃくちゃやりがいとなって嬉しかったんで。裏でもずっと“祐大のお陰“とみんなにも言ってくれるんです。キャッチャーとしては最高の言葉」と充実感を漂わせながら屈託のない笑顔を見せる。
また、後半に入り急に復調している濵口とも最初からコンビを組み続け「ハマさんとは前半戦悔しい思いをしたので、なんとかやり返そうという気持ちを持ってやれているのが今の現状」と、ともに捲土重来を誓ったと明かす。
しかし、前半から取り組みを「特に何か変えたわけではないです」と言い切り、「元々良かったのに不運も続いていましたので、負けが続くとどうしてもそういう(調子が悪い)との見方になってしまう」と負の連鎖に陥ってしまっただけと分析。
その上で「良いボールあるんだから思い切ってやればいいんじゃないですかって話をしたら、ハマさんもそう感じていたと。思っていたことが一致していたからスムーズにできました」と続け、ここでもしっかりとしたコミュニケーションを持ちながら自信を取り戻すことで、本来の濵口の実力を引き出してみせた。
指揮官も高評価
三浦大輔監督も「ここ数年ずっと見ていますけど、キャッチャーとして大きく成長していると思います」と太鼓判。
さらに「よく打者が見えているし、周りも見えてきてますよね。余裕ではないですけれどもよく見えてバッターの反応を見ながらいい判断をしているなと。両サイドきっちり使いながら、真っ直ぐ使えるところは使って早めに追い込んでいる」と成長著しい24歳を具体的に評価する。
その点については本人も「(伊藤)光さんもトバさん(戸柱恭孝)も視野が凄く周りが見えていて気配りも出来ますし、それに比べたらまだまだですけれども」と前置きしながらも、今季すでに自己最多の出場が確定していることもあり、「経験を積んでいる2人だからこそ視野が広いのかなとと思うと、少しづつ、ちょっとづつですけど、視野も広がってきているのかなと思います」と言葉は控えめながらも、目にはしっかりと力が宿っていた。
牧秀悟や入江大生らと同じ1998世代の山本祐大。新世代の力でベイスターズを、そして横浜を熱くしていく。
取材・文=萩原孝弘