独走状態だった阪神の優勝マジックが消えた。
8月16日の広島戦に快勝して待望のマジック29が点灯。その後も6連勝を記録するなど、Vロードは順風に思えた。
8月1日からの長期ロードは18勝5敗。ところが本拠地の甲子園に戻ったとたんにつまずく。
DeNAとの2連戦は、いずれも終盤までもつれるクロスゲームとなったが、2戦ともベイスターズの主砲・牧秀悟選手に手痛い一発を浴びて連敗。27日の巨人戦から連敗は3に伸びた。
この間にマジック対象チームである広島は怒涛の4連勝(1分けを挟む。30日現在、以下同じ)先週24日から30日までの1週間に限れば、広島が4勝1敗1分けに対して、阪神は2勝3敗。虎の3連敗中にライバルは2勝1分けだから一気にその差は縮まり今や5ゲーム差。残り試合数を考えれば、阪神の絶対優位は依然として変わらないが、広島の追い上げ次第では、風雲急を告げてもおかしくない。
優勝マジックとはトップを行くチームが、マジック対象チームに残り試合で全敗しても、手の届かない位置にいることを示す数字だ。しかし、土俵際に追い詰められた赤ヘル軍団の頑張りで、残りの直接対決7試合に全勝すれば、現時点のゲーム差は逆転可能となる。29日の巨人戦に広島が逆転勝ちして、阪神がDeNA戦に敗れた時点で、カープの自力Vが復活、逆に阪神のマジックは消滅したのだ。
ついたり、消えたりするのもマジックの常。新たな1週間で両雄が勝ったり、負けたりを繰り返していれば、再び阪神にマジックが再点灯、消滅時のマジック21が数字を減らして現れる。
逆に広島にとっては、他球団に大きく勝ち越したうえで、阪神との残り試合に希望を託したい。特に注目されるのは9月8~10日の直接対決3連戦だ。
敵地・甲子園での戦いとは言え、仮にそこまで現状の5ゲーム差で迎えれば3連戦3連勝で2ゲーム差に肉薄することも可能になる。ここで2勝1敗としてゲーム差を縮めておけば、同月15、16日には地元マツダスタジアムで直接対決第2ラウンド、そして月末から10月1日に予定される最終決戦まで決着はもつれ込むことになる。
ここへ来て、思わぬ“孝行息子”の出現もカープに新たな勢いをもたらしている。2年目・末包(すえかね)昇大選手の爆発だ。
27日のヤクルト戦で先発起用されると、いきなり5号満塁弾を皮切りに30日の巨人戦まで3戦連発、8打点で4連勝のけん引役を担っている。
“和製大砲”と期待されて入団した昨季は2本塁打止まりで、シーズンの大半をファームで過ごした。188センチ、112キロの巨体で「大型扇風機」と言われた粗削りな打撃は、新井貴浩監督のルーキー時代を思わせる。指揮官はその後の猛練習で一流打者となっていったが、末包はどこまで近づけるか?
「試合に出るたびに成長して、実戦での対応力も上がって成長している」と新井監督も右の大砲役の誕生に手応えを感じている。
活躍する選手がいれば、そのヘルメットを叩き、投げ終えた投手には自ら足を運び、一人一人の労をねぎらう。新井流のスキンシップがチームに活力を生んでいる。
首位と2位の5ゲーム差と言うのは、判断の難しい微妙な数字である。
阪神が、普通に戦えばそう簡単にその差は縮まらないが、予期せぬ大ブレーキや広島の快進撃が続けば、もつれる数字でもある。
ここは“岡田マジック”と“新井マジック”のどちらが威力を発揮するか?
「勝負の9月」。酷暑は御免だが、野球界の熱さなら歓迎したい。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
8月16日の広島戦に快勝して待望のマジック29が点灯。その後も6連勝を記録するなど、Vロードは順風に思えた。
8月1日からの長期ロードは18勝5敗。ところが本拠地の甲子園に戻ったとたんにつまずく。
DeNAとの2連戦は、いずれも終盤までもつれるクロスゲームとなったが、2戦ともベイスターズの主砲・牧秀悟選手に手痛い一発を浴びて連敗。27日の巨人戦から連敗は3に伸びた。
この間にマジック対象チームである広島は怒涛の4連勝(1分けを挟む。30日現在、以下同じ)先週24日から30日までの1週間に限れば、広島が4勝1敗1分けに対して、阪神は2勝3敗。虎の3連敗中にライバルは2勝1分けだから一気にその差は縮まり今や5ゲーム差。残り試合数を考えれば、阪神の絶対優位は依然として変わらないが、広島の追い上げ次第では、風雲急を告げてもおかしくない。
優勝マジックとはトップを行くチームが、マジック対象チームに残り試合で全敗しても、手の届かない位置にいることを示す数字だ。しかし、土俵際に追い詰められた赤ヘル軍団の頑張りで、残りの直接対決7試合に全勝すれば、現時点のゲーム差は逆転可能となる。29日の巨人戦に広島が逆転勝ちして、阪神がDeNA戦に敗れた時点で、カープの自力Vが復活、逆に阪神のマジックは消滅したのだ。
ついたり、消えたりするのもマジックの常。新たな1週間で両雄が勝ったり、負けたりを繰り返していれば、再び阪神にマジックが再点灯、消滅時のマジック21が数字を減らして現れる。
最終決戦まで決着はもつれ込む可能性も
逆に広島にとっては、他球団に大きく勝ち越したうえで、阪神との残り試合に希望を託したい。特に注目されるのは9月8~10日の直接対決3連戦だ。
敵地・甲子園での戦いとは言え、仮にそこまで現状の5ゲーム差で迎えれば3連戦3連勝で2ゲーム差に肉薄することも可能になる。ここで2勝1敗としてゲーム差を縮めておけば、同月15、16日には地元マツダスタジアムで直接対決第2ラウンド、そして月末から10月1日に予定される最終決戦まで決着はもつれ込むことになる。
ここへ来て、思わぬ“孝行息子”の出現もカープに新たな勢いをもたらしている。2年目・末包(すえかね)昇大選手の爆発だ。
27日のヤクルト戦で先発起用されると、いきなり5号満塁弾を皮切りに30日の巨人戦まで3戦連発、8打点で4連勝のけん引役を担っている。
“和製大砲”と期待されて入団した昨季は2本塁打止まりで、シーズンの大半をファームで過ごした。188センチ、112キロの巨体で「大型扇風機」と言われた粗削りな打撃は、新井貴浩監督のルーキー時代を思わせる。指揮官はその後の猛練習で一流打者となっていったが、末包はどこまで近づけるか?
「試合に出るたびに成長して、実戦での対応力も上がって成長している」と新井監督も右の大砲役の誕生に手応えを感じている。
活躍する選手がいれば、そのヘルメットを叩き、投げ終えた投手には自ら足を運び、一人一人の労をねぎらう。新井流のスキンシップがチームに活力を生んでいる。
首位と2位の5ゲーム差と言うのは、判断の難しい微妙な数字である。
阪神が、普通に戦えばそう簡単にその差は縮まらないが、予期せぬ大ブレーキや広島の快進撃が続けば、もつれる数字でもある。
ここは“岡田マジック”と“新井マジック”のどちらが威力を発揮するか?
「勝負の9月」。酷暑は御免だが、野球界の熱さなら歓迎したい。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)