最後の勝利から10戦9敗の悪夢
現地時間7日、アトランタのトゥルイスト・パークでは、メジャー最高勝率を誇る地元ブレーブスとナ・リーグでワースト2位の勝率に低迷するカージナルスによる3連戦最終戦が行われた。
この一戦で注目を浴びたのが、カージナルスの先発マウンドに登ったアダム・ウェインライトだ。
先月30日に42歳を迎えたベテランは、昨オフに1年の再契約を結んだ際、2023年シーズン限りでの引退を表明。「195勝右腕」がいつ、どこで通算200勝を達成するのかが大きな注目を集めていた。
ところが、米国代表として臨んだ今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)中に鼠径部を負傷。開幕を負傷者リスト(IL)で迎えた。
それでも5月上旬にはメジャーに復帰し、5月に2勝、6月中旬に3勝目を挙げ、通算200勝へマジック「2」までこぎつける。この時点ではオールスター休み前にも大台到達かと思われたが、ウェインライトは突如、出口の見えないトンネルに入ってしまう。
今季3勝目を挙げた次の登板で打ち込まれて敗戦投手になると、7月上旬には右肩に張りを訴え今季2度目のIL入り。約3週間後にメジャーのマウンドに戻ってきたが、球威は衰え、序盤KOが定型化と揶揄されるほどの事態に陥っていた。
それでも、円熟の投球で8月には粘投を見せる試合もあったが、気づけば6月中旬から約2カ月半にわたって白星を飾れないまま。最後の勝利から7日のブレーブス戦前まで10試合に投げ、0勝9敗という泥沼にハマることとなった。
“古巣”に打たれて11敗目
こうして迎えたのが7日のブレーブス戦。ジョージア州出身のウェインライトにとっては“地元”であり、グリンアカデミー高校を卒業したばかりの右腕を2000年のドラフト1巡目(全体29位)で指名したのが他でもないブレーブスとあって、実は“古巣”でもある相手との一戦だった。
とはいえ、マイナーで着実に実績を積み上げている過程の中で、4年目の03年オフに青天霹靂のトレードでカージナルスに移籍。その後は05年のメジャーデビューからカージナルス一筋でプレーを続けてきただけに、“古巣”という印象を持っているファンは多くないだろう。
そんな縁もある相手との試合で2カ月半ぶりの勝利を掴みたかったウェインライトだが、初回にいきなり3失点を喫する苦しい立ち上がりに。すぐさま味方打線が同点に追いつく援護を見せたが、5回に勝ち越し本塁打を許すと、続く6回にも2本の被弾で、無念の降板となった。
結局、味方打線の最終回の反撃も実らず、これでウェインライトはまさかの10連敗。200勝へのマジックは「2」のまま、今回も数字を減らすことができなかった。
2年前に17勝、昨季も11勝を挙げていた右腕に残された登板機会はおそらく4回。今季19試合に投げて3勝しかしていない投手にとって、残り4試合で2勝を挙げるのは簡単なことではないだろう。
果たして、ウェインライトは200勝の大台に届くのか。それともニアミスで現役生活にピリオドを打つのか。
“ウェイノー”の最後のひと踏ん張りに、多くのファンは期待している。
文=八木遊(やぎ・ゆう)