第47回:25歳捕手、成長の裏に……
捕手としての大事な要素を持ち合わせている。高卒7年目の捕手・ヤクルトの古賀優大だ。
一軍の同じポジションには正捕手の中村悠平、さらに今季から捕手と外野手の二刀流に挑戦している21歳の内山壮真がいる。
WBCで世界一にも輝いた経験豊富な捕手と、若手有望株がライバルとしている中、数少ない出場機会でも、古賀の存在感は増しているように感じる。
その裏には、投手陣とのコミュニケーションを大切にする背番号「57」の姿がある。古賀は言う。
「なるべくピッチャーの人とは何気ない会話や、ピッチャーが投げ終わったそのあととかに会話するようにはしています」
さらに「自分の思っていることをぶつけて、向こうも思っていることをぶつけてくれるので、そこは両方思っていることを言い合えている」とし、対話の重要性を肌で感じ取っている。
ドラ1右腕とのコンビで存在感
9月13日の広島戦(神宮)では、上半身のコンディション不良から復帰して2戦目の吉村貢司郎を好リード。4カ月ぶりの勝利に導いた。
吉村が今季挙げた3勝はすべて古賀がリードしているだけに、相性の良さが光る。1学年上のルーキー・吉村との仲について聞いてみた。
「自分も言いたいこと言えますし、吉村さんも自分に言いたいこと言えると思うので、そこはベンチでいろいろ意見交換しながらできているのかなと思います」
吉村も同じく「(古賀と)いろいろ話し合えている。ベンチに戻ってからも話して、意見交換しながらやるようにはしています」と話す。
また、投手の立場から見た捕手・古賀については「ちゃんと自分の信念を持っているので、そこらへんはブレないですし、しっかりとしたキャッチャーだなと思います」と信頼を寄せている。
グラウンドを離れても良い関係性を築いている。古賀は笑顔でこう話した。
「(吉村とは)グラウンド離れたらふざけているだけなので、ちょっかいしか出してこない(笑)。そこもいい方につながっているのかなと思いますね」
嶋コーチも認めた「準備」を怠らない姿勢
捕手として成長を続ける古賀について、コーチの目にはどのように映っているのか。嶋基宏バッテリーコーチ兼作戦補佐に聞いてみた。
嶋コーチは「本当に勉強熱心ですしね」とその姿勢を評価したあと、こう続けた。
「相手のことをよく見て、試合に出ていないときもベンチでいろいろなことを考え、想定している。中村(悠平)というレギュラーがいるのでなかなか出番は少ないんですけど、しっかりそういう準備ができているので、試合に出たときにはいい結果が出せると思う。その準備とか研究熱心なところが、今の彼の姿だと思います」
さらに「若いですからね。みんなにいじられながら、いろんな野球の話をしながらというのはよくしています」と話し、チームメイトから愛される人柄も相まって、会話の幅も広がっているようだ。
嶋コーチの現役時代、楽天イーグルスで恩師だった野村克也監督も「準備」の大切さを説いていた。ベンチでも常に試合に向けた準備を怠らない。だからこそ、いざ試合に出場したときの集中力も研ぎ澄まされるのだろう。
その象徴といえるのが、「ピックオフプレー」だ。古賀はこう話す。
「あのプレーでアウトを取れれば、流れもこっちに傾いてくれると思う。いつも狙っている訳じゃないんですけど、(一塁手の)オスナとのアイコンタクトや、そういったところで、狙える場面であれば狙うようにはしています」
また、打撃面においても、打席での粘りやボールに食らいつく姿勢など、打力の向上が見て取れる。
古賀はその理由を「去年まで不甲斐ない成績だったので、何とか必死に食らいつこうという思いで打席に立っているので、そこがいい方向にいっているのかなと思います」と話す。
嶋コーチも「何とかしたいという彼の思いとか、キャッチャーをやって、どういうことをされるのが一番嫌かというのを理解して、それを打席の中で表現できている。それがああいう結果につながっていると思います」と、捕手としての目線が打撃にも生かされていると評価している。
チームはリーグ3連覇の夢が絶たれてしまった。しかし、選手それぞれの経験が来季、必ずやV奪回へとつながっていくはずだ。捕手・古賀の姿はそんな期待を抱かせる。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)