右のエースが華麗に復活
2位・広島の背中を狙いながら、同時に4位・巨人の追い上げにも注視する展開が続いていたDeNAの9月戦線。23日に最下位・中日相手に星を落とし、翌日は満を持してエース・今永昇太を立てて挑んだ巨人戦に敗北と、嫌なムードが漂う中でマウンドに向かったのが、9月中旬に再昇格してから上昇気配を感じさせていた大貫晋一だった。
前日6得点と温まっていた巨人打線に対し、強さを取り戻したストレートを軸に立ちはだかると、2回にもらった虎の子の1点を7回途中でマウンドを譲るまで守り切り、11奪三振の快投でチームを連敗ストップに導いた。
さらに25日には、負ければ2位の可能性が完全消滅する重要なゲームに中5日で先発。今度はプロ入り初完封を94球の“マダックス”で飾り、クライマックスシリーズの地元開催に望みをつなぐ、大きな1勝をゲットした。
本人も「うまく寝られなかったので、プレッシャーは感じていたと思います」と吐露した、重要なゲームでの完封劇。「(プロの)キャリアで一度は達成したかったので、それがまさか今日になるとは思わなかった。初めて完封できて良かったですし、負けられない試合で勝てたことに価値があるのかなと思います」とし、重圧に打ち勝った白星に相好を崩した。
好投の要因には、「ゾーンの中に集めながらも、しっかりといいところを狙いながら動かしたり、真っすぐで差し込んだりすることができたので、その辺が良かったと思います」と自己評価。前回の11奪三振から一転、この日は相手の早打ちもあって15個の内野ゴロを記録したが、試合へのアプローチについては「変えていません。同じように行って、結果が違っただけですね」と振り返る。
続けて、「狙って取る三振はすごく効果的だと思いますし、ゴロも狙って取れたらいい。しっかりと意図したところに飛ばすことができればいいなと思います」と語り、さらなる高みを目指すと宣言した。
復活のキーは「強い真っすぐ」
三浦大輔監督も「前回同様ストレートが強かったですし、しっかりと両サイドにライン出しができていた」と高評価していたが、本人も調整時に「しっかりと真っすぐを投げることに重きを置いた」と指揮官の評価と同じようなアプローチをしていたことを明かす。
不調時の反省点として、「球種が多いので、変化球で交わして交わしてというピッチングが多かったと思う。まずは真っすぐを軸にしないと、変化球も振ってくれないなというのは良くなかった時期に思った」と述べ、「しっかりと強い真っすぐを投げることが今はできている。そこが変わったのかなと思います」と立ち直りのキッカケに言及。
続けて「真っすぐをしっかり通せていることが、ピッチングの組み立ての中ですごく活きているなと思いますし、変化球も真ん中のラインに残らなくなったところが、今までと比べて良くなったと思います。狙ったところに行く“再現性の高さ”は以前より高まっていると自覚しています」と確かな手応えを掴んでいるようだ。
16勝2敗とMVP級の働きを見せている東克樹を筆頭に、エースの今永昇太に続く存在として急浮上してきた“右のエース”。
「なかなかチームの力になれなかったのは事実だと思う。ここから先、レギュラーシーズンではない戦いが待っていると思うので、そこで挽回できるようにしっかり準備したいと思います」
前半戦の苦戦を受け止めた上で、復活までの道のりで掴んだ収穫を糧に、この後の大一番に向けて目を輝かせた背番号16。大貫晋一は生まれ育った横浜の地で、躍動する姿を思い描く。
取材・文・写真=萩原孝弘