新人王だけでなくサイ・ヤング賞の投票でも上位進出に期待
メジャーリーグのレギュラーシーズンが現地時間1日(日本時間2日)に終了した。
日本人選手では、エンゼルスの大谷翔平がア・リーグの本塁打王を獲得。打率も3割に乗せており、投手としての10勝も加味すれば満票でのMVP受賞はほぼ確実と言えそうだ。
一方、シーズン終盤の活躍でナ・リーグのサイ・ヤング賞と新人王の候補として名前が挙がっているのがメッツの千賀滉大だ。30歳のルーキー右腕は開幕からローテーションの座を守り、12勝7敗で防御率2.98、奪三振202の好成績を残した。
残念ながらサイ・ヤング賞争いにはパドレスのブレーク・スネル、新人王争いにはダイヤモンドバックスコービン・キャロルという大本命がいるため、千賀は“無冠”に終わる可能性も高い。それでも、両部門で上位に顔を出すのは間違いないだろう。約20億円という年俸にふさわしい、いや、それ以上の活躍を見せてくれたと言っても過言ではない。
改めて千賀の1年目の成績を振り返ってみると、28年前に“トルネード旋風”を巻き起こしたあの日本人投手の成績と酷似していることが分かる。1995年にドジャースでプレーし、新人王を獲得した野茂英雄氏である。
・野茂英雄(1995年/27歳)
28試(191.1回) 13勝6敗 防御率2.54 奪三振236
・千賀滉大(2023年/30歳)
29試(166.1回) 12勝7敗 防御率2.98 奪三振202
※年齢は閉幕時
投手WARはわずか「0.1」差
95年といえば、前年から続いたストライキの影響で開幕が1カ月近くずれ込み、各チーム144試合制で行われた。
当時は今ほど球数制限も厳密ではなく、先発投手が120球以上を投げることも珍しくなかった。そのため、野茂の登板試合数は千賀より1試合少ないにもかかわらず、投球回数は千賀のそれを25イニングも上回っている。
ともにフォークボールが生命線の2人。奪三振率は野茂の11.1に対して、千賀は10.9とほぼ同じ。ただし、与四球率は野茂の3.7に対して、千賀は4.2と、千賀の方がより制球に苦しんでいたことが分かる。
総合的な貢献度を示すWAR(Wins Above Replacement)を比べると、野茂の4.1に対して千賀は4.6で、レジェンドを上回っていた。ただし、野茂の4.1には打者としての‐0.6が反映されており、投手としてのWARは4.7だった。つまり、純粋な投手としての貢献度は野茂が0.1上回っていたことになる。
当時と現在では投手の起用法や試合の在り方も変わっており、単純に比較することは適切ではないかもしれない。ただ、2人がメジャー1年目に残した成績があらゆる面で酷似しているというのは事実だ。
野茂は2年目に勝ち星を16に伸ばし、12年間で123勝を挙げた。千賀には来季以降もレジェンドに負けず劣らずの活躍を期待したいところだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)