白球つれづれ2023・第41回
侍ジャパンの次期監督に井端弘和氏が決定した。
栗山英樹前監督では今春に行われたWBCで米国を撃破してみ見事に世界一。注目された後任選びは難航した。当初、候補としては工藤公康前ソフトバンク監督や古田敦也元ヤクルト監督らの名前も挙がったが実現には至らなかった。
候補者の個人的事情もあったとされるが、最大の因はハードルの高さ。従来なら次回のWBC(26年開催予定)まで3年以上を拘束される。加えて、栗山ジャパンは大谷翔平やダルビッシュ有、吉田正尚らのメジャーリーガーとの融合で王座を奪還したが、最上の結果を残した後では、後任者の心的負担も大きい。わかりやすく言えば、苦労の割にリスクの大きい仕事と言える。そこでNPB側も契約方式を見直し、任期を来年11月に開催予定の「プレミア12」までとして、その先に見据える次回WBCの人選は未定とした。
そんな“難産”の末の船出なのに、新たな不幸が襲った。
4日の就任会見には多くの報道陣も集まったが、同日に巨人では原辰徳監督の退陣と阿部慎之助新監督の就任が決定。当日のテレビやネット、翌日の新聞報道もこちらがメインになる。ただでさえ、地味な井端ジャパンの扱いは小さくなってしまった。NPBもこれから、組織を挙げて盛り上げていくしかない。
井端氏と言えば、現役時代は守備の名手にして、いぶし銀の打撃で日本代表でも活躍している。中日時代に荒木雅博氏(今季まで中日コーチ)と二遊間を組み鉄壁の守りで“アライバ・コンビ”と呼ばれた。
歴代のジャパン監督と言えば長嶋茂雄、王貞治、星野仙一、山本浩二、原辰徳といったビッグネームが目につくが、井端監督の場合は侍ジャパンのコーチやU-12やU-15といった次世代日本代表の育成に携わってきた実務派の指揮官と言えるだろう。
初陣は次の世代を見据えた「ネクスト・ジャパン」
初陣は来月16日から行われる「アジアチャンピオンシップ」になる。同大会は台湾、韓国、オーストラリアとの間でアジアナンバーワンを決定するもの。参加メンバーは24歳以下もしくは入団3年目の選手が中心となる。
今大会の場合は、さらに3月に行われたWBC組は疲労も考慮されて除外の予定。この段階で参加条件を満たす佐々木朗希(ロッテ)戸郷翔征(巨人)らの投手や村上宗隆(ヤクルト)、牧秀悟(DeNA)らの有力野手も外れる。もちろん山本由伸(オリックス)、東克樹(DeNA)といったタイトルホルダーもいない。となれば、次の世代を見据えた「ネクスト・ジャパン」のお披露目となるわけだ。
そこで、代表メンバーの発表前に独自の顔ぶれを予想してみた。
すでに井端監督を中心にリストアップされていると見られているのが阪神の佐藤輝明、日本ハムの万波中正に、巨人の秋広優人選手たち。さらにセの最優秀防御率タイトルを獲得した村上頌樹投手も当確だろう。
いくつかの除外条件や故障などを考慮しながらポジション別に先行してみるとこうなる。
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《捕手》内山壮真(ヤクルト)
《一塁》秋広優人(巨人)
《二塁》門脇誠(巨人)
《三塁》清宮幸太郎(日本ハム)
《遊撃》紅林弘太郎(オリックス)
《外野》佐藤輝明(阪神)
万波中正(日本ハム)
岡林勇希(中日)
《先発》村上頌樹、伊藤将司(阪神)平良海馬、隅田知一郎(西武)山﨑伊織(巨人)東晃平(オリックス)
《救援》渡辺翔太(楽天)船迫大雅(巨人)桐敷拓馬(阪神)玉村昇悟(広島)
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今季の一軍である程度の成績を残した有望株から選出したが、最も難しいは捕手とクローザー部門だ。共に各球団とも実績のあるベテランを起用しているケースが多く、今後捕手では広島の坂倉将吾選手らのオーバーエイジ枠の活用も検討されている。
さらにDH、脚のスペシャリスト、守備要員らも特別枠で選出されるだろう。
「パワー+スモールベースボール」の融合を新テーマに掲げた井端ジャパン。こうした顔ぶれの中からから未来のスーパースターは誕生するか?
いきなり、試金石がやって来る。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)