指揮官も信頼を寄せるベテラン
2023年のプロ野球はレギュラーシーズンの戦いが終わり、14日からクライマックスシリーズが開幕。セ・リーグのファーストステージではマツダスタジアムで広島とDeNAが激突する。
DeNAは2位浮上がかかった10月4日のシーズン最終戦・巨人戦で敗れ、3位で短期決戦に臨むこととなった。ここに来てキャプテンの佐野恵太に骨折が発覚し、打線の軸を欠いた状態で負けられない戦いを迎えるのは気がかりだが、今いるメンバーで全力を尽くすしかない。
その中でカギを握りそうな存在が、15年目のベテラン・大田泰示だ。
負ければ3位が決まり、CS本拠地開催の可能性が潰えてしまうという状況で迎えた10月1日の中日戦。前回対戦で苦しめられた髙橋宏斗とのマッチアップはロースコアで進んでいく展開が予想されたが、この日に登録抹消となった佐野に代わって「3番・右翼」に入った大田は「とにかく食らいついていきました」と初回に先制適時打を放ってみせる。
さらに2-0で迎えた2回裏にも、一死一・三塁から2打席連続の適時打。終盤8回には全力疾走とヘッドスライディングで内野安打をもぎ取り、3安打猛打賞の活躍でチームを勝利に導いた。
三浦大輔監督も「打撃でも守備でも良い働き、大きなプレーを見せてくれていますし、ベンチでも試合に出ていても声を出して盛り上げてくれています」とチームを鼓舞する姿を高く評価。
本人も「やることは変わらないですし、しっかりとチームに貢献することだけです。自分のスタイル、自分の打撃をすることだけ考えてやっていきたいと思います」と慣れない3番起用にも戸惑いは見せず、キャプテンの離脱にも「それで戦力ダウンと言われないようにしないといけないですし、勝たなければいけない」とキッパリ。
最後は「あいつがいないから負けたと言われるとチームとしても悔しいので、結果を出せたことは素直に嬉しいです」と少しだけ表情を緩めた。
“チームへの貢献”を胸に
プロ15年目の今季は開幕から調子が上向かず、7月終了時には打率も.141まで落ち込んでいた。
それでも、「あれだけ早く来て練習している人なので、絶対どこかでチームを救うプレーをしてくれる人だと思っている」と語っていた楠本泰史の予言通り、夏場に入って一気に数字を上昇させた。
8月以降はスタメン出場も25試合を数え、打率.269で3本塁打、11打点の活躍。特筆すべきは得点圏打率.350でお立ち台にも3回登るなど、勝負どころでの活躍でチームを支えた。
9月26日の巨人戦では、今季だけで4敗を喫していた天敵・山﨑伊織から適時二塁打を放ち、チーム全員でこの1点を死守して勝利。この時は「みんな必死にやっていますし、こういう状況でチームがすごく良い経験をしていると思う。これでまた成長して、ベイスターズが強くなっていくと思う」とチーム愛にあふれたコメントを発信し、ファンの心にインパクトを残した。
「後半戦ずっと監督も使ってくれて、結果も出ているので、これを続けていかなくてはならない」
首脳陣の期待も力に、最後まで自分らしくチームへの貢献の継続を誓う背番号0。
代打を送られた際には悔し涙を流すほど、責任感の強いキャプテンの忸怩たる思いも背負っていざ決戦へ。チームを想う33歳のベテランが、大一番に挑む。
取材・文=萩原孝弘