コラム 2023.10.24. 06:29

NPB相手に猛アピールを見せたBCリーグの有望株 準硬式野球部出身の「異色の右腕」も

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茨城・村上航 [写真提供=プロアマ野球研究所]

最速149キロの本格派サイドスロー


 ドラフトの話題も増えてくる9月、今年もこの時期の恒例となりつつあるBCリーグ選抜とNPBの交流戦が行われた。

 今回は9月15日に行われた巨人三軍戦と21日に行われたDeNA二軍戦の2試合を振り返りながら、特に良いアピールを見せた選手についてレポートしたい。

 (※年齢は2023年の満年齢)


 15日の試合は、BCリーグ選抜が8人の継投で巨人三軍打線を0点に抑え込んだ。なかでも強いインパクトを残したのが、茨城・村上航(23歳)だ。

 札幌白石高の卒業後は北海学園大の準硬式野球部でプレーし、その後クラブチームのウィン北広島を経て、今年から茨城に加入した“異色の右腕”。入団当初はなかなか制球が定まらなかったそうだが、一時練習生契約となり、肘の位置を下げたことで安定感が大幅にアップした。

 8月に復帰して以降、リーグ戦10試合に登板して失点したのはわずかに1試合という圧巻の内容。まるで別人のような投球を見せ、見事に選抜メンバー入りを果たした。


 その村上は巨人三軍戦で2回から登板。2奪三振で三者凡退と完璧に抑え込んだ。

 サイドスローとスリークォーターの中間くらいの腕の振りだが、フォームの躍動感は抜群で、最速は149キロをマーク。ストレートの平均球速は145キロを超えており、数字に見合う威力が感じられた。

 スライダーも素晴らしい切れ味を誇り、打者の手元で鋭く大きく変化する必殺のボールとなっている。腕をしっかり振って投げられる点も強みで、2つの三振はいずれもこのボールで奪ったもの。右打者の笹原操希が思わず腰を引くほどの変化だった。

 結果を残した期間は1カ月程度と、実績的には不足しているとはいえ、特徴のある本格派サイドスローは需要が高い。リリーフ候補として獲得を狙う球団が出てくる可能性は十分にありそうだ。


最速152キロの有望株


 上述した巨人三軍戦で、大きくアピールした選手がもう1人いる。同じく茨城の土生翔太(22歳)だ。

 横浜高時代は公式戦での登板機会がほとんどなかったが、桜美林大進学後に大きく成長。4年秋には140キロ台後半のスピードをマークしている。

 この試合で登板した8人の投手の中で、唯一2イニングを任された土生は、被安打1で無四球・2奪三振と好投した。

 ストレートは最速152キロをマーク。これは巨人の投手も含め、この日登板した投手のなかでは最も速く、走者を背負っても球威が落ちなかった。

 今後はフォークボールの精度が上がれば、リリーフで面白い存在になりそうだ。


 このほか、埼玉武蔵・芦田丈飛(23歳/国士舘大)と神奈川・増子航海(24歳/創価大)が150キロ前後のストレートを武器に2試合連続で無失点と好投したほか、アンダースローの新潟・下川隼佑(23歳/神奈川工大)も、巨人三軍打線をわずか5球で三者凡退に抑えている。


注目を集めた野手は?


  一方、スカウト陣から高い注目を集めていた内野手が、新潟・伊藤琉偉(21歳)だ。

 東農大二高を卒業後、昨年まで東京農業大でプレーするも、中退して今年から新潟に入団。シーズン序盤は下位を打っていたが、どんどん調子を上げて3割を大きく超える打率を残し、選抜メンバー入りを果たしている。

 DeNA二軍戦では三方向にきれいに打ち分ける3安打をマーク。悪い癖のないスイングで、スムーズに振り出すことができる。

 こうして打撃でアピールした伊藤だが、彼の持つ最大の魅力はショートの守備だ。

 上半身の力みがなく、あらゆる打球にも落ち着いて対応できるほか、深い位置からノーステップで投げられる強肩も素晴らしい。


 内野手でもう1人アピールに成功したのが、埼玉武蔵・金子功児(20歳)である。

 光明相模原高を経て、埼玉武蔵に入団。1年目の昨年は2割台前半の打率に終わったが、オフに肉体改造に取り組みパンチ力が大幅にアップ。昨年5本だった長打が、今年は18本まで増えた。

 巨人三軍戦で2安打を放てば、DeNA二軍戦でも犠飛と適時二塁打で1安打2打点としっかり結果を残している。

 守備にはまだ少し不安定なところを残しているが、動きの良さは申し分ない。今年で20歳と若く、今後の成長も期待できる。


 そして最後に、外野手でアピールした栃木・尾田剛樹(23歳/大阪観光大)も取り上げたい。

 リーグ戦では惜しくも打率3割を逃したものの、82安打(リーグ3位)に32盗塁(リーグ2位)とリードオフマンの役割を果たした。巨人三軍戦とDeNA二軍戦でもいずれも2安打を放ち、打線を牽引する活躍を見せている。

 最大の長所は脚力で、巨人三軍戦での第2打席で放った三塁打では、三塁到達タイム11.11秒をマークしている。しかもベース手前で少しスピードを緩めてもこのタイムで、最後まで全力であれば10秒台も十分考えられるだろう。

 また、内野ゴロの一塁到達タイムは2度計測できたが、3.86秒に3.92秒といずれも高水準だった。足のスペシャリストは需要が高いことから、尾田をリストアップしている球団もあるはずだ。


 奮闘したBCリーグ選抜の選手たちを振り返ってみると、NPBのファームと比べても決して力の劣らない選手が多く、それでいて年齢の若い選手の活躍も目立った。

 一昨年はBCリーグ出身の和田康士郎(ロッテ)が盗塁王を獲得するなど、NPBの舞台で飛躍を遂げるという例もあるだけに、今年も後のスター選手が出てくることを期待したい。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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