コラム 2023.10.26. 09:24

社会人野球を辞めて独立リーグで才能開花…徳島と富山にプロ注目の剛腕あり

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徳島インディゴソックス・椎葉剛 [写真提供=プロアマ野球研究所]

徳島が誇る最速153キロ右腕


 いよいよ本日・26日に行われる『プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD』。先日のコラムではBCリーグ所属の有力選手を取り上げたが、独立リーグにはまだまだ注目株がいる。

 中でもプロからの評価を高めているのが、四国アイランドリーグplusと日本海リーグが誇る2人の剛腕だ。

 まずは今年から四国IL・徳島でプレーしている椎葉剛から紹介したい。


▼ 椎葉剛(徳島インディゴソックス)
・22歳(満年齢)
・182センチ/85キロ 
・右投右打 
・島原中央→ミキハウス

<主な球種と球速帯>
ストレート:150~157キロ
カーブ:118~123キロ
スライダー:128~130キロ
フォーク:135~140キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.24秒


 島原中央高時代は捕手兼投手としてプレー。卒業後は社会人野球のミキハウスに進んだが、在籍した3年間で目立った実績は残していない。

 それでも、徳島に入団するとリリーフの一角に定着。22試合・39回を投げて、イニング数を大きく上回る51奪三振をマークしているのだ。


 筆者が実際にピッチングを見たのは、7月30日に行われたソフトバンク三軍との試合だった。

 同点の6回からマウンドに上がると、2イニングを投げて無安打・2奪三振と見事な投球でチームの勝利に貢献した。

 ソフトバンク三軍は支配下登録されている選手が多く出場していたが、どの選手も椎葉のボールに圧倒されているように見えた。

 ストレートはコンスタントに150キロを超え、最速は153キロをマーク。ボールの勢いは、同学年である大学4年生の上位候補と比べても全く遜色ないレベルにある。

 また、スライダーやフォークもストレートと変わらない軌道から鋭く変化し、奪三振が多いことも頷けた。

 改めてリーグ戦の成績を見てみると、与四死球28に暴投7と少しコントロールには不安が残る一方で、この日の投球を見る限りフォームに悪い癖もなく、ストライクをとるのに苦労する印象は受けなかった。22歳という年齢を考えても、まだまだ成長が期待できるだろう。


富山サンダーバーズの右腕は最速156キロをマーク


 一方、ストレートのスピードということであれば、椎葉をも上回ると言われている投手が日本海リーグ富山でプレーする大谷龍輝だ。


▼ 大谷龍輝(富山サンダーバーズ) 
・23歳 
・180センチ/82キロ
・右投右打 
・小松大谷→JFE東日本→伏木海陸運送

<主な球種と球速帯>
ストレート:150~157キロ
スライダー:125~128キロ
フォーク:137~142キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.20秒


 小松大谷高時代から石川県内では注目された右腕で、卒業後は社会人の強豪であるJFE東日本に進む。ただ、スピードはありながら安定感に乏しく、公式戦では実績を残せずに2年で退社した。

 その後は地元の企業チームである伏木海陸運送に移籍して、ここでも2年間プレーしたが、目立った活躍を見せることなく、今年から日本海リーグの富山でプレーしている。


 独立リーグで野球に集中できる環境がマッチしたせいか、富山では持ち味のストレートがさらにスピードアップ。7月に行われた阪神二軍との交流戦では156キロをマークして、一躍スカウト陣の注目を集めた。

 9月19日に行われた西武三軍との交流戦には7球団のスカウトが集結。6回からマウンドに上がり、2本の安打を許すなどピンチを招くも、球団のスピードガンでは156キロをマークしたストレートで最後まで押し続け、1回を無失点に抑えた。


 筆者は球団関係者より少し上の席から球速を計測していたが、19球投じたストレートのうち18球は150キロを超え、平均球速は152.1キロをマークした。これはプロのリリーフ投手でも十分上位に入る数字である。

 1球だけ投じたフォークも140キロを計測しており、ブレーキも決して悪くなかった。リーグ戦の成績を見ても、シーズン序盤は少し不安定な投球があったものの、8月以降は8試合連続で無失点と尻上がりに調子を上げている。

 フォームは決して力任せではなく、バランスの良さが目立つ。ストレートのスピードは、今年のドラフト候補なかでも1〜2を争うレベルだ。リリーフタイプが不足する球団にとっては、非常に魅力的な存在と言えるだろう。


 椎葉と大谷に共通する点は、高校から社会人野球を経て独立リーグに移籍したという点だ。社会人野球は重要な大会はトーナメントが多く、どうしても安定感に乏しい投手は起用されづらい環境にある。

 また、社会人野球を統括する日本野球連盟からの要望で、企業チームの選手は育成ドラフトで指名できないという申し合わせ事項がある影響により、企業チームから独立リーグへの移籍に繋がっていると言えそうだ。

 希望する選手には育成ドラフトでの指名も認めるようにするなど、制度の見直しをぜひ検討してもらいたいところだが、社会人野球から離れることで才能を開花させた2人がプロからどんな評価を受けるのか。明日に迫ったドラフト会議の注目ポイントとなる。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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