ワールドシリーズを展望
日本時間28日(土)、テキサス州アーリントンで第119回ワールドシリーズが開幕する。世界一を争うのは、ア・リーグ覇者レンジャーズとナ・リーグ覇者ダイヤモンドバックスだ。
レンジャーズはレギュラーシーズン最終日にアストロズに逆転で地区優勝をさらわれ、第5シードでポストシーズンに進出した。しかし、ワイルドカードシリーズでレイズを、続く地区シリーズでオリオールズを連続スイープ。リーグ優勝決定シリーズでライバル・アストロズを第7戦で下し、リーグチャンピオンに輝いた。
一方のダイヤモンドバックスもレギュラーシーズンでナ・リーグ西地区2位の成績を残したが、首位ドジャースには16ゲームの大差をつけられた。第6シードに滑り込む形となったが、レンジャーズと同様にポストシーズンでは“格上チーム”を次々と撃破。最後はフィリーズを第7戦で破り、22年ぶりとなるワールドシリーズ進出を決めた。
ともにポストシーズンで9勝3敗の成績を残し、リーグ優勝決定シリーズで第7戦までもつれ込んだ両チーム。“勢い”という点では互角といえるだろう。
ただし、史上3度目のワイルドカードチーム同士の対戦となった今年のワールドシリーズで、地力上位なのはやはりレンジャーズの方だろう。地区優勝を逃したとはいえ、90勝72敗の成績を残し、レギュラーシーズンでの得失点差はア・リーグ2位の「+165」と、シーズンを通して投打がかみ合っていた。
シリーズのカギを握る2人のルーキー
一方、ダイヤモンドバックスは84勝78敗と6つの貯金を作ったものの、シーズン中の得失点差は「-15」。失点が得点を上回っており、借金を抱えていてもおかしくなかったことが分かる。
地力で劣るダイヤモンドバックスがレンジャーズに食らいつくことができるかどうか……。それは、かつてヤクルトでプレーした経験もあるトーリ・ロブロ監督の手腕次第だろう。今季が就任7年目の指揮官は、開幕から小技や足を絡めたスモールベースボールを実践。レギュラーシーズンで記録した犠打数は今季メジャー最多で、盗塁数と盗塁成功率はともに同2位だった。
突出したスター選手が不在のチームにおいて、次の塁を奪う意識がチームの根幹となっている。ポストシーズンでも、盗塁数は16対9で、犠打数は4対0で、レンジャーズを上回っており、これまで同様に1点を守り抜く野球を実践できれば、勝算は十分にあるはずだ。逆にいえば、1つの走塁ミスや守備のミスが命取りになるケースも考えられるだろう。
また、最大で7戦の短期決戦において大きなポイントとなるのが、“ラッキーボーイ”の出現だ。ここではカギを握る選手として、ルーキー2人の名前を挙げておきたい。
レンジャーズは21歳の外野手エバン・カーターがポストシーズンで打率.308と好調。12試合中11試合で安打を放っているほか、ルーキー離れした選球眼が持ち味だ。アストロズとのシリーズ第7戦では3番を任され、ワールドシリーズでも重要な局面で打席に立つことが予想される。
一方、ダイヤモンドバックスの浮沈のカギを握るのは23歳の外野手コービン・キャロルだろう。レギュラーシーズンでは25本塁打、54盗塁の大活躍を見せ、ワイルドカードシリーズでも打率.571とチームを牽引した。フィリーズとのリーグ優勝決定シリーズではバットがやや湿りがちだったが、第7戦で3安打2打点と大暴れ。初戦からエンジン全開なら、レンジャーズにとって非常に嫌な存在となるだろう。
2年前にシーズン100敗以上を喫したチーム同士による予想外の組み合わせとなった今年のワールドシリーズ。どちらが勝つにしても第7戦までもつれ込むような熱戦に期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)