第48回:復活の左腕が見据える来季
ヤクルトの山野太一が、来季へ向けて大いなる飛躍を目指す。宮崎でのフェニックス・リーグは、背番号「26」にとってその第一歩となった。
山野は2020年ドラフト2位で入団したが、左肩痛で思うような結果を残せず、22年オフに一度は戦力外通告を受けた。
3年目の今季は育成選手として再スタートを切り、7月14日に支配下登録されると、8月1日の巨人戦(東京ドーム)で先発登板。7回無失点でプロ初勝利を手にし、ケガからの復活を印象づけた。
しかし、プロ1勝後は4試合に登板したが白星をつかむことはできなかった。今季最終登板となった10月1日の巨人戦(東京ドーム)では、岸田行倫に初球を捉えられて左翼席へソロ本塁打を浴びた。5回に許したこの一発が唯一の失点となり、黒星を喫した。
9月18日、同じく東京ドームで行われた巨人戦では、6回に吉川尚輝に初球を右中間席へ運ばれて同点とされると、二死二塁のピンチの場面では坂本勇人に勝ち越しの適時二塁打を許してしまう。味方が1点を先制してくれた直後の回だっただけに、防ぎたい失点だった。山野はこう話す。
「簡単にポンといきなりホームランを打たれたというのがあった。気を抜かずに、もっと丁寧にピッチングして、点を取ってもらったあととかの最初のイニングの失点というのをなくす、というのを課題でやろうかと思います」
フェニックス・リーグでは、その課題を乗り越えるために臨んだ。ところが、最初の登板となった10月10日の阪神戦(西都)は2番手で登板して3本塁打を浴びるなど7失点という結果に終わり、山野は「気持ち的な部分とかもどうしても結果を気にしちゃうところがあって、それが逆に良くない結果になっていた」と振り返った。
次戦ではその反省点を踏まえ、同17日のロッテ戦(西都)で6回無失点と好投。「怖さとかいろいろあったんですけど、うまくハマった感じがあった。まだ完璧ではないんですけど、ブルペンなどでも取り組んだりして来年につなげていければいい」と前を見据えた。
同期の元山が山野に太鼓判
先発陣の奮起がチームとしての課題でもある。山野も「ローテーション目指して頑張りたいと思います」と決意をにじませる。
「1年間ケガなくできたことが一番大きかったなと思うのと、1勝しかできなかったという悔しさがあるので、来年もっとピッチングに対して突き詰めていって、勝ち星を挙げられるようにしたいなと思っています」
今季を振り返り、来季は先発ローテの一員としてさらなる高みを目指すことを誓う。「2ケタ勝ってみたいので、毎試合勝つつもりでやりたいなと思っています」と、力強い言葉を残した。
そして、その思いに熱いエールを送るのが、山野とドラフト同期入団で東北福祉大でもチームメイトだった内野手の元山飛優だ。
元山は「(山野が)活躍したら嬉しいし、あいつが出ているときは(自分も)出たい。(2ケタ勝利は)できると思います。元々持っているものがすごい。絶対いけると思います」と、太鼓判を押す。
元山は今季22試合の出場に終わり、シーズン後半は下半身のコンディション不良で離脱した。フェニックス・リーグにも途中から参加したが、10月26日の巨人戦(西都)では復帰後初のマルチ安打をマークし、復調の兆しを見せた。
「山野と一緒に試合に出て、お立ち台(に上がる姿)を大学の監督さんとかにも見せたい」と元山。25歳で迎える来季こそ、ふたり揃ってグラウンドで活躍する姿を1試合でも多く叶えたい。
大学時代から共に戦ってきた投打のふたりが、V奪回を目指すチームの大きな戦力となる。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)