コラム 2023.11.11. 07:00

初代ファミスタではタイタンズの主軸、パワプロではイチローと共闘…歴代野球ゲームで振り返る「岡田彰布」

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ゲームで振り返る岡田彰布の歩み

野球ゲームの移り変わりから見るプロ野球史~第35回:岡田彰布と野球ゲーム史


「ちょうどまあ27歳だったんですけどね。前回の日本一の時は。長かったですね」

 38年ぶりの日本一に輝いた阪神の岡田彰布監督は、優勝監督インタビューで感慨深そうに口にした。


 1985(昭和60)年の阪神日本一では、選手・岡田はバリバリの主力を張り、大阪は未曾有の虎フィーバーで沸いた。

 なにせ翌86年12月10日発売の『ファミリースタジアム』(ナムコ)でも、阪神……じゃなくてタイタンズの選手データは1年前の85年成績がベースになっているほどだ。



 クリーンアップは猛虎打線の「ばあす、かけふ、おかだ」で、実際に86年シーズンは死球による骨折もあり9本塁打に終わった掛布雅之も、初代ファミスタでは36本塁打の設定だ。

 岡田もキャリアで30発超えは85年のみだが、ファミスタでは「打率.302、30本塁打」となっている。なお、ガイアンツには監督の「おう」が代打でいたり、あくまでゲーム性重視だが、それで炎上することはなく、ユーザーには好意的に迎えられた。

 初代ファミスタは、それまでのファミコンの『ベースボール』やセガ・マークⅢの『グレートベースボール』とは違い、ほぼ実名に近い160名もの選手が登場して、200万本超えの大ヒットを記録。

 当時の野球ゲームで、選手それぞれ特徴があるだけでも革命的だったが、前年の日本一になった強い阪神で遊べるならと、購入したタイガースファンも少なくはないだろう。

 若手時代の岡田はプロレス好きで、東京駅でプロレスラーのリック・フレアーを見かけると、「ウヒョー! サインもらおかな。オレ、あの人のファンなんですわ」なんて大ハシャギする意外な一面もあった。


掛布とバースが去り、残された岡田の憂鬱




 さらに87年6月26日発売の『燃えろ!!プロ野球』(ジャレコ)の“HT CLUB”でも「バース、カケフ、オカダ」のクリーンアップだが、バースが打率.400、47本塁打。オカダも打率.322、30本塁打という猛打ぶりである。

 ちなみにこの初代燃えプロも158万本と爆売れ。80年代のプロ野球は国民的娯楽級の人気を誇り、出せば確実に売れるため各メーカーが参入する野球ゲームバブルへと突入する。

 シリーズ最高傑作として知られる続編の『燃えろ!!プロ野球'88決定版』にも、もちろんTチームの不動の5番「おかやん」として登場している。

 なお、選手・岡田は85年の打率.342、35本塁打、101打点、OPS1.057をピークに成績は下降線を辿る。

 実際に87年は打率.255、14本塁打と低迷するも、88年6月28日発売の『究極ハリキリスタジアム』(タイトー)で“タイタニクス”の5番二塁「おがた」は打率.309、27本塁打と激甘設定。



 実はこのシーズン限りで現実では掛布が引退、バースも退団。チームは最下位が定位置の暗黒期へ突入……という切実な事情もあり、残った岡田までガチな成績設定にしてしまったら、人気球団の阪神が飛び抜けて弱くなってしまう(ゲームが売れへん)。というセールスに直結する大人のアレな事情もあり、Uインター時代の高田延彦のように神輿に担がれた岡田は、野球ゲームのタイガースも牽引していくことになる。


「クリーンアップがひとり抜け、ふたり抜け、俺は最後、ひとり残された。残されて感じたこと。改めてこの3人でトリオを組めたことを誇りに感じ、そして寂しさ感じずにおれなかった」(ベースボール・マガジン別冊紅葉号「掛布雅之と阪神タイガース」より)

 岡田はのちに当時の心境をそう振り返ったが、90年にヤクルトから移籍したラリー・パリッシュも、ホームラン王争いでトップを走っていた夏場にヒザの故障が原因で電撃退団。

 ちなみに岡田の妻の妹が、パリッシュの通訳をやっていた縁があった(岡田夫人も英語が堪能でバース夫人の話し相手にもなっていたという)。


90年代に正念場を迎えるベテラン岡田


 90年代に突入すると、メガドライブで別売りのメガモデムを介して電話線を繋ぎ対戦できる『TEL・TELスタジアム』(サンソフト)のような、のちのオンライン対戦を先取りしたような野球ゲームも登場。

 スーパーファミコンやゲームボーイの新ハードも続々と発売されるが、88年から3年連続20本塁打と意地を見せていた背番号16は、30代中盤を迎え徐々に年齢的な衰えが目立ちだす。

 91年は15本塁打と苦しみ、92年3月27日発売の『スーパーファミスタ』(ナムコ)では、3番二塁の「おかだ」は打率.256、18本塁打。平均を大きく下回る走力8、守力C、肩力Cと皮肉にもハードの進化で野球ゲームがリアルになるにつれて、ベテラン岡田の守備・走塁面の衰えが顕著となる。



 自チームに新庄剛志や亀山努ら、次世代のスター候補が出現すると出番も激減。92年には代打亀山を送られる屈辱もありモチベーションが落ち、わずか2本塁打に終わる。

 93年8月6日にはPCエンジン人気シリーズのSFC版『スーパーパワーリーグ』(ハドソン)が世に出るが、この頃になるとゲームの選手成績も実際の数字が正確に反映され、控え選手「おかだ」の打撃成績は哀しみの打率.189、2本塁打……。盟友・真弓明信とともに暗黒期の阪神を支えた岡田だったが、結局93年限りで甲子園を去る。


イチローが打って、岡田が返したオリックス時代




 94年からは仰木彬率いるパ・リーグのオリックスブルーウェーブへ。

 この94年と言えば、天才イチローが颯爽と出現し、あの『実況パワフルプロ野球’94』(コナミ)が発売された記念すべきシーズンだが、開幕前の3月11日発売のためイチローも岡田もゲームにはいない。

 ふたりのスタメンが実現したのは、翌95年2月発売の『実況パワフルプロ野球2』における関西の両雄揃い踏みである。


 イチローは“がんばろうKOBE”の顔として、走攻守に渡りゲーム最高選手としてスピード感溢れる異次元のプレーを再現してくれるが、岡田は「5番一塁」で打率.277、2本塁打。

 94年12月発売のプレステ用ソフト『実況パワフルプロ野球’95』ではミート2だったが、こちらでは「ミート4、パワー80」にまで復活している。



 そして、このシーズンを最後に選手・岡田は16年間の現役生活にピリオドを打つわけだ。通算1520安打、247本塁打。

 なお、巨人の原辰徳も同年限りで引退。時代はプレステやセガサターンの真新しい次世代ゲーム機戦争に突入しており、イチローと松井秀喜という平成の若きスーパースターの出現の裏で、昭和のスター岡田と原がユニフォームを脱いだ。


 昭和から、平成を飛び越え、そして令和へ。2023年、背番号80を身につけ、現役晩年に所属したオリックスに競り勝ち、監督として阪神タイガースを38年ぶりの日本一に導くわけだ。奇しくも、ファミコンやスーファミのレトロゲーム人気が再燃する今、昭和世代の12球団最年長監督が見せた意地。

 確かに、歳をとった。だが、決して時代遅れではない。あの頃、27歳だった岡田彰布も、もうすぐ66歳になろうとしている。


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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