「強力投手陣」が他校を圧倒…!?
明治神宮野球大会が11月15日に開幕する。高校の部は、来年春の選抜高校野球の“前哨戦”という意味合いが強いが、最も注目されるチームは、やはり大阪桐蔭になるだろう。松尾汐恩(2022年DeNAドラフト1位)、前田悠伍(2023年ソフトバンク1位)の活躍もあって一昨年、昨年と史上初の大会連覇を達成。今年夏は大阪大会決勝で履正社に敗れたものの、秋の新チームは安定した戦いぶりで近畿大会を制した。
新チームで注目されるのは、強力な投手陣だ。中でも旧チームから経験豊富で、背番号1を背負うのが平嶋桂知(2年)である。
190センチちかい長身で手足が長く、全身を大きく使った腕の振りから繰り出すストレートはコンスタントに140キロ台中盤をマークする。変化球のなかで、中心となるのはカットボール。しっかり腕を振って投げられ、ストレートと変わらない軌道から鋭く変化し、カウントをとるボールとしても、勝負球としても使うことができる。
ブレーキのあるスプリットもまた質が高い。もう少し打者の目線を変える大きい変化のボールを操れるようになれば、ストレートと速い変化球がさらに生きるだろう。近畿大会でも、初戦の高田商戦は6回を無失点、続く報徳学園戦は6回を2失点としっかりと試合を作り、エースの役割を果たした。このまま順調にいけば、来年のドラフトで有力候補となる可能性は高いだろう。
一方で、平嶋以上のスケールの大きさを誇ると評判になっている投手が、森陽樹(1年)だ。聖心ウルスラ学園聡明中時代から評判の大型右腕。スピードが出づらいと言われる軟式球で140キロ以上のスピードをマークしている。
「軟式出身」と言うことで、西谷浩一監督は慎重に起用していたが、この秋からベンチ入りを果たすと、近畿大会では3試合、9回2/3を投げて被安打4、1四球、16奪三振で無失点と、圧巻の投球をみせた。
まだ長い手足を少し持て余したところはあるものの、豪快な腕の振りから投げ込むストレートは145キロを超え、数字以上に打者の手元で勢いが感じられる。縦に鋭く変化するスライダーは、とても1年生とは思えないレベルだ。近畿大会決勝の京都外大西戦では7回を投げてわずか85球と、ストライク先行で投げることができており、コントロールも安定している。神宮大会でもピッチングに注目だ。
他にも旧チームから投手陣の一角を担った南陽人(2年)、サウスポーで安定感が光る山口祐樹(2年)、森とともに入学直後から大器と評判の中野大虎(1年)らも、他のチームであれば、十分にエースとして活躍できるだけの力を持っている。投手陣の層の厚さでは、近年の大阪桐蔭でトップといえるチームだろう。
珍しい“両投げ”のユーティリティプレーヤー
一方の打線は、近畿大会4試合で16得点。過去のチームと比べると、少し得点力が乏しいが、それでも能力の高い選手は揃っている。旧チームから不動の中軸を任されているのが、徳丸快晴(2年・外野手)だ。
タイミングをとる動きに無駄がなく、鋭い振り出しで広角に長打を放つことができる。また、左右どちらでも投げられる“両投”の選手であり、外野だけでなく、サードもこなせる器用さが魅力だ。秋は少し調子を落としていたが、昨年も神宮大会で見事な打撃を見せていただけに復調に期待したい。
運動能力の高さが光るのが、トップバッターの境亮陽(2年・外野手)だ。最大の魅力は抜群のスピードで、どんどん加速するようなベースランニングは迫力十分。細身だが振り出しの鋭いスイングでミート力も高く、芯でとらえた時の打球は軽々と外野の頭を超える。外野から見せる強肩も大きな武器で、外野手としての能力の高さは全国でも屈指だ。それ以外にも長打力が魅力のラマル・ギービンラタナヤケ(2年・三塁手)や、1年生ながら扇の要を任されている増田湧太(1年・捕手)らも、今後が楽しみな選手である。
レベルの高い近畿大会を3連覇することも既に偉業であるが、明治神宮大会3連覇も十分射程圏内といえる力を備えていることは間違いないだろう。新生・大阪桐蔭が秋の神宮球場で、どんな戦いを見せてくれるのか、ぜひ注目して頂きたい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所