岡田監督が絶賛した野口恭佑
球団史上初の連覇へ向けて、タイガースの岡田彰布監督は高知県安芸市で“原石”を探していた。
オリックスとの日本シリーズを終えて1週間も経たずして、指揮官は若手主体の秋季キャンプでタクトを振っていた。
参加するほとんどの選手が、今季二軍を主戦場とした。一軍はリーグ優勝、38年ぶりの日本一まで上り詰めたが、彼らはいわばその“次の世代”を担う可能性がある存在。
岡田監督は「(選手を見たのは)ほとんど映像だけやからなあ。まずどんなんか。そら、なかなか難しいよ。今のこの(レギュラー)メンバーに割って入るというのは」と展望を口にしていた。
そんな中、岡田監督をうならせる存在がいきなり現れた。
安芸市営球場で次々にアーチを懸けたのは、育成1年目の野口恭佑。屋外フリー打撃で90スイング中19本のサク越えを披露した。
井上広大、前川右京ら期待の大砲候補もいる中で「1人おったなあ。野口なあ。野口だけやな、リストワークを使えていたのは。だから遠くに飛ばせるわな」と目を細めた。
この秋のキーワードは「リストワーク」。監督は遠くに飛ばせるのには理由があるとし「150キロに対して強く振るだけじゃあかん。リストを使って、ポーンとスピンがかかるわけやからな」と自身は大学時代に会得したという打撃の極意を野口が身につけつつあると目を細めた。
野口は昨秋ドラフトの育成1位で入団。故障で開幕は出遅れたものの、二軍公式戦では中盤から頭角を現し始め打率.303、6本塁打、18打点と上々の数字を残した。
「いつもと違う緊張感を感じた」
そう初々しく振り返った野口に“朗報”が届いたのは3日後だった。高知県のチーム宿舎で行われた契約更改で支配下登録が決定。
来春のキャンプ、オープン戦でのアピールを見てからでも遅くなかったが、初めて生で目にしたフリー打撃でのパフォーマンスを評価した岡田監督の後押しもあったという。
支配下再復帰へアピール
投手でも、野口と同じく育成の川原が評価を上げた。プロで5年目終えた左腕は、18年ドラフト5位入団。21年オフに育成契約に切り替わっていた。
キャンプ最終クールのブルペンを視察した岡田監督が、西純矢の隣で投げていた川原を絶賛。
「(西純は)アカンなあ、全然やったな。横の川原の方が目立ってたで。100球超えてからの川原の方が目立ってたよ」と期待のエース候補と対照的だった投球内容を褒めた。
100球を超えても球威ある直球を投げ続けた質の高さが目に留まったのだ。秋季キャンプには途中合流で2クールだけの指揮だったが岡田監督は確かな収穫を手に関西へ戻った。
チームを見渡せば生え抜きのレギュラー陣は円熟期。戦力は安泰に見えるが岡田監督の考えは違う。
「やっぱりその(同じ)メンバーでは勝てんということ」
球団史上初のリーグ連覇へ新戦力の台頭を求めている。
その意味で秋季キャンプで名前を挙げた野口、川原らをはじめ今年は二軍でくすぶっていた若手がどのようにレギュラーに割って入っていくのか。
猛虎の黄金期到来はニューカマーの登場あってこそなのかもしれない。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)