コラム 2023.11.30. 06:29

史上初の五冠達成時の主力は現首脳陣! パワプロとプロスピで振り返る「最高で最強の2012年原巨人」

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ゲームで振り返る2012年の原巨人

野球ゲームの移り変わりから見るプロ野球史~第36回:五冠達成した2012年の原巨人


 10数年前の話だ。

 当時、球場の客席でお馴染みの風景といえば、ワンセグケータイで目の前の試合のテレビ中継を見るおじさんや、野球そっちのけでニンテンドーDSやPSPといった携帯ゲーム機で遊ぶ子どもたち。なお、ニンテンドーDSは08年に441タイトル、PSPは10年に279タイトルがリリースされている。まだスマホはほとんど普及しておらず、令和にiPhoneで見るメシャーリーグの大谷翔平とは違い、遠くアメリカのイチローや松井秀喜の試合は夜のスポーツニュースで確認するのが定番だった。


17年間で最も強かった2012年の原巨人


 さて、あの頃の巨人を支えた選手たちが、阿部慎之助新監督のもとにコーチとして再集結している。先日のファンフェスタでも、東京ドームに内海哲也や矢野謙次が久々に巨人のユニフォーム姿で登場した。計10シーズンに渡る第二次原政権の……というか、通算17年間で9度ものリーグVに輝いた原巨人の強さのピークは、交流戦優勝に始まり、ペナントレース、 クライマックスシリーズ、日本シリーズ、アジアシリーズまですべて制覇して史上初の五冠を達成した2012年シーズンだろう。

 当時の巨人がどれほど強かったのか、12年3月29日発売の『プロ野球スピリッツ2012』と12年12月13日発売の『実況パワフルプロ野球2012決定版』をもとに振り返ってみよう。すでに12年のNPB野球ゲームは、コナミのパワプロとプロスピの二択状態で、オフシーズンに「決定版」がリリースされたのも、この年が最後だった。以降、選手データは定期的な無料アップデートが定着していくのである。




“阿部のチーム”だった12年


 今思えば、86勝を挙げた12年の巨人はこれまでの小笠原道大とラミレスから、当時33歳の阿部のチームへと大きく変貌したシーズンだった。前年まで主軸としてクリーンナップを組んでいたオガラミコンビ。だが、レフト守備に不安を抱えていた4番ラミレスは退団してDeNAへ移籍。さらに39歳の小笠原も統一球導入後に急激に成績を落とし二軍生活が続いていた。

 すると、彼らに代わり4番に座ったキャッチャー阿部が打率.340・27本塁打・104打点・OPS994という好成績でMVPはもちろん、首位打者、打点王、最高出塁率のタイトルを獲得。まさに背番号10はチームの大黒柱として日本一に貢献した。マスクを被れば、ときにマウンドで大学の後輩・沢村拓一を引っぱたいて喝を入れ(令和ならたぶん炎上)、宅配屋のシンちゃん……は置いといて、オフの契約更改では当時の球界最高給となる推定5億7000万円でサインした。



 もちろんパワプロでも、この年の阿部はゲーム最強打者として登場する。ミート77のB、パワー81のAで、「対左投手4」「アベレージヒッター」「パワーヒッター」「初球○」「固め打ち」「威圧感」「ハイボールヒッター」とどういう状況でも相手バッテリーには驚異だった。

 若手には最多安打同時獲得コンビの長野久義と坂本勇人、さらには前年盗塁王の藤村大介がいて、ベテランの高橋由伸も健在で、日本シリーズで爆発した意外性の男ボウカーも控えている。その中心に君臨するのが、絶頂期の阿部だった。

 

内海と杉内のダブルエース、盤石のスコット鉄太朗


 投手陣のリーダーは11年18勝、12年15勝と2年連続最多勝の内海哲也。12年の背番号26は、セ・パ交流戦と日本シリーズで立て続けにMVPを受賞。オフには年俸4億円の4年契約を結び、パワプロでも「対ピンチ4」「対左打者4」「打たれ強さ4」「クイック4」「安定度4」と勝てる投手として全盛期にあった。

 さらに前年オフ、「4年20億円」に「背番号18」の破格の条件でソフトバンクからFA移籍してきた杉内俊哉とのダブルエース体制。球界を代表する左腕は、巨人1年目の5月30日楽天戦でノーヒットノーランを達成。シーズン終盤は左肩の違和感で戦列を離れるも、しっかり12勝を挙げ、172奪三振で最多奪三振のタイトルに輝いた。



 近年の巨人にFA移籍してきた先発投手の直近3年間の勝利数は大竹寛(広島)22勝、山口俊(横浜)22勝、野上亮磨(西武)21勝、井納翔一(横浜)16勝といった面々だが、杉内は39勝と別格の存在で、当時阪神のマートンも「スギウチの球のキレは凄い」と脱帽。パワプロでも「キレ4」が再現されており、チェンジアップとスライダーはエグい変化量で、今ならメジャー複数球団で巨額の争奪戦が勃発するレベルのサウスポーである。

 ブルペンも山口鉄也、マシソン、西村健太朗の“スコット鉄太朗”が全盛期バリバリで三役揃い踏み。他にも先発が崩れたときのロングリリーバーとして重宝され、50試合を投げ8勝1敗、防御率1.61の福田聡志の貢献度も高かった。



 特に12年の山口の安定感は凄まじく、最終的にペナント144試合のちょうど半数の72試合に登板。3勝2敗5セーブ、防御率は脅威の0.84。47ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手賞を獲得。さらに中日とのCSファイナルステージでは4試合に登板。日ハムとの日本シリーズでも3試合に投げ胴上げ投手。しかも、真夏のオールスター第1戦でもマウンドに上がってシーズンフルコンプ。すべて合計するとちょうど「年間80試合登板」というクレイジーさ。今振り返っても、無茶苦茶な起用法だ。凄いを通り越して、怖い。そりゃあパワプロでも鉄腕の証明「ケガしにくさ5」がつくはずだ。年俸も翌13年の契約更改では3億円を突破する、巨人史上最大のイクセイドリームを実現させた。


ベンチに控える仕事人たち


 11年前のシーズンだけに、対戦相手の顔ぶれもエモい。CS再現で中日と対戦すると、中軸は「3番森野将彦、4番ブランコ、5番和田一浩、6番井端弘和」。12年日本シリーズで注目の若手は巨人の沢村拓一や宮国椋丞、日本ハムでは中田翔や陽岱鋼。彼らが両球団の未来そのものだった時代のゲームであることを再確認できる。




 なお、巨人はスタメンだけでなく、ベンチにも谷佳知、矢野謙次、鈴木尚広、古城茂幸、寺内崇幸ら百戦錬磨の仕事人たちが控えていた。さらに代打の切り札には、頼れる石井義人。代打で37打数15安打の打率.405、驚愕の得点圏打率.444。CSファイナルで中日にまさかの3連敗を食らい、絶体絶命のまま迎えた第5戦。山井大介からしぶとくサヨナラヒットを放ったのも代打“イシイ・オブ・ゴッド”である。

 ちなみにこの12年に浪人生活を送っていた菅野智之は、巨人1年目の13年に東京ドームで配布された自身のプレヤーズデー・プログラムで、「今までボクは「パワプロ」のサクセスモードで自分自身を苦労して作っていたんですよ。それが……もう、今回からは作らなくていいと思うと嬉しいですね」と切実な告白をしている。

 そして、プロスピ2012では、ゲーム内でVPを貯めて監督の原辰徳を入手すると、選手として使用できてしまう。ホームラン競争で、背番号8の若大将が目を見開きスタンドインを連発する姿は、往年の元タツノリキッズにはマジ感涙モノだ。



 原監督の辞任後、人生にタツノリが足りていない。もしくはタツノリの顔芸に心から飢えている———。阿部現監督や内海コーチが中心選手だった、あの頃の“最高で最強の原巨人”を追体験したいあなたにこそ、『プロ野球スピリッツ2012』と『実況パワフルプロ野球2012決定版』をセットで堪能することを心からオススメしたい。


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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