「最近はスカウトたちが大きな顔して、やって来るんや」日本一の将・阪神の岡田彰布監督が、こう語ったとか。
ユーモアも交えた岡田流の表現だが、チームを支えてきたスカウトや編成部門の働きを最大限に評価した褒め言葉である。彼らの働きなしに38年ぶりの日本一もなかった。
日本シリーズの最終決着から3週間以上が経つ。それでも阪神とオリックスの戦士たちはまだ歓喜の渦の中にいる。今月23日には両球団合同の優勝パレードが神戸と大阪で行われて100万人の祝福を受けた。
28日にはNPBアワードの表彰式が行われ、ここでも主役は虎と猛牛だ。
阪神・岡田、オリックス・中島聡監督には各リーグの最優秀監督賞が授与されたばかりか、MVPに阪神・村上頌樹、オリックス・山本由伸両投手。ベストナインでは阪神から近本光司ら3選手、オリックスは森友哉ら大量5選手が選出されている。翌29日には大阪のホテルで阪神の優勝祝賀会も行われている。まさに“我が世の秋”だ。
両指揮官が互いを「手強かった」と振り返る関西ダービー。それぞれのリーグを勝ち抜いた強さの秘密は「チーム作りの妙」にある。
ここに第7戦の打順ごとの先発野手を記す。
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<阪神>
1番 近本光司(29歳) 5年目 社 18年1位
2番 中野拓夢(27歳) 3年目 社 20年6位
3番 森下翔太(23歳) 1年目 大 22年1位
4番 大山悠輔(29歳) 7年目 大 16年1位
5番 ノイジー
6番 原口文仁(31歳) 14年目 高 09年6位
7番 佐藤輝明(24歳) 3年目 大 20年1位
8番 木浪聖也(29歳) 5年目 社 18年3位
9番 坂本誠志郎(30歳) 8年目 大 15年2位
<オリックス>
1番 中川圭太(27歳) 5年目 大 18年7位
2番 宗佑磨(27歳) 9年目 高 14年2位
3番 紅林弘太郎(21歳) 4年目 高 19年2位
4番 森友哉(28歳) 10年目 高 13年1位
5番 頓宮裕真(27歳) 5年目 大 18年2位
6番 ゴンザレス
7番 杉本裕太郎(30歳) 8年目 社 15年10位
8番 野口智哉(24歳) 2年目 大 21年2位
9番 福田周平(31歳) 6年目 社 17年3位
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※出身は社が社会人、大が大学、高が高校。末尾はドラフト年度と順位。
ちなみに外国人選手を除いた野手7選手の平均年齢は阪神27.6歳。オリックスは26.9歳。
さらに両軍の特徴を見てみると30代は阪神・坂本と原口、オリックス・杉本と福田だけで若いチームである。
野手だけを比べると阪神にドラフト1位が多く、オリックスは同2位指名が多い。その分、オリックスには宮城大弥、田嶋大樹、山岡泰輔、山﨑福也(今オフに日本ハムへFA移籍)山下舜平大、曽谷龍平ら投手にドラ1が多い。また、大半がチーム生え抜き選手であることも特筆される。
チーム作りの骨格は「スカウティングと育成」から始まる。ドラフトの上位はもとより、下位指名や育成組からもどれだけ一軍に人材を供給できるか? ここにFAやトレード、外国人選手の獲得で強力チームに仕立てていく。
上記の表で注目すべきはオリックスの下位指名組である。
杉本はドラフト10位指名なら中川も同7位。投手4冠に輝いた山本由伸は4位、宇田川優希や東晃平は育成出身。
阪神もまた、村上と青柳晃洋は5位指名でシリーズの流れを代える好救援を見せた湯浅京己や、守護神の岩崎優も6位入団。
さらに、オリックスなら16年のドラフトで山岡、山本、山﨑颯一郎、阪神なら20年に佐藤輝、伊藤将司、中野などが同時入団で活躍。要はドラフトの順位に限らず多くの選手が一軍で活躍、しかも各年度毎に満遍なく好選手を輩出していることが王国づくりに寄与しているのだ。
今季の両チームには、首脳陣の予想以上に活躍した投手たちがいる。
代表例は阪神の村上と大竹。昨年まで未勝利の村上が10勝6敗で、ソフトバンクから現役ドラフトで加入した大竹が12勝2敗。オリックスに目を転じれば160キロに迫る怪腕・山下が9勝3敗で、育成出身の東は6勝をマークしてプロ入り以来、未だ負け知らずだ。彼らがチームに大きな2ケタの貯金をもたらせば優勝も見えて来る。
かつての王者、巨人やソフトバンクは黄金期が過ぎ、気がつけば主力は30代ばかり。やっと、ここへ来て若返りに躍起となっている。
このオフ、阪神・岡田監督はFAやトレードにも関心を寄せず、さらにチームの底上げで連覇を目指す。
一方のオリックスは大黒柱の山本のメジャー流失に、山﨑福の日本ハム移籍で激震が走っている。野手では広島から西川龍馬選手を獲得して厚みを増すが、投手陣は再編が急務。先述の山下舜平太や東晃平らの更なる成長が期待される。
不動の岡田と、激動の中嶋。それでも視線の先に見据えるのはより高みへの挑戦である。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
ユーモアも交えた岡田流の表現だが、チームを支えてきたスカウトや編成部門の働きを最大限に評価した褒め言葉である。彼らの働きなしに38年ぶりの日本一もなかった。
日本シリーズの最終決着から3週間以上が経つ。それでも阪神とオリックスの戦士たちはまだ歓喜の渦の中にいる。今月23日には両球団合同の優勝パレードが神戸と大阪で行われて100万人の祝福を受けた。
28日にはNPBアワードの表彰式が行われ、ここでも主役は虎と猛牛だ。
阪神・岡田、オリックス・中島聡監督には各リーグの最優秀監督賞が授与されたばかりか、MVPに阪神・村上頌樹、オリックス・山本由伸両投手。ベストナインでは阪神から近本光司ら3選手、オリックスは森友哉ら大量5選手が選出されている。翌29日には大阪のホテルで阪神の優勝祝賀会も行われている。まさに“我が世の秋”だ。
両指揮官が互いを「手強かった」と振り返る関西ダービー。それぞれのリーグを勝ち抜いた強さの秘密は「チーム作りの妙」にある。
ここに第7戦の打順ごとの先発野手を記す。
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<阪神>
1番 近本光司(29歳) 5年目 社 18年1位
2番 中野拓夢(27歳) 3年目 社 20年6位
3番 森下翔太(23歳) 1年目 大 22年1位
4番 大山悠輔(29歳) 7年目 大 16年1位
5番 ノイジー
6番 原口文仁(31歳) 14年目 高 09年6位
7番 佐藤輝明(24歳) 3年目 大 20年1位
8番 木浪聖也(29歳) 5年目 社 18年3位
9番 坂本誠志郎(30歳) 8年目 大 15年2位
<オリックス>
1番 中川圭太(27歳) 5年目 大 18年7位
2番 宗佑磨(27歳) 9年目 高 14年2位
3番 紅林弘太郎(21歳) 4年目 高 19年2位
4番 森友哉(28歳) 10年目 高 13年1位
5番 頓宮裕真(27歳) 5年目 大 18年2位
6番 ゴンザレス
7番 杉本裕太郎(30歳) 8年目 社 15年10位
8番 野口智哉(24歳) 2年目 大 21年2位
9番 福田周平(31歳) 6年目 社 17年3位
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※出身は社が社会人、大が大学、高が高校。末尾はドラフト年度と順位。
ドラフト各年度毎に満遍なく好選手を輩出している両軍
ちなみに外国人選手を除いた野手7選手の平均年齢は阪神27.6歳。オリックスは26.9歳。
さらに両軍の特徴を見てみると30代は阪神・坂本と原口、オリックス・杉本と福田だけで若いチームである。
野手だけを比べると阪神にドラフト1位が多く、オリックスは同2位指名が多い。その分、オリックスには宮城大弥、田嶋大樹、山岡泰輔、山﨑福也(今オフに日本ハムへFA移籍)山下舜平大、曽谷龍平ら投手にドラ1が多い。また、大半がチーム生え抜き選手であることも特筆される。
チーム作りの骨格は「スカウティングと育成」から始まる。ドラフトの上位はもとより、下位指名や育成組からもどれだけ一軍に人材を供給できるか? ここにFAやトレード、外国人選手の獲得で強力チームに仕立てていく。
上記の表で注目すべきはオリックスの下位指名組である。
杉本はドラフト10位指名なら中川も同7位。投手4冠に輝いた山本由伸は4位、宇田川優希や東晃平は育成出身。
阪神もまた、村上と青柳晃洋は5位指名でシリーズの流れを代える好救援を見せた湯浅京己や、守護神の岩崎優も6位入団。
さらに、オリックスなら16年のドラフトで山岡、山本、山﨑颯一郎、阪神なら20年に佐藤輝、伊藤将司、中野などが同時入団で活躍。要はドラフトの順位に限らず多くの選手が一軍で活躍、しかも各年度毎に満遍なく好選手を輩出していることが王国づくりに寄与しているのだ。
今季の両チームには、首脳陣の予想以上に活躍した投手たちがいる。
代表例は阪神の村上と大竹。昨年まで未勝利の村上が10勝6敗で、ソフトバンクから現役ドラフトで加入した大竹が12勝2敗。オリックスに目を転じれば160キロに迫る怪腕・山下が9勝3敗で、育成出身の東は6勝をマークしてプロ入り以来、未だ負け知らずだ。彼らがチームに大きな2ケタの貯金をもたらせば優勝も見えて来る。
かつての王者、巨人やソフトバンクは黄金期が過ぎ、気がつけば主力は30代ばかり。やっと、ここへ来て若返りに躍起となっている。
このオフ、阪神・岡田監督はFAやトレードにも関心を寄せず、さらにチームの底上げで連覇を目指す。
一方のオリックスは大黒柱の山本のメジャー流失に、山﨑福の日本ハム移籍で激震が走っている。野手では広島から西川龍馬選手を獲得して厚みを増すが、投手陣は再編が急務。先述の山下舜平太や東晃平らの更なる成長が期待される。
不動の岡田と、激動の中嶋。それでも視線の先に見据えるのはより高みへの挑戦である。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)